安倍政権の国家管理経済が招く危機

2016/09/01

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コラム

中村 仁

3年連続で100兆円の予算要求

来年度予算編成に向けた各省庁の概算要求が締め切られ、合計すると3年連続で100兆円を超えました。政治家も官僚も財政資金は自分たちの財布と同じと思っているのでしょう。財政危機は人ごとのようで、気楽なものです。国家予算は膨張するばかり、日銀も膨張するばかりで、巨大化する国家管理型経済に市場経済は生気を失っています。

首相が音頭を取った今年のサミット(先進国首脳会議)で「世界経済は再びリーマンショック並みの危機」と、事実誤認の認識に立って積極財政論の旗を振りました。自民党幹事長の二階氏は積極財政派の最右翼ですから、財政規律が緩むのは目に見えていました。今後、査定があるにせよ、第二の予算の財政投融資という抜け道があり、2割増の総額16兆円という膨張です。

「景気が悪いといって財政出動をして赤字を膨らませる」一方、「景気が好転しても、増加した税収を使えば財政を痛めないからいいだろう。もっと景気をよくしてから、財政赤字の削減を考えよう」。景気が悪い時は財政出動、景気が良くなればなったで、今度は政治の都合(大衆迎合論)で財政出動という繰り返しです。だから、いつまで経っても財政赤字は減らない。財政問題に取り組むには政治論、経済論の両面からの歯止めが必要になるのです。

 

 

財政規律を守らせる法律が必要

そのようなことを指摘したのが米国の財政学者のブキャナン氏(ノーベル経済学賞)でした。日本が歩いてきた道はその通りになり、積り積もって1,000兆円の財政赤字です。だから欧州連合(EU)は財政規律を守らせる基準を法で設けています。それでも守れない国が出てくる。日本は財政規律を法律で決めることすら考えが及ばない、ということですね。

アベノミクスは当初、黒田総裁の異次元金融緩和をさせました。やってみたけれど、デフレ脱却、物価上昇の効果が上がらない。それどころか、最近は「金融は政策飽和状態に入ってしまったようだ。政策効果が持続しない」(西村清彦東大教授)という評価です。さらに「政策飽和は財政政策にもあらわれ、効果が後年度で急速になくなる」(同)との指摘です。

日銀は異次元緩和で国債を市場からどんどん買い上げており、債券市場は市場機能を失いつつあります。さらに公的年金の積立金を運用する行政法人(GPIF)と日銀が株式をどんどん買い上げるものですから、これらの公的マネーが筆頭株主になっている1部上場企業は今や4社に1社だそうです。ここでも市場機能が低下し、国家管理経済化しています。

 

 

税収の乗数効果の検証もない

金融財政政策では、世界経済の構造的な停滞から抜け出せないのです。にもかかわらず「アベノミクスのエンジンを目いっぱい、吹かす」(安倍首相)を続けたら、金融も財政も泥沼ですね。せめて「名目成長率が1%増えたら、税収は何%、増えるか」を財政出動の根拠にすべきです。つめるべきは税収の乗数効果(せいぜい1%増か)の議論です。この最も肝心な点については、学者が持論を主張しているだけで、政府は安倍政権に気兼ねしてか試算をしていません。

多くの経済学者が強調しているように、「規制緩和による成長政策」、「新しい産業、市場、製品の創出」、「民間企業が主導する市場原理による経済の復活」が必要なのですね。安倍首相も「未来に向かって挑戦あるのみだ。この内閣は未来チャレンジ内閣だ」と叫んでいます。首相はスローガンを並べることは好きですね。重要なのはその手順と実現可能性です。

最後に。住宅ローンが極度に下がり、一方で相続税の増税とあって、賃貸アパートの建設ラッシュが起きています。そのため、家賃は下がる、アパートの空室率は上がるで需給が悪化しています。これも一因となって物価下落を招き、日銀が望む消費者物価の上昇が遠のいています。異次元緩和の手詰まりを示す一例ですね。

 

※本記事は「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」の9月1日の記事の転載となります。オリジナル記事をご覧になりたい方はこちらからご確認ください。

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中村 仁

全国紙で長く経済記者として、財務省、経産省、日銀などを担当、ワシントン特派員も経験。2013年の退職を契機にブログ活動を開始、経済、政治、社会問題に対する考え方を、メディア論を交えて発言する。

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