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「マイナス票」の選挙制度があったらいいのになぁ~

2011/4/1

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竹内謙
2011年3月30日

統一地方選の前半戦(4月10日投票)は、東日本大震災の被害が激しかった岩手、宮城、福島3県を除いて予定通りの日程で選挙戦に入った。

3県ばかりでなく東北・関東の広い地域が東電福島第1原発の爆発事故によって撒き散らされる放射性物質の恐怖に怯えている。全国から被災地へ、救援の人手と物資が祈りを込めて向かっている。こんな中で直接の被災を免れた地域とはいっても、選挙が盛り上がるわけがない。候補者や政策が画一的、限定的で「投票したい人がいない」という声がしきりに聞こえる。かつてない低調な統一地方選になった。

24日告示された12都道県の知事選のパターンをみると、いくつかの特徴を挙げることができる(ほとんどの候補者が無所属だが、政党の態度については本部公認、推薦のほか、地方組織の推薦、支持、支援などを一括して扱う)。

(1)「対立候補は共産系ただ1人」が7県と圧倒的に多い

  • 「現職VS共産系候補」が6県(福井、鳥取、島根、徳島、佐賀、大分)
  • 「与野党5党相乗りVS共産系候補」が1県(福岡)

(2)自民・公明の連携が候補者擁立を主導

  • 12都道県のすべてに何らかの形での自公連携候補が立つ

(3)民主はまったく元気がない

  • 与野党相乗りが6県(神奈川、福井、鳥取、徳島、福岡、佐賀)
  • 不戦敗が3県(奈良、島根、大分)
  • 独自候補は2人だけ(北海道、三重)

(4)有力候補のほとんどが元官僚

  • 現職9人のうち8人が元官僚(北海道、福井、奈良、鳥取、島根、徳島、佐賀、大分)。唯一の例外は東京だけ
  • 現職の不出馬で新人同士の争いになった3県(神奈川、三重、福岡)のうち、三重の野党3党相乗り候補も、福岡の与野党5党相乗り候補も元官僚
  • 民主が北海道の現職にぶつけた新人候補も元官僚

これでは「選挙に関心を持とう」と言っても、持てるはずがない。「投票したい人がいなときはどうしたらいいか」といった質問を学生たちからよく受ける。そういう場合に私がまず勧めるのは「自分で出てみたらどうだ」。

今度の東京都知事選でも、そんな悩みに直面して、真剣に候補者探しに動いた若者たちがいた。「民主党が首都の知事選で候補者を立てられなかった責任は大きい。極右政治家と共産党、経済合理主義の経営者、タレント、発明家では、われわれは投票のしようがない」というのだ。

リベラルを任ずる彼らは、民主党本部が候補者擁立を断念、都議会民主党会派が飲食店経営者を支援すると聞いてから、慌てて動き出したが、結果的には、計画停電や放射能騒ぎの混乱もあって準備が間に合わず、断念せざるを得なかった。

投票したい人がいないとき、有権者はどんな行動にでるか。一番多いのは棄権だろう。これまで16回行われた都知事選での投票率ワースト3は、(1)鈴木俊一氏の3期目(1987年)43.19%、(2)石原慎太郎氏の2期目(2003年)44.94%、(3)鈴木俊一氏の2期目(1983年)47.96%。今度は最低記録を更新するかも知れないが、棄権は投票総数が減るだけで、相対投票数で当落が決まる選挙には無力だ。

「投票したい人がいない気持ち」を白票やいたずら書きで表す人もいるが、これもその内容は発表されることなく、一括して無効票に扱われてしまう。当落は有効票だけの比較で決まるから、棄権と同様にあまり意味はない。ということで、教科書的な結論になってしまって真に恐縮だが、やはり現行公職選挙法では「よりましな候補者」を選択して一票を投じる以外に手がない。「投票したい人がいない」とはいっても、「ワースト(最悪)」が当選するよりは「中悪」「小悪」の方がいいと考えれば、ワーストの落選に自らの1票の意味を見出すことはできる。

それにしても、こんな暗いことばかりを考えさせられる今日このごろ、つくづく思うのは「マイナス票」の選挙制度があったらいいのになぁ~。有権者の1票をプラスばかりでなくマイナスにも行使できる、各候補者の得票数はプラスとマイナスの合算とする方法だ。これなら投票したい候補者や政党がない、どうしても当選してほしくない候補者はいる、という有権者の気持ちを適格に投票に反映することができる。あるいは、いまの日本には、こんな人が多数派かも知れないから、投票率は飛躍的に伸びるだろう。きっと政治家の品質改善にも役立つ。

いいアイディアだとは思うが、すべての政党が反対だろうから、法改正ができる可能性はまったくない。それではネットで独自の予備選挙をやってみたらと考える人がいるが、公職選挙法の「人気投票の公表の禁止」(第138条の3)<注>に引っ掛かる恐れがある。ネットによる選挙運動も「文書図画の頒布」(第142条)に触れるとの屁理屈的な解釈が罷り通っている。公職選挙法という法律は、選挙をなるべくつまらなくすることばかりに気を遣う天下の悪法である。悪法を逆手にとって選挙を面白くする方法を考えなければならない。

<注>公職選挙法第138条の3

何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。

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