1. 現状の問題：クレジットカード支払いが支出総額を「2倍」にする現実

現在の政治資金規正法に基づく原則ルールでは、クレジットカードで支払った場合、1つの支出が「カード利用時点」と「引き落とし時点」の両方で記録されることになっています。その結果、実際の支出総額が1,000万円だったとしても、報告書上では支出が倍の2,000万円と記録されることになります。

たとえば、政治団体が選挙活動のためにクレジットカードを利用して交通費や備品費を支払った場合、その時点で「支出」として記録されますが、後日クレジットカードから引き落とされた際にも再び「支出」として計上されるのです。この現状は、報告書を詳細に読み込めば理解できるものの、多くの国民にとっては非常に分かりにくい構造になっています。

1. 課題の本質：現行法が抱える問題点

このような二重計上の問題は、現行法の帳簿と収支報告書の形式に起因しています。特に次のような問題点が挙げられます。

1. 取引が二重計上される印象を与える

• 実際には1回の支出であっても、記録が2回行われることで必要のない収入も記載することとなり、収支の総額が膨らんで見えるため、報告の正確性を損ないます。

1. 国民にとって分かりにくい報告形式

• 現在の収支報告書では、支出がどのように記録されているかの説明が不十分であり、一般の人が直感的に理解するのが難しい構造です。

1. 政治活動への信頼の低下

• 複雑な記録方式が誤解を生み、不透明感を与えることで、政治団体の活動全般に対する不信感が生じる可能性があります。

1. 監査の難しさ

• 現行の帳簿形式では、取引の全体像が把握しにくく、外部監査人が収支報告の正確性を検証するのが難しい状態です。

1. 解決策：複式簿記と発生主義の導入を

この問題を解消するためには、帳簿と記録方式を抜本的に見直す必要があります。具体的には次の改善策が考えられます。

1. 複式簿記の導入

• 現在の単式簿記に近い簡易的な帳簿形式を改め、複式簿記を採用します。これにより、取引を「借方」と「貸方」で記録し、取引の全体像を正確に把握できます。

1. 発生主義の採用

• 支出が発生した時点で記録する「発生主義」を導入することで、クレジットカードの利用時に1回のみ支出を計上する仕組みが実現します。これにより、現行の「二重計上」と見える現象が解消されます。

1. 監査体制の強化

• 複式簿記を採用した帳簿は外部監査に適しており、取引の妥当性や正確性が確認しやすくなるため、不正防止にも寄与します。

1. 報告書の簡潔化とデジタル化

• 国民が収支報告書を容易に理解できるよう、フォーマットを視覚的にわかりやすい形式に変更し、デジタルツールを活用して詳細な取引内容を確認できる仕組みを整備します。

1. 結論：政治資金の透明性向上を目指して

現行法の帳簿と報告方式は、法律上の要件を満たしている一方で、国民にとっての分かりやすさや透明性には課題が残っています。クレジットカード支払いの「二重計上」問題は、帳簿の形式と記録方式を見直すことで解決可能です。繰り返しになりますが、複式簿記と発生主義を取り入れることで、次のようなメリットが期待できます。

• 収支報告書が実態を正確に反映
• 国民が直感的に理解できる透明性の向上
• 外部監査の容易化による不正防止

政治資金の透明性を高め、国民の信頼を取り戻すためには、法律改正を含む抜本的な改革が求められます。政治団体の活動が健全であることを示し、国民に対してその信頼性をアピールするためにも、時代に即した仕組みの導入が急務であると考えます。