元阿久根市長不起訴でわかった「実質的ネット選挙解禁」

2011/08/05

ネット選挙

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VoiceJapan 高橋茂

相変わらず、全く進む気配の無い「インターネット選挙解禁」ですが、最近興味深いニュースがありました。

前阿久根市長を不起訴処分 ブログ更新の違法性は指摘 鹿児島地検 (MSN産経ニュース 2011.7.28)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110728/crm11072819530023-n1.htm

ブログ更新をめぐる公選法違反罪は「選挙のためにブログを開設したのではなく悪質性は低い」として起訴猶予としたが、更新自体は「法定外文書の頒布に当たる」と違法性は認定した。

とのことで、鹿児島地検はなんと「ブログの更新は『法定外文書の頒布に当たる』」と認定してしまいました。「なんと」と書いたのは、今までは「総務省の見解」であって、法廷の場で争われたわけではなかったからです。今回も法廷に行く前ではありますが。

ところが、この認定には変な点があります。
その説明の前に、以下の記事を紹介します。

ブログの更新は公職選挙法違反か!?お騒がせ市長に審判。 (企業法務ナビ 2011.7.31)
http://www.corporate-legal.jp/houmu_news330/

さすが、法務関連専門サイトだけに法律的な点から解説されています。

この点で、鹿児島地検は、ブログ更新については「現行法では法定外文書の頒布に当たり、違法と評価せざるを得ない」が、竹原前市長が県警の指摘を受けた後に更新した部分を削除したことなどを理由に起訴猶予としたと説明している。

あれ?産経ニュースと微妙に内容が異なります。

産経ニュースでは、起訴猶予の理由を「選挙のためにブログを開設したのではなく悪質性は低い」とし、企業法務ナビでは「県警の指摘を受けた後に更新した部分を削除したことなど」としています。

どちらななのか?それとも両方なのかは議事録を見てみないとわかりませんが、西日本新聞の記事では「現行法では違法だが、選挙目的で開設したものではない」とうことで悪質性の低さを起訴猶予の理由に挙げているので、この「悪質性」を問題としていると判断して良いでしょう。

新聞の場合はソースが同じ可能性もありますが。

つまり、「選挙目的のブログではないし、期間中の更新も指摘されて削除したから、まあ許してやろう」ということなのでしょう。

では、竹原氏が削除しなかったらどうだったでしょう。記事の内容は、まさに選挙に関係したものでした。その場合に「悪質性」を認定して公選法違反の有罪判決が出たでしょうか。もし記事の内容が選挙に直接は関係ないものであったらどうでしょう。

そろそろじれったくなってきたので、結論に行きましょう。

もし、竹原氏が記事を削除しなかったら、起訴はされていたかもしれません。その場合、法定で争われることになったわけですが、そこで竹原氏が有罪になったかというと、公選法142条違反、つまり「法定外の文書図画を配布した違反」で有罪にはならなかったと思います。

その理由は、「明確な公選法違反の理由が無い」からです。
今回、明らかに竹原氏には「悪質性」がありました。彼はそれを「正義」と呼ぶかもしれませんが。

ブログの開設は選挙前であっても、選挙期間中の更新は選挙を意識したものであり、政敵に向けて悪意のある内容でした。削除したと言っても告示のちょっと前で、影響が無かったとは言えません。

彼の行為を公選法違反で有罪とするには、「悪質性」を証明しなければならず、その上で公選法142条に違反しているという「見解」ではなく「判断」をしなければならないからです。

しかし、それはできない。

昨年(2010年)11月28日に行われた金沢市長選挙で、選挙期間中にツイッターが支援の呼びかけで使われたことがありました。このとき選管や警察は選挙期間中に知っていて、ツイッターを使用していた陣営に選管が忠告していたにもかかわらず起訴せず、負けた候補者も「時代の流れだ」と訴えることはしませんでした。

もし、今回、竹原氏のブログ更新が違法であれば、この金沢市長選の事例はまさに公選法違反であり、これこそ起訴されていなければなりません。鹿児島地検は「悪質性が無い」ということにして、違法判断を先延ばしにしたのです。あ、言い過ぎました。先延ばしにしたのと同じことになったのです。

つまり、選挙期間中のブログ更新は、明らかな投票依頼にあたらなければ、公選法違反とはならないのです。

嘘だと思ったら、誰か更新してみてください。

実は、選挙期間中にブログを更新した例は幾つもあります。
前回の衆院選あたりからは「選挙に直接関係なければ更新しても良い。
弁護士にも相談した」という候補者も現れています。ツイッターを更新していた候補者もいます。
もちろん、その候補者は起訴されませんでした。

総務省は「選挙期間中のホームページ更新は文書図画の頒布にあたる」という見解を出し、鹿児島地検は「違法である」という見解を出しました。しかし、それはあくまで「見解」であり、裁判ではないのです。

今回の阿久根市長選の鹿児島地検判断。ブログ更新を「違法と評価」したものの、結果として「違法」にはできませんでした。

さて、ここからが問題なのですが、では、選挙の時にどんどん更新しても何の問題もないのでしょうか。
それは問題大アリなんです。

いつまでも、今回のようなグレーな状態が続く限り、候補者は信号機を見て「あれは青か?緑か?いや黄色か?もしかしたら青か?」と自分で判断しながらネット選挙を戦わなければなりません。これでは告示日過ぎたら何もしない方が良いでしょう。そうなると、有権者側もネットからの中途半端な情報取得で投票先を選ばなければなりません。

これでは、立候補者を政策や実績で選ぶどころか、投票率の向上も望めません。

奇しくも、今日の埼玉県知事選で知事選史上最低の投票率が更新されました。選管や明るい選挙推進協会などがいくら頑張っても投票率を上げることはできないでしょう。

この先の話は、次の機会で。

最後に、竹原信一元阿久根市長のことばを載せておきましょう。

「知る事からはじめよう」。これは私が会社と家庭を捨て、死ぬ覚悟で配り始めたチラシの最初のタイトルです。このひどすぎる国家の仕組み、これを国民が知らなければ転落を止めることはできません。多くの国民が現実を知ってはじめて票バカ政治家を変えて極悪役人組織を変えることができるのです。希望の持てる社会はそのあとです。(NET IB NEWS 2011.7.15)
http://www.data-max.co.jp/2011/07/post_15569.html

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