「ラップと選挙 ラップと選挙 何の関係があるのか」
鎮座DOPENESSが独り言のようにそう歌うのを、じっと眺めていた。
6月4日・5日の2日間に渡り、新宿ステーションスクエア(アルタの向かいの空間だ)にて「TOHYO CYPHER」が行われた。このイベント18歳選挙権のPRを目的とした日本語ラップのミニ・フェスティバルのようなもので、ラッパーのライブはもちろん、即興ラップで言葉を繋いでいく「フリースタイル」や、即興ラップで戦う「フリースタイルバトル」を盛り込んだ内容だ。フリースタイルバトルの深夜番組「フリースタイルダンジョン」が若者を中心に大流行していることを受けて企画されたのだろう。
このTOHYOサイファーの開催が発表されたとき、大きく分けて二種類の批判があったように思う。
まず一つは、「国のためにラップをするなんて、カウンターカルチャーとしてのHIPHOPのアイデンティティーをないがしろにしている」「ラップが利用されている」という、ラップ文化が軽んじられたという危機感の問題だ。
もう一つは、「若者に人気だからと言ってこじつけでラップイベントをして、それで投票率は上がるのか?」「若者をバカにしている」という、選挙権のPRとして安直すぎるのではないか、という問題だった。
私は「フリースタイルダンジョン」からラップを聴き始めたヒップホップ初心者であるが、にわかなりに「税金でラッパーを呼ぶ」ことの不思議さを疑問に思ったし、その一方で素直に「無料でこんなすごいメンツを見ることができるのは嬉しい」とも思った。
複雑な心境のまま、私は2日目のステージを見に行ったのである。
それでは、今回のステージのハイライトを、時系列順の写真で振り返ろう。
まず一発目のライブは、5人組フィメールラッパーユニット・S7ICK CHICKsだ。

「TOHYO!」「CYPHER!」というコール&レスポンスで、10代20代の若者が目立つ会場を盛り上げていた。
続いては、観客が「投票」したお題に合わせて即興ラップを行うサイファーが行われる。登壇したのはACE、Dragon one、LEON a.k.a.獅子、輪入道、PONY、DOTAMAの5人だ。
選挙管理委員会から借りてきたという本物の投票箱を使い、観客からワードを募集するのだが、政治や選挙に関係のある言葉は一切出てこなかった。

「都営大江戸線」でラップをする輪入道

「筋肉」についてラップするACE、見守るDOTAMAと輪入道
続いてのライブは、2MCユニット・TAKARABUNEのステージ。「海外ニュースも見て、視野を高く」「民主主義は投票しなきゃ始まらない」というメッセージが非常に印象的だった。

そして、観客が一気に盛り上がったのがMCバトルである。山梨をレペゼン(代表)するラッパー・PONYと、10年間のサラリーマン経験がある異色のラッパー・DOTAMAの勝負となった。
「お偉いさんごめん、これがバチバチのバトルだよ!」というDOTAMAの茶目っ気あるパンチラインが飛び出し、結果はDOTAMAの勝利。

次は、先ほどバトルで勝利したばかりのDOTAMAによるライブが行われた。「フリースタイルダンジョン」のレギュラーMCに加え、バンド「FINAL FRASH」のボーカルも務めるDOTAMAの登場には、歓声もすさまじい。
18歳選挙権については、「僕から言える事は一つ、選挙に行きましょう」という簡潔なコメントがあった。

「HEAD」「音楽ワルキューレ2」などを披露
続いて、再び観客からお題を募るサイファーが実施される。登壇したのはCHICO CARLITO、CHARLES、SALVADOR、KISS SHOT、ISH-ONEの5人。今回も選挙っぽいワードは出現しなかった。


LEONは1998年生まれ。若い……。
ここからは若い世代のラッパーによるパフォーマンスが続く。
まずは、2015年の高校生ラップ選手権で優勝した横浜出身の若手ラッパー・LEON a.k.a.獅子が登場。「自分たちで決められるのは悪い事ではない」「俺は投票して自分の進みたい道を突っ走る」と、スマートかつクールな言葉で選挙への参加を呼びかけた。
さらに、LEONと同い年である17歳のラッパー・SALVADORがライブを行った。彼は選挙権についてコメントを求められ、なんと「政治とか興味ないと思うけど、適当に」「俺は20歳ぐらいになったら選挙行くから」と言い放ったのである。若者の本音が一番はっきり見えていたと思うし、個人的にはこういう場所で建前をあえて言わずに本音を言ってしまうところが小気味よかった。いや、選挙は行かないといけないんだけども。
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