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民進党右旋回ー自民党を飛び越えてどこへ行く?

2016/9/7

室伏 謙一

室伏 謙一

民進党代表選

民進党代表選、9月2日の告示を受けて、本格的な選挙戦が始まった。もっとも始まったと言っても、野党の代表選、自業自得というべきか国民の関心はそれほど高くないようだ。

今回の代表選、推薦人20名を集めて立候補できたのは、告示前から立候補表明をしていた蓮舫参議院議員、前原誠司衆議院議員に加え、玉木雄一郎衆議院議員の3名。いずれも党の刷新を掲げている。もっとも、党の刷新といってもその対象は旧民主党。前原氏は旧民主の負のイメージがあるとし、国民にお詫びしますと繰り返しているが、それは旧民主の話であって旧維新とは無関係であるのだから、新しくなった民進党で旧民主の迷走についてお詫びとは、お門違いも甚だしい。その身勝手さと勘違いが旧民主の信頼失墜の一因でもあろうところ、屋上屋を重ねるというか、地下室の下に更に地下室を作るがごとき言動には呆れ返る。

玉木氏も過去の民主党との戦いを訴えているが、過去の民主党とは旧維新も各議員が旧党時代(みんなの党→結いの党、日本維新の会)に過去の民主党と戦ってきているので、なるほど上手いことを言うものだ。

それよりウワテなのが蓮舫氏で、埋没への危機感、民主・維新が合流したといっても規模が小さいことへの懸念を示し、そして野党第一党に甘んじていていいのかと投げかける。旧民主ではなく新しい民進党として変革していこうという雰囲気を醸し出すようなところは蓮舫氏の真骨頂、さすがといったところか。

そうした姿勢や政策をメルクマールにして、党内各グループは候補者への支持を表明している。23人という党内最大の議員の旧維新グループ、その動向が注目されたが、江田憲司衆議院議員と松野頼久衆議院議員を除く21名を3分割して3候補の支持に回った。党内融和を優先しての判断ということらしいが、代表選挙は必ずしも党内分裂の火種になるわけではないし、こういう時こそ旧維新が埋没しないことを考え、江田氏でも松野氏でもどちらでもいいが旗を立てるというのが常套手段であろうし、そもそも誰を支持するかは政策が云々と曰っていたはず。なんともお粗末な行動。これで旧維新グループは終わったと思われても仕方あるまい。(旧維新系の地方議員達は、これまで散々国会議員の迷走、付和雷同、やりたい放題に振り回されてきた。そして今回またしても振り回された旧維新系の地方議員の落胆、憤慨は幾ばくか。)

さて、これら3候補の主張、憲法改正や安全保障に着目して見ていくと、ある傾向が見えてくる。

まず前原氏、憲法改正はしっかりやるべきとし、制約なき集団的自衛権の行使をさせないために第9条に第3項を加えるとしている。これは集団的自衛権の容認を前提とした発言であり、党として反対してきた集団的自衛権の行使を事実上認めると言っているのと同じである。第3項を加えるというが、何を加えようというのか。第1項及び第2項を有名無実化するための内容にでもしようというのか。その内容いかんによっては、自民党草案をも飛び越える可能性さえあるのではないか?

蓮舫氏は憲法審査会を止めているのは自民党であるとした上で、改正について審査会で堂々と議論すべきであるとし、地方自治に関して規定する第8章や婚姻や家族について既定する第24条を「今の時代に合わない規定」として改正を検討すべきとしている。その第8章、第92条から95条の4か条で構成されているが、地方自治に関する大枠のみ規定し、詳細な内容は法律で定めることとされている。

第92条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
第93条 地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
2 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
第94条 地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。

第95条 一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。

さて一体これらの条文のどこが「今の時代に合わない」と言うのか。地方議会の設置や首長・議員の選挙を止めろとでも主張したいのか。第24条についても同様で、この規定のどこが「今の時代に合わない」というのか。婚姻が両性の合意のみに基づいて成立することや夫婦が同等の権利を有することを止めろとでも言いたいのか。

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
2 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

蓮舫氏の無知ぶりなのか頓珍漢ぶりなのか、どちらにせよ呆れ返るのを通り越して恐れ入る。

一方で、憲法の平和主義については守るべきとしているが、第9条の扱いについては言及がない。それもそのはず、蓮舫氏は平和安全法制については「いいものと悪いものとがある玉石混交」であるとし、「戦争法案」という言い方はミスリードであったとまで言い切っている。この発言も集団的自衛権の行使を、条件付きで容認すると言っているのと同じである。国会正門前で「戦争法案反対!」と叫ぶデモ隊の中に入り、デモ参加者と一緒に気勢を上げていたあの蓮舫氏が、である。軸なき変節漢以外浮かんでくる言葉がない。

つまり、ある傾向とは、民進党の右傾化であり、場合によっては自民党を飛び越えて更に右側に行く可能性があるのではないか。自民党には護憲派や良識派が厳然と存在し、たとい安倍政権が暴走したとしてもブレーキ役を果たすだろう。しかし現在の民進党は、前々回の民進党代表選に関する拙稿で指摘したとおり、ベクトルなき無党派層の集まりのようなものであり、前言をひっくり返すのがお得意な方が多いようであるから、どこへ飛んでいくか分からないのではないか。(領域警備法を含め、個別的自衛権での対応という独自案を作成し、正々堂々と議論した旧維新グループ、ブレーキ役になりうる唯一の党内グループだったが、今回の代表選で前述のようなテイタラクを演じているようでは、その可能性は限りなく低いだろう。)

なお、玉木氏については、憲法改正議論はしっかりやるとし、向こう1年を目処に民進党としての考え方をまとめたいとしているが、立憲主義を守ることや海外での武力行使は認めないことを明言しているのみならず、違憲立法の審査のための憲法裁判所の設置等を掲げており、他の2候補とは一線を画している。玉木氏であれば、右傾化といった批判を受けることなく、自民党の護憲派や良識派とはしっかり渡り合えるのではないか。もっとも、同氏が民進党代表に選出される可能性は低いと考えざるを得ないが。

※本記事は「政治・政策を考えるヒント!」の9月6日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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室伏 謙一

室伏 謙一

政策コンサルタント、室伏政策研究室 代表。 政財官での実績を生かし、国会議員、地方議員の政策アドバイザーや民間企業向けの政策の企画・立案の支援、政治・政策関連の執筆活動等に従事しています。  専門は政策・法令分析、規制改革、官民連携、公共交通・まちづくり政策。

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