選挙ドットコム

選挙文化を変えた若者たちに期待しよう

2011/4/28

アバター

選挙ドットコム

竹内謙
2011年4月27日

市区町村を対象にした統一地方選の後半戦が24、5日の投開票で終了した。投票率は史上最低、なんとも冴えない選挙だったが、いくつかの注目点とデータを記しておこう。

(1)「脱原発」の論議は不発

  • 「安全神話」が崩壊した東京電力福島第1原発の事故が収拾できない中での選挙戦であったにもかかわらず、原発の是非をめぐる議論は不発に終わった。原発反対派は「脱原発」を強調したが、これまで原発の恩恵を受けてきた地域は180度の方向転換には与せず、安全性の強化で取り繕う原発推進派の多数を認めて、原発反対派の伸張はみられなかった。
  • 日本原電敦賀原発や高速増殖炉「もんじゅ」が立地する福井県敦賀市の市長選は、立候補した4氏がいずれも「原発との共存」で争点にはならず、現職・河瀬一治氏(59)=自民推薦=が5選を果たした。
  • 世界最大の出力を誇る東電柏崎刈羽原発がある新潟県柏崎市議選(定数26)と刈羽村議選(定数12)は、いずれも原発推進・容認派が引き続き多数を占めた。『読売新聞』によれば、柏崎市議選では原発反対派は7人のうち5人が当選、改選前の7議席(当時の定数は30)から2議席減になった。刈羽村議選では原発反対派4人のうち3人が当選、改選前の4議席(当時の定数は14)から1議席減になった。
  • 北陸電力志賀原発がある石川県志賀町議選(定数16)では、4年前に落選した原発運転差し止め訴訟の元原告団長、堂下健一氏(56)がトップで返り咲いた。だが、ほかには原発の存続問題に触れる候補はいなかった。

(2)民主党は、都道府県、政令市を対象にした統一地方選前半戦に続いて後半戦でも惨敗

  • 民主党が自民党と事実上争った10市区長選の戦績は、3勝(三重県津市、大分市、茨城県取手市)7敗(千葉県習志野市、東京都台東区、練馬区、渋谷区、江東区、稲城市、静岡県富士宮市)に終わった。
  • 全国307市区議選(定数7925)の政党別獲得議席数は、公明党1084、自民党773、共産党748、民主党476、みんなの党138、社民党95、たちあがれ日本6、新党大地4、諸派130、無所属4470。
  • 市議選の当選率でみると、民主党は80%(当選389人/候補487人)、前回07年の92%から大きく落ち込んだ。自民党は93%(当選514人/候補550人)と前回の89%を上回り、公明党は全員当選した。

(3)「大阪維新の会」と「減税日本」は明暗分かれる

4人で争われ大阪府吹田市長選は、橋下徹知事が代表を務める地域政党「大阪維新の会」の井上哲也氏(54)が、現職の阪口善雄氏(62)=民主、社民推薦=らを破って初当選した。前半戦の府議選で過半数、大阪、堺両市議選で第1党となった勢いを持続した。

一方、河村たかし名古屋市長の率いる「減税日本」は、愛知県田原市、神奈川県平塚市、福井県敦賀市の市長選でいずれも敗れた。

(4)夕張に全国最年少市長が誕生

財政再建団体の北海道夕張市の市長選で、元東京都職員の鈴木直道氏(30)が元自民党衆院議員の飯島夕雁氏(46)らを破って初当選した。熊谷俊人・千葉市長(33)を抜いて全国最年少市長になる。

鈴木氏は2008年1月から約2年間、都からの派遣職員として夕張市に勤務、市内のボランティア活動にも参加した。地元からの要請で立候補を決意した。

(5)総務省のまとめ

総務省のまとめによると、73市長選、286市議選、63町村長選、292町村議選、13東京特別区長選、21東京特別区議選の平均投票率は、市長選52.97%(前回53.50%)、市議選50.82%(57.44%)、町村長選70.56%(74.00%)、町村議選66.57%(71.49%)、区長選44.51%(45.31%)。区議選43.23%(44.51%)。いずれも前回を下回り、区長選を除く選挙はいずれも戦後最低。

新しい選挙スタイルを切り開く

私事になるが、今度の統一地方選に、早稲田大学大学院公共経営研究科の教え子3人が立候補し、3人とも好成績で初当選した。男性A(28歳)は一般市議選(定数32)でトップ、男性B(29歳)は政令市議選(定数4)で2位、女性C(36歳)は東京特別区議選(定数44)で6位だった。

3人の運動には、いくつかの共通点があった。第1は、政策をマニフェストに明記して訴えた。これまでの議員は一般的に、政策は自治体の長や職員任せ、役所にお願いをしたり、注文を付けたりすることだけを得意業とした。3人は全国各地の自治体の政策を勉強し、自ら政策を立案する能力を鍛えてきた。「政策を書ける」がセールスポイントだった。

第2は、インターネットを使って、選挙の告示前に、自らの主張や政策を広く周知することに力を入れた。写真や動画を織り交ぜて、自らの容姿や語り口も見てもらった。そして議員になっても、役所の情報を積極的に公開し、情報を市民と共有することによって、市民とともに考えるまちづくりを追求することを約束した。

第3は、選挙カーを使わずに、自転車にのぼりを立てて、街なかを走った。これはただ単なる若さをアピールするパフォーマンスではない。名前を連呼するだけの選挙カー運動は以前から「騒音公害」と評判が悪かった。渋滞の原因にもなる。公職選挙法には、選挙カーの借上代や運転手の雇用費、ガソリン代を公費負担する制度があるが、こんな政治家のご都合主義的な制度のお世話にはならず、辻々に自転車を止めて、ハンドマイクで政策を訴えた。その方が選挙のあり方として正当ではないかと考えたのだ。

3人ばかりではない。東日本大震災の「選挙運動自粛ムード」の中で自転車とハンドマイクによる運動はかなり広がった。選挙運動自粛ムードは知名度の低い新人にとって不利になったが、そんなハンディキャップを覚悟の上で、新しい選挙運動のスタイルを切り開いた若者たちに拍手を送りたい。

有為の人材を排除する公職選挙法

そもそも公職選挙法は、改正を手掛ける国会議員が自分たちに不利になることを嫌い、「現職有利」「政党有利」の方向で改正を重ねてきた。その結果が、前途有為の人材であっても、無名、無所属ではなかなか勝てない選挙環境が出来上がり、いわゆる「ジバン、カンバン、カバン」を持つ古いタイプの政治家がますます幅を利かせることになった。今日の政治家不在の一因は、この天下の悪法たる公職選挙法にある。

例えば、インターネットはもっともカネのかからない、公正、有効、迅速な選挙運動を可能にしたツールである。にもかかわらず、いまだに選挙期間中には使うことが許されない。しかも法律には何も書かれてないのに、総務省の解釈で「文書図画の頒布」の違反に当たるという、まさに憲法違反的な扱いだ。なぜか。インターネットによる選挙運動を解禁すれば、無名、無所属の優秀な人材が出やすくなり、世襲や団体の力で当選を重ねてきた政治家には脅威になる、と恐れる国会議員が多いかだ。

全国の選挙の実態は相も変わらず古式ゆかしい。血縁地縁頼り、団体回り、名前の連呼と「お願い」一点張りの運動ばかりでなく、利益誘導や現金買収も跡を絶たない。若者が窮屈な選挙制度の中で、選挙カーも使わず、政策本位の選挙運動スタイルを切り開きつつある意義は小さくない。「やせ我慢」の武士道精神で、この国の選挙文化を変える力に育ってほしい。

この記事をシェアする

アバター

選挙ドットコム

選挙ドットコムの最新記事をお届けします

採用情報

記事ランキング

ホーム記事・コラム選挙文化を変えた若者たちに期待しよう

icon_arrow_b_whiteicon_arrow_r_whiteicon_arrow_t_whiteicon_calender_grayicon_email_blueicon_fbicon_fb_whiteicon_googleicon_google_whiteicon_homeicon_homepageicon_lineicon_loginicon_login2icon_password_blueicon_posticon_rankingicon_searchicon_searchicon_searchicon_searchicon_staricon_twitter_whiteicon_youtubeicon_postcode