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統一地方選は「文明転換」の出発点に

2011/3/24

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竹内謙
2011年3月23日

2011年統一地方選挙が明24日告示の都道県知事選からはじまる。東日本大震災での被害が激しかった岩手、宮城、福島各県内の選挙は延期されるが、死者・行方不明者2万人を超える未曾有の惨状を目の当たりにして、防災、安全、危機管理が全国すべての選挙での関心事になることは間違いない。この惨事は自然への畏怖、畏敬の念を軽んじた科学技

術万能主義、消費至上主義に対する天の啓示と考えるべきであり、いずれの選挙も「自然とともに生きる」「足を知る」といった日本の伝統文化を取り戻す「文明の転換」を最大のテーマにしなければならない。

原子核分裂を利用する原発の安全性については、建設当初から強い疑問があった。今日まで全国各地に56基が建設された間には、常に危険を感じる周辺住民の反対運動が繰り返された。それを押し切ったきたのは「何重にも安全装置が施される」という住民を欺く技術過信の言葉と住民の横っ面を張るようなカネの力だった。政府が「国策」と称する原発推進政策は、地元自治体に巨額の交付金をばらまいて原発の受け入れを認めさせることだった。自治体はアメに釣られ、有権者もそんな首長や議員を容認した。

原発が地震で放射能を撒き散らす大事故を起こす恐れは1970年代から指摘されてきた。神戸大学名誉教授の石橋克彦氏は1997年、「原発震災」という言葉をつくって警告した。にもかかわらず、政府も電力会社もこれを無視し続けた。オイルショックやCO2問題も、エネルギー消費の少ない社会づくりに向かうことはなく、原発推進に利用された。経済は消費

を煽り、経済を支える電力需要は拡大した。電力会社は大手を振って原発を増設した。頼みのマスコミも電力会社の広告費の魅力に筆を折り、いつの間にか原発の危険性を伝える報道は消えていった。「天災は忘れたころにやってくる」という寺田寅彦の言葉通り、東電福島原発の放射能洩れ事故は日本が消費主義に浮かれている時にやってきた。

原発だけではない。津波を食い止める堤防にしてもしかり。歴史的に何度も津波被害を繰り返してきた三陸海岸の岩手県宮古市田老に築かれた高さ10m、総延長約2.4kmの巨大な防潮堤は今度の津波で粉々に砕かれ、多くの被災者を出した。「防潮堤があるから大丈夫」と思い込んだ油断が落とし穴になった。地震や洪水、火災に備えて防災機能を

補強したり、災害を食い止める物理的な施設をつくることは当然のことだが、役所や企業がよく使う「絶対」はない。それはあくまでも「被害をより小さくする」ことが目的であって、それだけに頼れる「絶対安全」な技術も施設もあり得ない。自然の猛威は人智を超える。そのことを忘れたときに悲劇が起こる。

日本の地域社会は、自然を大切に、自然に敬意を払って、自然と共に生きてきた。そんな伝統が崩れたのは、ほんのここ50年、高度経済成長期以降のことだ。いまも自然への敬意を忘れずに、山の神や水の神を祀る伝統を大事に守っている地域もある。いまからでも遅くはない。そんな自然と共生する地域が先頭に立ち、科学技術万能主義や消費至上主義に浮かれた地域を後方に追いやるUターンの時だ。経済的利益や物質的な豊かさだけが幸せの尺度ではない。われわれがこの際「足るを知る者は富む」の発想に転換できないようであれば、大震災がもたらした膨大な犠牲者の霊は浮かばれない。

私は神奈川県鎌倉市長時代(1993年~2001年)に、「環境自治体の創造」を基本理念に市政の変革に取り組んだ経験がある。環境自治体とは「すべての政策に環境を配慮する自治体」と定義しているが、別の言い方をすれば「環境を壊さない地域社会」を追求する自治体である。その考えは今日までいささかも変わっていない。地域の安全を責務とする自

治体は「環境が受け入れられる容量を超える経済」や「天をも畏れぬ危険な科学技術」を持ち込んではならない。

電力不足に陥った東京電力が窮余の一策として実施した計画停電は意外な副作用をもたらした。東京で聞いたある一家の話だが、鉄道の不安定な運行状況のお陰で家族の帰宅が早くなった。停電の窓を開けると、満点の星空が広がっていた。家族一同が驚きの歓声を挙げた。都市住民もネオンの煌びやかさより星の瞬きが好きなのだ。久しぶりの停電は、それを思い出させてくれた。

消費至上主義が生み出したムダな利便、過剰なサービスを削れば、電力需要は原発なしでも賄えるほどに減る。それが逆に忘れかけていた豊かな暮らしを引き出すことにもつながる。駅のエスカレーターを止めれば階段の上り下りで健康増進になる、終電を早めればサービス残業や飲酒時間が減る、コンビニや自動販売機の深夜営業を止めれば昼夜の区分がはっきりした生活が戻る、テレビの放送時間を短縮すれば読書の時間も増える。計画停電が環境意識を高めるいい機会になることは間違いない。

消費電力を半減するような思い切った生活変革を地域や自治体から起こさなければならない。電力会社の政治的圧力を受ける国からの改革は期待できない。2011年統一地方選をその出発点にしてほしい。

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