静岡県の川勝平太(かわかつ・へいた)知事が4月10日、辞職願を提出し、5月中にも静岡県知事選挙が執行される見通しです。川勝知事が辞職の一因とされているのが失言です。このコラムでは、知事の辞職、そして次の選挙の時期について紹介するとともに、過去に失言が一因となって辞職した首長とその後の選挙結果をまとめました。政治家の失言の後、有権者は選挙の際にどのような判断をしてきたのでしょうか?
川勝知事は現在4期目で、任期は2025年7月4日まで。残り1年3カ月を残した辞職となりました。
さて、企業であれば辞職願は上司に提出しますが、自治体トップである首長は誰に提出するのでしょうか?正解は、その自治体の議会トップの議長です。地方自治法145条では、知事は退職しようとする日の30日前までに議長に申し出るよう規定されています。その後、議長が退職届を受理すれば、議長から選挙管理委員会に通知され、選管が選挙の執行日を決める流れとなります。
知事や市長などの首長が辞職した場合、50日以内に選挙を実施すると規定されています。
一部報道によると、川勝知事の次の知事を決めるための補欠選挙は5月9日告示、5月26日投票(選挙期間は17日間)の日程が候補に挙がっているそうです。
なお、次の首長の任期はどうなるのでしょうか。公選法では、現職市長の辞職による選挙後の任期は当選者によって異なるとしています。新人が勝った場合は選挙日から4年間ですが、後述の兵庫県・明石市のように現職市長が辞職して再び当選した場合は前回選挙日から4年間となります。
川勝知事は1日に県庁内で行われた新入職員への訓示の中で、「県庁というのは別の言葉で言うとシンクタンク(政策研究機関)です。毎日毎日野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいは物を作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳、知性の高い人たちです。ですから、それを磨く必要があります」と発言したことが、農家や畜産家などを貶める「職業差別」だと批判を浴びました。
「全方位外交」が求められる首長や議員にとって、失言はその後の命運を左右するものにもなっています。
記者に対して「殺すぞ」などと言い放った兵庫県西宮市の今村岳史(いまむら・たけし)市長が辞職したのは任期満了までわずか3ヶ月余りのタイミングでした。この発言の背景には「私有地への不法侵入があった」などの理由を説明しましたが、今村氏は次の選挙には出馬しませんでした。
選挙は任期満了から予定されていた日程よりも1週間前倒しの2018年4月15日投票となりました。
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失言後、議員辞職には至らずとも、その次の選挙で有権者から厳しい判断を下された政治家も。
五輪担当相を務めていた際にアスリートの病気の公表に対して「ガッカリ」と発言してしまった自由民主党の桜田義孝(さくらだ・よしたか)氏。辞任した後に迎えた2021年衆院選では小選挙区(千葉8区)で敗れ、比例(南関東ブロック)で復活当選しました。
民主党の松本龍(まつもと・りゅう)氏は、民主党政権下で復興対策担当大臣を務めていた2011年に東日本大震災の被災地を訪問した際に「知恵を出さないやつは助けない」などと発言したことが批判を受け、辞任しました。
退任会見では「被災者には人一倍寄り添っているつもりだったが、言葉が足りなかったり荒かったりして、被災者の皆さんの心を痛めたことを本当にお詫び申し上げる」と謝罪したものの、その次に迎えた2012年衆院選では小選挙区(福岡1区)と比例に重複立候補しましたが、折しも自民党が民主党から政権を奪還した選挙戦となったこととも相まって、いずれも落選しました。
一方で、失言後に信頼を回復するレアケースもありました。
泉房穂(いずみ・ふさほ)・前明石市長は「暴言」の指摘を受けて2回の選挙に臨みました。
1度目は2019年、市職員に対して道路拡幅工事のための土地買収が進んでいないことに対して「燃やしてしまえ」などと怒鳴りつけたことが報道され、こうした発言を踏まえ2019年3月に出直し選挙に臨みましたが、新人2人を退けて圧勝。その翌年、任期満了に伴う翌月の明石市長選挙では無投票で当選しました。
2度目はそれから約3年後、市議に対して「選挙で落としてやる」などと発言したことが批判を浴びたことから、2023年3月の任期満了をもって「政治家引退」を表明。2023年明石市長選では後継候補の応援にまわり、当選へと導きました。
暴言の批判を退けた泉氏のケースの背景には何があったのでしょうか。地元紙によると、「燃やしてしまえ」の報道後、この発言の後には「市民の安全のため」「私が行って土下座でもしますわ」など事業の公益性やそれにかける想いを語っていたとも報道されたことで風向きが変わったという話が伝えられています。
知事や議員の発言は「切り取られて」発信されることもある一方で、現在は役所やメディアが発言全てを動画や記事で配信することも増えてきました。有権者である私たちがこうした情報の全貌を求め、実際に見て判断する視点も大切ではないでしょうか。
さて、これだけ話題になっている静岡県知事選挙ですが、突発的な選挙ということで構図は見えていない状況です。
4月10日正午時点で出馬を表明しているのは、元静岡県副知事の大村慎一氏のみですが、他にも県内の首長や地元選出の国会議員も出馬を検討しているという報道もあります。
静岡県知事選挙の投票率は、川勝知事が初当選した2009年に61.1%の後、2013年に49.5%、2017年に46.4%と落ち込んだ後、前回の2021年に52.9%まで回復しました。
急転直下の選挙戦に突入しますが、「選挙ドットコム」では、有権者の方の投票先を決めるための情報発信に努めます。これからもご注目ください!!
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