2023/12/31
この度、東京新聞社より「ネット選挙」に関する取材をして頂きました。
東京新聞社に取材をして頂き、私自身の得意分野であるデジタル政策に関する記事を載せて頂くことはとてもありがたいことですし、同期の自民党エースである中曽根康隆代議士と共に扱って頂いたことは光栄なことであります。
今回の企画立案にご尽力を頂いたご担当者の皆様方には心より感謝御礼を申し上げます。
==
「ネット投票実現の議論を加速」
「落選広告に対抗する広告解禁を」
ネット選挙10年 与野党議員に聞いた
https://www.tokyo-np.co.jp/article/298929
==
上記が私を取り扱ってくださった記事です。
こちらは紙面全体の記事構成上、上記のURL記載が私の論調部分として掲載されている状態ですが、メディアの皆様に取材を頂く際には入念に準備をして対応いたしますので、他にも主張していた内容がございました。
今回は、どのような取材を受けて上記の記事が掲載されているのか、皆様に取材の細部の内容について公開させて頂きたいと思います。
こういう質疑内容がこのような記事になっていくのだなというプロセスと結果を是非楽しんで頂けましたら嬉しく存じますので、よかったらご高覧ください😊🙏
==
『東京新聞社へお渡しした中谷の返答メモ要旨』
【東京新聞の記者様からご質問総論】
ネット選挙解禁から10年を迎え、現行制度が現状に合わなくなっているとの指摘が識者からも出ています。そこで、どのような見直しが必要なのかを紙面化しようと考えております。
主に、うかがいたい点は以下になります。
【総論に対する中谷からの概要返答】
2013年にネット選挙が解禁された時のスマートフォンの世帯利用率が62.6で%であったのに対して、2022年で90.1%。またLINEの利用率は2013年の44.0%と比べると2022年は94.0%と殆どの人がデジタルコミュニケーションが当たり前になっている環境にある。民主主義の根幹である選挙のデジタル化を進めることは民主主義をアップデートさせると考える。
Q①
実際の選挙の時、ネットをどのように活用しているか。
A①
LINE・Facebook・Instagram・Xなどの主要SNSやBLOGへの投稿やGoogle・Yahooなどの検索エンジンで偽情報の発信など問題が起こっていないかを確認するなどの対応を主に行っている。
またリアルとネットの融合で、AIアバターを活用した喋るポスターなど時代の旬に合わせたコンテンツの作成を行っている。
Q②
その際、不便や公選法の限界・問題を感じる点はあるか。
A②
⑴ネットで投票ができない
ネット選挙は解禁されているがネット投票は未だに日本で実装されていない。
手前味噌で恐縮ですが、2021年6月に日本において初めて本格的なインターネット投票法案を私が筆頭提出者となり、衆議院へ提出をさせて頂いた。
この法律案は、日本国憲法の精神にのっとり、年齢、身体的な条件、地理的な制約その他の要因に基づき投票所への移動に困難を有する者を含む全ての選挙人等の投票の機会を等しく確保すること目的に導入を推進することとした。
わかりやすく言うと、高齢者や若者の投票のハードルを下げ、投票率を高めることにより政治参加の間口を明けることができると考えている。
エストニアでは2005年からすでにネット投票が実施されており、技術的にも制度的にも実現可能。
セキュリティ面を懸念する声もあるが、ネット投票が導入されてる他国でもデジタル署名が破られたという事例は現在までない。大事なのは、デジタル署名された記録が不正に抹消されたり、捏造されたりしていないことの証明であり、ブロックチェーン技術により公平性、透明性の担保をできると考えている。
今の投票制度に不自由を感じているすべての人のニーズに応えるべくネット投票を実現させるために今後も汗をかきたい。
⑵落選運動に規制がない
今年の3月に私がChatGPTを使って質問を行った時に、AIが生成した質問を国会で国会議員が述べて、総理が答弁した事例は憲政史上はじめてということで、ご注目を頂きましたが、この時に中身の議論として行っていたのが、AIとSNSの台頭による民主主義のリスクについて。
世界最大規模の政治リスク専門コンサルティング会社であるユーラシア・グループが「2023年世界十大リスク」としてフェイクニュースの拡散による社会の混乱をリスクとして挙げています。人工知能(AI)の進化とソーシャルメディア(SNS)の普及が重なり、フェイクニュースなどが拡散されやすくなっていると指摘し、「大半の人々には真偽の見極めができなくなる」と懸念を示している。
フェイクニュースについては科学的にも研究が進んでおり、マサチューセッツ工科大学(MIT)の調査によると、フェイクニュースは、実際にあったファクトのニュースより約6倍速く拡散するとのこと。
事実とは異なるニュースは目新しく、人々の感情を扇動する内容が多いことが理由だそうです。この調査結果を基に考えると、一度拡がったフェイクニュースをファクトニュースで打ち返すことはとても難しいことであるということが社会的にも常識になっている。
人を欺き扇動するようなフェイクニュースの喧伝にはいつの時代の人類も頭を痛めてきたと捉えている。「嘘も100回言えば真実になる」という言葉は、ナチス・ドイツの宣伝大臣だったヨーゼフ・ゲッベルスが述べたものとして歴史上語られていますが、感情を利用し、市民の認識、認知空間を制する制脳権については、安全保障上も大変重要なテーマである。
世界的に大きな問題となったケンブリッジ・アナリティカの事件では、個人情報のビッグデータから、行動が変容しそうな個人をAIで分析し、特定の者が有利になるような恣意的な情報を与えることで投票行動を変化させた。
こうしたデジタルゲリマンダリングに関する問題がアメリカ大統領選挙でのロシア疑惑や湾総統選挙での中国介入疑惑と同様に、日本においても他国の介入を許す疑念が残れば、安全保障上も大きな問題になる。
しかしこうしたリスクに対して、現在の日本は極めて無防備である。
公職選挙法では選挙運動のための公職候補者の氏名などを表示した有料インターネット広告の掲載等については原則禁止となっているが、 公職選挙法上は落選運動は選挙運動ではなく政治活動に含まれ、落選運動のための有料インターネット広告を何億円、何十億円の規模で掲載し、有権者の投票行動を変容させても、公選法上直ちに規制されない。
そして、やってはいけない人の規定もないので、他国の方、例えば中国やロシア、北朝鮮の方が日本の選挙期間中に有料インターネット広告を用いて、恣意的に落選運動を行ったとしてもそれを取り締まる規制がない。
また天皇陛下や岸田首相の偽広告が現在もSNS上を跋扈しているが、広告主が誰かわからない状況が放置されており、仮に虚偽情報で落選運動を広く展開されても仕掛けられた者が泣き寝入りをせざるを得ないのが現状。
国政選挙でいえば、1億2500万国民のルールや年間100兆円の予算配分を決める国会議員を選ぶ選挙の公正性を恣意的に歪める行為は、民主主義を根本から覆す危険性があるとともに国家の安全保障を揺るがす恐れがあり、制度の改善が必要。
Q③
候補者や政党名を挙げた有料ネット広告は禁じられる一方で、政党支部長としては容認されていて、分かりづらい。有料ネット広告について、何を解禁し、何を制限すべきか(落選広告の問題)。
A③
有料インターネット広告は、とにかく制度設計がわかりにくい上に、基準が曖昧なので、投稿する側も審査する側も利用しにくいと思う。
政党による有料インターネット広告の投稿が認められているので、投稿する側は下記のガイドラインを参考に選挙運動用文書図画にならないように有料インターネット広告を掲載するコンテンツを作成するが、総務省や選挙管理委員会がチェックしてくれる仕組みになっていないので、広告主側も掲載媒体側も適法性に関する不安が残る。
政治家の多くは違反をしたくてする人は少ないと思うので、総務省・選挙管理委員会などが連携して事前にコンテンツの適法性を審査して許可を得た広告を掲載できる仕組みは一考の余地があると思う。
私的には、候補者による有料インターネット広告は認められていないが、政党等には有料インターネット広告の掲載が認められているという中途半端な制度をわかりやすく整理すべきだと考える。
その中で、私は金額の上限額を制限した上で政党及び候補者の有料インターネット広告の配信を認めればこうした問題は改善されると考えている。
金権政治的にお金を持っている人が選挙を有利に進められるような状態になることを是正しつつ、有権者に対して、政党や候補者が届けたい情報を制限の範囲内で届けられるスキームを作ることは偽情報対策やデジタル民主主義を進化させる観点からも有用である。
選挙運動用の証紙ビラには枚数制限や頒布責任者及び印刷者の記載義務がある。
私案では、上限額については、有権者の人口数程度を上限とした金額で配信の制限を行い、収支報告書で報告をする仕組みとすれば、イコールフッティングでフェアな競争になると考える。
また、偽広告などのダーティーでアンフェアな広告に対しては、有料ネット広告を配信する者には不適切な有料広告の排除に資するための義務として、当該広告が選挙運動用の広告である旨と広告主に関する情報等を表示させることを定め、当局及び広告掲載側にその審査を行ってもらう仕組みを整えれば、偽広告などの問題への対応にできると考えている。
また有料ネット広告に関する選挙広告の適法性を事後的に検証できる仕組みを整えることも考えられる。例えば、有料ネット広告の事後的な検証に資するため、諸外国、例えば、アイルランドだと7年間、アメリカ・カリフォルニア州だと4年間にわたって、国民投票に関して一定のアーカイブを設けている。これを参考に、有料ネット広告を掲載する一定規模以上のデジタルプラットフォーム事業者に義務を課し、国民投票運動や選挙運動等のための有料ネット広告、広告主に関する情報等を一定期間保存するとともに、公衆がインターネットを利用して記録を閲覧できる状態に置くことを定めればこうした問題への対策に繋がるのではないか。
インターネット選挙運動等に関する各党協議会 ガイドライン P6 & P40
https://www.soumu.go.jp/main_content/000222706.pdf
Q④
若者政策推進議連でネット選挙の検討も過去にされているが、今後改正法案の検討を進める予定や見通しは。
A④
有料インターネット広告や政治と金の大問題を改善するために、超党派でしっかりと議論を進め、改革を進める必要がある。
公職選挙法及び政治資金規正法に関してはデジタルをさらに活用してクリーン・フェア・オープンに改革できる。
公職選挙法に関しては、上記で縷々述べた通りだが、政治資金規正に関しても、スウェーデンや韓国などのキャッシュレスの先端事例やCBDC(デジタル円)などの活用によるその先のオルタナティブな規正改革案を作成できると考えているので、特に政権与党にはこうした議論に応じていただきたい。
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>中谷 一馬 (ナカタニ カズマ)>【取材の裏側】記事はこうして出来上がる