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戦争と平和 令和になってどう変わる?日本の安全保障を考えよう(NO YOUTH NO JAPAN)

2020/11/1

NO YOUTH NO JAPAN

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こんにちは、NO YOUTH NO JAPANです!

私たちは若い世代から参加型デモクラシーを根付かせるために、政治や社会について分かりやすく発信しています。

若者の意見を政治に反映させるには、まず若者自身が意見を持つところから始まると考えています。そこで2020年からは毎月テーマを決めて、フォロワーの皆さんのモヤモヤや普段感じていることを「政治」で解決できるということを伝えられるようなコンテンツを発信しています。

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8月のテーマは「戦争と平和」でした。

 

この投稿テーマに関連して、NO YOUTH NO JAPANでは「戦争と平和」を、実際の選挙や政治を考える上で鍵となるテーマに落とし込んで、詳しく分かりやすい解説をしていきたいと考えています。

前回の記事では「防衛政策」について扱いました。今回は、日本を取り巻く「安全保障環境」について取り上げます。国際関係や外交に関心がある皆さんには興味深いトピックかもしれません。

なぜ「安全保障環境」について考える必要があるの?

国の防衛や安全保障を家庭や地域の問題に例えると、「家の防犯や警備」でしょう。国防を充実させるというのは自宅の警備を強化するようなもので、国の防衛政策は自宅の「警備プラン」と言えるでしょう。

皆さんのご自宅や近所の住宅・店舗は、どんな警備をしているでしょうか。防犯カメラや赤外線センサーがあるかもしれません。番犬を飼っているかもしれません。逆に、安全な地域で家には鍵を掛けるのみかもしれません。これらのセキュリティレベルは、もちろん予算にも左右されるでしょう。どんなものを守りたいかによっても変わってきます。そして、「家の周りの治安」も考えなければなりません。

これは防衛や安全保障でも同じです。周りにどんな人たちがいて、彼らがどのような言動をしているかによって、防衛や安全保障の政策や態勢は変わります。つまり、防衛や安全保障を考えるには、周囲の環境を知る必要があります。

そして、日本を取り巻く安全保障環境は従来の情勢から大きく変わりつつあります。

 

戦後から平成初頭までの安全保障環境

1989年11月にベルリンを東西に分断していたベルリンの壁が崩壊して、その翌月にはアメリカ合衆国とソビエト連邦が対立していた冷戦の終結が宣言されました(マルタ会談)。そして、1991年12月には東側諸国の実質的な盟主であったソビエト連邦が崩壊しました。

この昭和から平成に転換した時期の国際政治の大きな転換点は、日本の防衛体制にも大きな影響を与えました。

冷戦終結まで、もしくはソ連崩壊まで、日本にとっての脅威は「ソビエト連邦」でした。北海道のすぐ北西に位置しており、日本海に面したウラジオストクにはソ連海軍の太平洋艦隊が拠点を置いていました。そして、自衛隊はこのソビエト連邦が北海道に上陸してくること(着上陸侵攻)を想定して、戦略を立てたり、防衛計画を考えたり、武器装備を買ったりしていました。

※この戦略策定、計画立案や調達において念頭に置く相手国のことを専門的には「仮想敵国」と呼びます。

具体的には、北海道の広い平地での戦闘を想定して、そのために戦車や装甲車を北海道に多く配置したり、本州や九州の部隊を北海道に展開させる訓練をしたり、攻めてくるソビエト連邦の艦船や航空機を、艦艇やの戦闘機で迎え撃つ準備をしたりしていました。いまでも、北海道には多くの自衛隊(特に陸上自衛隊)の駐屯地・基地や演習場といった施設が残っています。

しかし、1990年に前後して、最大の脅威であったソビエト連邦が崩壊して、この体制は大きく変わりました。

 

激変した平成の安全保障環境

ソビエト連邦に続いて脅威となったのは、北朝鮮の核兵器と弾道ミサイルと、「テロリズム」でした。

1993年に北朝鮮は初めて日本海に向けて弾道ミサイルを発射しました。弾道ミサイルを使えば、北朝鮮は核兵器を遠くに、つまり海を超えた日本や米国に撃ち込むことができてしまいます。

同じ年に、北朝鮮はNPT(核不拡散条約)からの脱退を宣言して、ついに2003年には実際に脱退しました。そして、2006年以後、北朝鮮は断続的に核実験を実施しています。しかも、弾道ミサイルの発射実験も、何度も繰り返しています。

この北朝鮮の、より具体的には弾道ミサイルの脅威が1990年代から2010年代に掛けて、日本にとっての脅威でした。

そこで、日本は弾道ミサイルを迎撃できるイージス護衛艦(海上自衛隊)やペトリオットPAC-3(航空自衛隊)といった装備を調達して、この脅威に備えることにしました。

また、1995年3月20日、オウム真理教による「地下鉄サリン事件」が発生しました。これは無差別大量殺人行為であり、化学兵器によるテロ事件に他なりません。自衛隊はこの事件に際してサリンが散布された場所を除染したり、警察の捜査を様々な形支援したりしました。

また、2001年9月11日には、米国でアルカイダによる「同時多発テロ事件」が起きました。この事件では日本人も犠牲になったほか、死すらも恐れないテロリストの脅威を、世界の多くの人が思い知りました。これに続いた米国主導の対テロ作戦である「不朽の自由作戦」において、自衛隊は後方支援活動に従事しました。

さらに、世界にはISILのような国際テロリズムの脅威が続いています。オウム真理教も、教団の名前を変えて現存して、いまもなお松本智津夫元死刑囚を麻原彰晃として崇拝を続けています。

他にも、北朝鮮による工作船事件も発生したことから、先述の北朝鮮の工作員のようなゲリラ・特殊部隊による攻撃も想定されました。また、ソマリア沖のアデン湾では、身代金を目的とした海賊による民間船舶への襲撃事件も発生して、この対策も課題になりました。

そこで、陸上自衛隊は初の対テロ部隊である「特殊作戦群」を、海上自衛隊は不審船に対応する特殊部隊である「特別警備隊」をそれぞれ創設しました。また、ゲリラ・特殊部隊による攻撃を想定して警察庁や都道府県警察との合同訓練を実施しました。

そして、海賊対処行動のために海上自衛隊は護衛艦と哨戒機をアデン湾に派遣しており、その拠点としてソマリアの隣国であるジブチに、初の恒久的な海外施設として海上自衛隊の航空基地と港湾を整備しました。

 

令和で想定される安全保障環境の展望

先述の冷戦以後の脅威が未だに日本の安全保障政策に大きな影響を与え続けている一方で、さらに大きな脅威が差し迫っています。

それは東アジアにおいて、存在感を拡大し続ける中国(中華人民共和国)です。

例えば、中国人民解放軍の艦艇や航空機は日本海や東シナ海にたびたび展開していることが防衛省・自衛隊によって公表されています。さらに、中国は南シナ海において「九段線」と呼ばれるエリアの領有権を主張していたり、そのために人工島を建設していたりする実態があります。

2013年には中国人民解放軍海軍の艦艇が海上自衛隊の護衛艦に射撃管制レーダーを照射した事件もありました。この「射撃管制レーダーの照射」は艦艇が主砲やミサイルで攻撃する前に、ターゲットを狙うために行う動作であり、この事件は重大な軍事的挑発と言えます。

そして、人民解放軍はその規模や能力をどんどん拡大させています。特に海軍の発展は目覚ましく、従来であれば保たれていた海上自衛隊との戦力バランスも崩れつつあるとの指摘もあります。また、これは日米同盟に基づく海上自衛隊と米国海軍の紐帯に緊張をもたらす可能性も考えられます。

しかも、中国では自由、民主主義、基本的人権、法の支配、市場経済といった「普遍的価値」が保証されていません。その拡張主義は東アジアのみならず、全世界の普遍的価値に対する脅威と化しつつあります。

日韓関係の悪化も無視できません。
2018年に韓国政府は、北朝鮮に関する情報を日韓防衛当局が共有することを定めた日韓秘密軍事情報保護協定(GSOMIA)の破棄を決定して、日本政府に伝達することがありました。最終的に、これは米国政府からの要請に基づき撤回されましたが、日韓防衛当局の関係が大きく冷え込む結果となりました。

さらに、その年末には韓国海軍の駆逐艦が海上自衛隊の哨戒機に射撃管制レーダーを照射する事件すら起きました。

先述の中国人民解放軍による射撃管制レーダーや、その他の事件・事故を受けて、2014年に西太平洋諸国は海上衝突回避規範(CUES)を定め、平時に「銃、砲、ミサイルや射撃管制レーダーを向けない」ことが合意に至りました。したがって、この韓国海軍艦艇による射撃管制レーダーの照射はCUESに反しています。

米国との同盟関係を有し、本来なら「普遍的価値」を共有できるはずの日韓両国が対立することは、米国をライバル視する中国を大きく利することになり、インド太平洋地域の平和と安定を考える上でも非常に由々しき事態であると言えます。

民主主義を守るのはわたしたち

時代が変わっても、平成から引き継いだ脅威が消え去ったわけではありません。未だに北朝鮮は核兵器を保有しており、今年も弾道ミサイル発射実験を繰り返しています。テロリズムや海賊行為への対策も、引き続き求められます。

日を追うごとに複雑になっていく東アジアの情勢を前に、もはや理想や「ねがい」だけで平和や繁栄を守ることはできません。わたしたちは、身の回りの安全に関わる政治や社会の動きについても、しっかりと現実を見て考えていかなければならないのです。

「目の前にある脅威」から、自由と民主主義を守るのはわたしたちなのです。

NO YOUTH NO JAPANでは、これからも様々な入り口から政治と若者をつなげていく活動をしていきます。

 

連絡先
E-mail: noyouth.nojapan(a)gmail.com ((a)を@に)
Instagram: noyouth_nojapan
Twitter: noyouth_nojapan 

 

参考

防衛省 “統合幕僚監部 ソマリア沖・アデン湾における海賊対処”
https://www.mod.go.jp/js/Activity/Anti-piracy/anti-piracy.htm

防衛省 “統合幕僚監部 報道発表資料”
https://www.mod.go.jp/js/Press/press.htm

防衛省 “韓国海軍艦艇による火器管制レーダー照射事案について”
https://www.mod.go.jp/j/press/news/2019/01/21x.html

ロイター “特別リポート:中国が海軍力増強、崩れる太平洋の軍事均衡”
https://jp.reuters.com/article/china-navy-special-report-idJPKCN1S61S2

Center for Strategic and International Studies “How is China modernizing its navy?”
https://chinapower.csis.org/china-naval-modernization/

Congressional Research Service “China Naval Modernization: Implications for U.S. Navy Capabilities—Background and Issues for Congress”
https://crsreports.congress.gov/product/pdf/RL/RL33153

Toshi Yoshihara “Dragon Against the Sun: Chinese Views of Japanese Seapower”
https://csbaonline.org/research/publications/dragon-against-the-sun-chinese-views-of-japanese-seapower

公安調査庁 “国際テロリズム要覧 (Web版)”
http://www.moj.go.jp/psia/ITH/index.html

公安調査庁 “内外情勢の回顧と展望(令和2年度版)”
http://www.moj.go.jp/content/001311500.pdf

(文=堀口 英利)

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