「女性議員が増えることで、本当に、暮らしやまちは良くなるのか?」(小川晶群馬県議会議員へのインタビュー・聞き手:池田麻里)

2019/02/01

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池田麻里

2018年5月に成立した「候補者男女均等法」では、女性候補の割合を50%にするよう政党に努力義務を求めている。女性議員の増加は、政治や社会にどんな変化をもたらすのだろうか。

今回は群馬県議会議員の小川晶さん。無所属、2期目。地方議員にはまだ少数の弁護士資格をお持ちです。独身女性としての葛藤もお聞きしました。

今回お話を伺った群馬県議会議員の小川晶さん

法曹界の経験を県議会で活かす

-晶ちゃんは、そもそも群馬県の出身ではなかったですよね?

はい。出身は千葉県ですが、司法試験に合格後の司法修習の配属先が前橋地裁でした。なので、そのまま前橋市内の法律事務所に就職して。

勤務先に前橋市を選んだのは何か理由があって?都内にも千葉にも、法律事務所は沢山ありますよね?

私が弁護士登録した平成19年はちょうど司法制度改革でロースクールが始まったころで、司法試験の合格者が増えて、都市部の就職先が全くありませんでした。一方で、地方も地元のベテラン先生方が自分の職を守るために新人を採用しない地域も多くありました。あからさまに県外の人材を受け入れないところもありました。私がたまたま修習した群馬県は弁護士会の先生方が義理人情に厚い雰囲気で、歓迎してもらえたのです。

弁護士の就職活動ってどのようにするのですか?

一般企業と同じです。大きな事務所では説明会に参加して、エントリーして、書類選考があって、集団面接を受けてという流れ。(最近はまた都市部の求人が増えてきて、地方の法律事務所では募集をかけても人材が集まらないという話も聞きます。)

群馬県の弁護士会の先生方の雰囲気が良かったから、県内で応募しようと思ったんですね

そうですね。私が入った事務所は実は採用募集していなかったのですが、女性の弁護士を雇用している事務所でしたので、やはり働くなら同性のいるところが良いなと思い、無理やり押し込んでいただいたような形で(笑)

-一口に弁護士事務所といっても、得意分野は様々なのでしょう?知財、M&A、離婚や民事・・・色々ありますもんね。

都市部はそうですが、地方はだいたいどの事務所でも全般的に網羅していますね。町の中小企業で問題になりやすい法務であったり、家庭の問題であったり、刑事事件もやっています。

-弁護士としてのお仕事は2年くらい?

3年半くらいですかね。

-そこからなぜ、県議会に?

直接のきっかけは、弁護士会の先輩から「(当時の)民主党が県議会議員選挙の候補者を探して公募しているのだけれど、どうか?」と声がかかったことです。
私は当時、ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の支援に多く携わっていました。また、湯浅誠さんの貧困キャラバンが全国で始まった頃で、子どもの貧困と教育格差のシンポジウムを弁護士会で開催したり、民法改正のロビー活動で国会を訪れたり、年越し派遣村に参加したり。弁護士会の中で、そうした政治的な動きを結構していました。特にDVに関しては、群馬県の女性相談所の体制が非常に遅れていることに対して、弁護士会から要望を出しても変わらなくて。子どもの貧困についても、教育長へいろいろ提案したものの結局進まず・・・。
そういう時に、県議会の中から動かす方法もあると教えていただいたので、それでは!と飛び込みました。騙されたというか、何も知らないから挙手してしまったという感じです(笑)

実はこの話には裏があって。当時、前橋市の民主党が県議会議員選挙の候補者を擁立しようと準備していたのが、選挙半年前の10月頃になって、その候補者が「やっぱり出られません」となったらしくて、でも民主党として誰かを擁立したい、落選しても問題のなさそうな医師か弁護士がいないかということで話が回ってきたそうです。

初当選が2011年でしたよね。民主党の政権交代後、結構大変な時期でしたよね?

参議院選挙で負け、消費税問題で菅直人さんが壊滅的になり、東日本大震災もあって、まぁ大変な時でしたね。厳しかった・・・。本当に、人じゃないような扱いでした。

最初の選挙は、誰かが具体的に選挙を運営したり、助言したりしてくれたの?

1回目は事務的なことや選挙カーの段取りは民主党議員の事務所がしてくださいましたね。もちろん資金は自分で出しましたが。私はとにかく選挙まで3、4ヶ月しかなかったので、毎日、ご挨拶まわり。

選挙の準備といっても何をしていいか分からない?

全く分からないですよね。特に何をするようにとも言われないので。とにかく二連ポスターを持って歩いて、毎日ポスターを貼ってという日々でした。朝の街頭演説と、ポスターだけずっとやっていました。

-新人の女性候補に対するまちの反応はいかがでした?

現在でもそうですが、女性が政治をやっているイメージが群馬にはあまりありません。しかも、若い人というとなおさら。

-驚かれるような感じ

その感じはありますよね。お話が出来て、弁護士ということを知っていただいてようやく少し印象が変わったというか。若いけど議会の中でもちゃんとやってくれそうだなと思っていただけたので。

日本の地方議会には法曹の方が少ないじゃないですか?そこに対して思うことはありますか?

少ないですね。もっと法曹界から入ってもらえたらありがたいです。群馬県議会では私と公明党所属の県議会議員のふたりです。

-法律家としての経験が議会活動に活きることはありますか

そうですね。
これは地方によって議会のレベル、議員さんの能力などに差があるかと思いますが、論理的な質問ができる議員は決して多くないと思います。きちんと調べたりせずにエビデンスも全く取らないまま、ご自分の持論のみで「どうだ?」って聞いちゃうというレベルなので。
もう一人の弁護士議員さんも、法律や条例などのバックボーンを調べ、論理立てて質問なさっているので、そういう点は大きいなと感じます。

議員提案条例に取り組まれたことはありますか

会派でというのはありません。群馬県議会では特別委員会などを作って政党関係なく議会として課題に取り組むやり方が多いです。

-どういう条例ですか?

議会基本条例や家庭教育の応援条例などです。自民党が家庭教育援条例を作ろうと全国でキャンペーンをしていた時に、せっかく作るなら「古き良き日本」ではなく科学的な、きちんと子育てのやり方を取り入れようと思って、特別委員会の中で素案を修正しながら作りました。あとは、手話言語条例とか、本当にフラットな感じで取り組んでいます。

保守王国-群馬の特徴

-群馬県議会には、市議会や町議会から上がってくる方が多いのでしょうか?業界団体の方とか?

業界団体はそれほどいません。市町村議会議員から上がってくる方と、国会議員の秘書経験者の方が多いですね。

-やはり、保守王国ですからね・・・。国会議員もたくさんいらっしゃいますもんね。そうすると、変な話、地元の先生を支えるために県議会議員になっている方もいらっしゃるのですか?

そういう方が圧倒的に多い気がします。
政党という組織の枠組みの中で上がってくる人と、地元の名士・権力者で上がってくる人が圧倒的に多いので、そういう男性は基本的に課題意識がありませんよね。

-陳情、要望はあるんでしょうけどね(笑)

群馬県全体の課題なのですが、本当に政治的にどんどん停滞していて、今回の県議選では18ある選挙区のうち、確実に選挙になるところが6区しかありません。前橋市と高崎市も無投票の可能性が高いです。オンブズマンのような候補者が出れば選挙になりますが、でも結果は既に明らかという感じです。

-うちの市では定数60名に対し、10名ほどが引退しますので約2割入れ替わります。
それくらい刷新されないと議会の雰囲気も変わらないのにと思います。

年号は変わるのにね(笑)

-新人の出馬が難しいのですね。

前回の前橋市議選も新人候補が少なかったですし、先日の昭和村議会議員選挙では、定数割れで再選挙になりました。組織に関係ない人は、突然出てきますが、ほとんどが誰かの後継者。

-陳情のやりとりが多いなどといった印象はありますか?それとも、2世3世で「わが村の殿様」のイメージなのかしら

殿様みたいなイメージですかね。

県議会にも2世3世の占める割合は、多い印象ですか?「政治ご一家」のような・・・。

ものすごく大勢いますよ!政治関係者が親族におられる方は非常に多いと思います。
今度の県議選でも、現市長が引退してその息子さんが出馬したり、元県議の息子さんが出馬したり、元県議の妻が出馬したり。

-それは特殊な環境ではないかと

群馬の選挙は経済的負担が大きいのではないでしょうか。経済面で余裕のある方ばかりな気がします。

-いわゆるってやつですね。金銭を要求されたことあります?

私自身はないです。もともと持っているものもありませんから(笑)。要求されても断るしかないですし。
これから選挙に挑戦する候補者と話をしていると「町内の名士からタオル持参での全戸挨拶回りを指示された」と言う方がいて!「違反で逮捕されるから辞めた方が良い」と慌てて止めたりしましたが、本当にそれが未だにまかり通っている地域もあるのか・・・と。

公職選挙法を分からないままに慣習を言われて従ってしまう人もいるでしょうね・・・。

知らないと流されてしまいがちですよね。いわゆる選挙ゴロのような人はいますから。



2018年5月に成立した「候補者男女均等法」では、女性候補の割合を50%にするよう政党に努力義務を求めている。女性議員の増加は、政治や社会にどんな変化をもたらすのだろうか。
今回は群馬県議会議員の小川晶さん。無所属、2期目。地方議員にはまだ少数の弁護士資格をお持ちです。独身女性としての葛藤もお聞きしました。

少数派の女性県議会議員として

-今、群馬県議会の中で女性議員は何人でしたっけ?

2人です。

-自民党会派にはゼロなんですね

32人いてゼロなんですよ・・・。

-まぁ割合でいうと、埼玉県議会も同程度。これが全国の県議会の課題の一つだと思っています。

-初めて当選して先輩議員の方々から「女の子」扱いされたりなどはしなかったですか?それとも腫れ物に触るような感じだったのでしょうか?

まるで宇宙人のような感じで(笑)腫れ物でもないのですが、なんだか分からない様子だったような気がします。ただ、当時はまだ1期上の阿部知世県議や安中の市長になられた茂木英子県議がいて、同期当選で自民党の女性県議も1人いたので、私を入れて4人それぞれキャラクターがあったので、私は若手で自由にやらせていただきました。懇親会などでもお酌とかもしないので。いわゆる女性がやるようなことをやらないというか。

-女性であることで何か困ったことはありましたか?

議会の中だと・・・。女性だからということで、矢面に立たされる場面がありましたね。
知事が知事公舎に女性を宿泊させているという週刊誌の記事が出た際にも、その追及は「女性だからお前やれよ」という感じで。

-女性だし、どちらかというと野党的な立場だから、そういう追及はやってくださいというようなことなのかな

おそらく。ですので、そういうプレッシャーは全部こちらにきました。知事の不適切な行いを指摘するのは大切ですが、それは女性だからというわけではありませんよね。なのに、そういう話題になると、私が担当のような雰囲気が出るのは、まだまだ遅れていると感じました。

-結果を出すためにはどういうアプローチが近道か、戦略を持った方が良いのでは、と女性に対して感じる時もあります

戦略は大事だと思います。県議会は市町村議会よりも他の会派との仲が良いと思います。選挙区が異なればライバルではないので。
私の同期も会派に関わらず皆仲が良いので、同期の他会派の議員を通じて(主に自民党会派の議員になりますが)「ここをこう変えてほしい」と提案しやすいです。委員会の視察で行きたい場所を挙げたり、こういう意見書を出したいと相談したり、根回しが出来るので、それを活かせればと考えています。

-最近、群馬県全体の女性議員の会のようなものは開催していらっしゃいますね

ぐんま女性議員政策会議といって、超党派の県・市町村の女性議員の集まりです。平成18年から続いています。

-何人くらいいらっしゃって、どのような活動をなさっているのかしら

現在の加入者は26名ほどかと思います。
基本的には、年に2回勉強会を開催し、そのうち1回は総会を兼ねていて、もう1回は知事提言を行います。その他にも役員会や意見交換会を開催しています。

-女性に関わる政策の提言ですか

女性の視点で、教育や福祉、男女共同参画などですね。

-今年の知事提言で、柱になっているテーマは何ですか?

教育、スクールカウンセラーの配置や、発達障害児支援などですね。

群馬県特有の課題としてお感じになっていることは何かありますか

児童虐待や障がい者施策、大型開発の問題など県の課題は様々ありますが、群馬特有というと外国人対応でしょうか。もともとの定住の外国人も多く、これからの受け入れ見込みも多いですので、群馬モデルとして良い形で発信できればと考えています。その提案もしていますが、なかなか県は積極的な動きではなく、どちらかというと国任せな印象です。

-もったいないですね、モデルケースとしてやっていけたら良さそうなのに

改正出入国管理・難民認定法(入管法)が話題になっている現在、群馬でしっかり出入口を改善して、不当な労働条件を解消していこうと提案しているのですけれど・・・。

-外国人定住者が増えることは、地域活性化にとってマイナス面ばかりではないはずです

群馬は、製造業と農業が基幹産業、メインになっています。観光業もありますが、あまり強くありません。製造業も農業も、どうしても外国人が必要になってきていますので、そこは群馬が注力できるところだと思いますし、群馬でできたら全国にPRできると考えています。まだ県の反応が弱くて残念です。

-外国人を受け入れたくないということなのでしょうか

受け入れたくないということはなさそうですが、議会からも、群馬県に取り組ませようという意思や発想が感じられません。他会派の県議は「それは国や国会議員の仕事ですから」という雰囲気なので・・・。

-国との太いパイプがあるからですかね

その方がラクじゃないですか、伝えるだけで終わるので。それよりも県でできることを考えましょうという発想はあまりないようで、だから全部が遅れているのだと感じます。国がやったらやりますが、他県がやっていてもたいして動きません。

-もう少し主体的に動いていただけると嬉しいですね

議会にもそういう人材を求めています。外国人対応、国連とは言わないまでも国際活動をしているような女性が議会に入ってきていただけると面白いと思っています。

-私自身も本音の部分で、女性という性にのみターゲットを絞って増やしていくこと、が良いのか迷っているところがあって。そこはどう思われますか?

長い目で見れば、とりあえず増やすことは大事だと思います。
よく話題になりますよね、女性議員の会で集まった時にも。誰彼構わず増やせば良いものではないという意見もあります。女の性別で当選しても中身がおじさんのような人もいますので、誰でも良いわけではありませんが。
じき、当たり前になってくると思うんですよ。今はわざわざ「女性」とつくほど数が少なくて、増員を求められますが、議会でも1から2割程度になれば、性別関係なく「普通」になって雰囲気も変わるはずです。当たり前になるその過程が大事だと思っています。

-さて、私も含め、独身の女性議員は良くも悪くも注目されていますが、晶ちゃんはプライベートの過ごし方などでご苦労があったりしますか?

気にしていないです、全然。池田さん、気にしていました?

-地元国会議員の秘書を車の助手席に乗せたりすると、「男と車に乗っていた!」と噂されたりしますね(笑)

そんなことしょっちゅう言われます(笑)。でも気にしていられないので、「そうですよ」と流しつつ。青年会議所活動なんかもですよね。夜、お酒の出る食事会に参加していると、「いつも違う異性と一緒にいる」と揶揄され、「その通りです!」とやり過ごして。

-気にしないのが一番ですね。本当に近い方はご理解くださるので

そういうことを気にしてしまう人は、あまり向いていないかも知れませんね。

-良い意味での図太さがないと、あとは取捨選択する勇気。先日も、議員活動や政治活動中のセクシャルハラスメントが話題になっていましたが、私自身はそういう経験がなかったので。

あったけど気にしていなかっただけではないですか(笑)

-そうかも・・・。私の周りには女性議員が多くいましたので、うまく発散できていた部分があると思っています。一方、たった一人しかいなかった場合、思いつめてしまったりするのではとも思いますね。

ネットやブログなどインターネット上のやり取りは変な方向へいってしまいがちですしね。

-夜中に送り付けられたLINEやメッセージを「なぜすぐ確認しないのか」と責められたりするのがしんどいというケースもありました。私なんかそんなもの一晩明けないと絶対に開きませんが。

私もそういう連絡には応じませんし、電話も折り返さないので、よく「いつも電話に出ない」とお叱りを受けます。

-でも、自分の身を守ることも大事だと思うんです

100%人に好かれようと思うと辛いでしょうね。
女性議員だけでなく男性議員も、地元の方に都合よく「すぐ出てこい!」と夜でも昼でも呼びつけられたりして。「こいつは俺の言うことを何でもきくんだ」と言いたい方も多くいると思うので、そういう相手との付き合い方、適度な線引きが必要だと思います。

-地方議員は秘書がいないので全て自分が最前線ですからね。

私自身の反省点は、ここのところ、そういう細かい要望や一人ひとりの相手が疎かになってしまって、それよりも自分の勉強したい課題や取り組みたいテーマの方に一生懸命になってしまっています。とはいえ、最も大事なのは政策や、課題をどう解決するかです。個々人の悩みももちろん大事ですが、少なくとも「電話に出ろ」「飲んでいるから出て来い」の優先順位は限りなく低いです。葬儀参列でさえ、正直そう高くありません。もっと、自分はこれを大事にしていこうという信念がある程度決まっていれば、あとは気にしなくて良いのではないでしょうか

-私もそう思います
-3期目に挑戦したいことや、引き続き取り組みたい政策はなんですか?

現在、障害者に関わる課題をいろいろ伺っているところですので、それをより進めたいです。社会参加やケア、就労もそうです。障害のある方の周辺におられる方(保護者、きょうだい)に対する支援も進めたいです。
DET(障害平等研修)を群馬県は熱心にやっています。それを教えてくださったのが、伊勢崎市議会議員になられた高橋さんという車椅子の方です。高橋さんと知り合って、そういう研修があるので群馬で進めていきませんかとご提案いただき、すぐ当時の委員長に打診して視察に行きました。それ以来、県庁でも毎年DET研修を開催してもらえるようになりました。小さなきっかけですが、障害の分野には足りないところが多いことに気づかされ、広がれば広がるほど知ることも増えてやりがいがあります。

-今後のご活躍に期待しています。ありがとうございました。

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池田麻里

池田麻里。 1975年生まれ。早稲田大学在学中に代議士事務所でインターンを経験。民間企業勤務を経て枝野幸男秘書へ。2007年さいたま市議会議員に初当選。3期12年にて引退。女性を政治の場へ送り出すために活動中。

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