石岡市では、10月27日に石岡市長選挙が行われました。
今回、編集部が注目したのは、石岡市ホームページの選挙ページに掲載された「選挙公報 音声版」でした。
多くの自治体のホームページでは、視覚障害者も利用しやすいように「音声読み上げ機能」を付けているところが見受けられます。
岩岡市でも「音声読み上げ」機能が設置されていますが、その充実度と使い易さ、デザイン面、すべてにおいて優れたものとなっていました。
さらに特筆すべきは選挙公報です。石岡市ではPDF版とは別に、「音声版」として実際にナレーションを吹き込んだ音声ファイルが掲載されており、とても聞きやすくわかりやすい音声となっていました。
以上の評価に対し、石岡市に選管アワード大賞をお贈りすることに決定いたしました。
選挙管理委員会・書記の荒張卓也さんにお話をうかがいました。
石岡市では今年10月のホームページのリニューアルに向けて、石岡市の歴史や自然の素晴らしさが利用者に伝わるデザイン、そして高齢者や障害者、子供達も同じように情報にアクセスできて利用することが可能なウェブアクセシビリティの強化に重点をおいたものにしようと考えたそうです。
ホームページを覗いてみると、自治体ホームページの下段に石岡市のレトロな町並みの絵を添えたり、ところどころに日本的な文様が施され、色調も和風に整えられており、落ち着いたデザインです。
またウェブアクセシビリティ部分では、「音声読み上げ」「ひらがな表示」「コントラスト変更」「文字拡大」「翻訳機能」「印刷機能」を強化したとのこと。確かにページ左端にあるフッターにこれらの機能がすべて収まっていて見つけ易く、デザイン的にも優れています。特にページ下に表示される「音声読み上げ」の各種機能、「速度」「音量」「パン」、「音声」(男性と女性各2人の計4名から選択可能)、そして「ルビを振る」も見つけやすい。各調整はバーを左右に動かすだけなので使い方も簡単。「音声」部分は「Yuki」「Takashi」「Keiko」「Satoshi」とそれぞれ名前がついていて親しみがわきます。
大賞の対象となった「音声ファイル」について荒張さんに聞いてみました。
「選挙公報の掲載にあたって様々なサイトを参考にしました。音声ファイルについては他では見当たらないようでしたがチャレンジしてみました。」と荒張さん。
通常、「音声読み上げ」機能は自動的に機械が読み取るので、PDFで情報掲載したものについては使えません。また、実際の読み上げについても言葉のイントネーションが不自然になったり、意味不明になったりしがちです。
その点、石岡市では選挙公報の原稿に基づいてナレーションしてもらい、実際に録音したものを音声ファイルにして掲載するので、聴きやすく、間違いもありません。私達スタッフも聞いてみましたが、言葉の流れがスムーズなので疲れないし、すんなりと耳に入ってきます。機械のナレーションとは格段の差を感じました。
荒張さんによれば、選挙情報を録音したカセットやCDを貸出して対応したことはありましたが、部数にも限りがあり、利用範囲が限定される点が課題でした。しかし、この方法なら、より多くの方に利用してもらえるとのこと。
その一方で課題もみえてきたそうです。
「今回は首長選挙だったことで立候補者の人数も少なく、録音作業時間も短くてすみましたが、議員選挙となると立候補者の人数も増えますし、限られた日程での作業も大変になります。」
「さらに著作権の問題があります。著作は原稿を書いた立候補者に帰属しますので、万が一、立候補者の一人が拒否した場合は掲載が出来なくなるか、掲載方法が限定されることになると考えられます。」
今後について聞いてみました。
「このような機能がある事を、まだご存知ない方々もいらっしゃるので、選挙公報や関係する情報をより多くの方に伝えられるように努めていきたい。」
「視覚障害者の方々にスムーズに投票していただくためには、健常者の方々に対するのと同じように情報を伝える事はとても重要です。
課題解決も含めて、ウェブアクセシビリティの維持、拡大を推進していきたいと思います。」と語ってくれました。
荒張さん、そして実際にデザインを担当された情報政策課初め、石岡市の高い意識に、編集部スタッフも感動した取材でした。
(文・横内陽子)
選管アワードとは
これは、十分で適切な選挙情報の公開を促すために、『ザ選挙』編集部が、優れた情報発信を行っている自治体の選挙管理委員会を勝手に称えようというものです。
この賞は、自治体そのものの優劣を決めるものではありません。インターネット上の選挙情報の掲載方法に関して、何かしらのヒント、アイディアの一助になればと思います。
選管が的確な情報を素早く出すということは、選挙の質そのものを向上させ、有権者にとっても非常に有意義であると言えます。この賞は、もしかしたら日本で一番地味かもしれません。しかし、あまり日の当たることの無い縁の下の力持ちの努力を、ほんの少し意識することで、よりよい選挙が実行されるようになると考えています。(『ザ選挙』編集長 高橋茂)
『ザ選挙』編集部では、毎月選管アワードを発表していきたいと考えています。
その月の末日までに投開票のあった選挙を選考対象とし、厳正かつ公正な(一応)判断のもと、選挙情報をインターネット上で発信し、かつその内容が充実している自治体へ贈られます。ユニークな取り組みには、特別賞を贈ることも考えています。
毎月上旬には発表できるようにいたしますので、お楽しみに!
2013年9月度 月間最優秀賞 岡山県総社市
2013年8月度 月間最優秀賞 宮城県大郷町
2013年6月度 月間最優秀賞 大阪府門真市
2013年5月度 月間最優秀賞 千葉県千葉市
2013年3月度 月間最優秀賞 岡山県鏡野町
2013年2月度 月間最優秀賞 茨城県城里町
2013年1月度 月間最優秀賞 福岡県北九州市
2012年10月度 月間最優秀賞 山口県周防大島町
2012年9月度 デザイン賞 神奈川県真鶴町
2012年8月度 ソーシャルDE賞 北海道中標津町、鹿児島県宇検村
2012年7月度 月間最優秀賞 宮城県名取市選管
2012年6月度 月間最優秀賞 東京都港区選管
2012年5月度 月間最優秀賞 東京都福生市選管
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