2023/8/18
この度、読売新聞社より「選挙の仕組み」に関する取材をして頂きました。
世界一の朝刊発行部数は657万を誇る読売新聞に取材をして頂き、記事に載せて頂くことはとても名誉なことでありますし、非常にありがたいことです。
ご尽力を頂いたご担当者の皆様方には心より感謝御礼を申し上げます。
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衆院選の仕組み、変える?「政権への審判下しやすい」「強者のためのシステム」評価割れる[The論点]
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20230817-OYT1T50209/3/
21年衆院選の小選挙区選で惜敗率96・63%で敗れ、復活当選した立憲民主党の中谷一馬衆院議員(39)(比例南関東ブロック)は、「与野党を支持する双方の民意をくみとって有権者の思いを国会に届けられるのは、今の制度の良い面だ」と話します。
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上記の記事が私を取り扱ってくださった部分です。
こちらは紙面全体の記事構成上、上記の私の論調部分が掲載されている状態です。
ただ私の主張がこれだけであったかと言えばもちろんそうではなく、メディアの皆様に取材を頂く際には入念に準備をして対応いたしますので、他にも聞いて頂いた質問が多数ございました。
今回は、どのような取材を受けて上記の記事が掲載されることになったのか、皆様に取材の細部の内容について公開させて頂きたいと思います。
こういう質疑内容がこのように記事になっていくのだなというプロセスと結果を是非楽しんで頂けましたら嬉しく存じますので、よかったらご高覧ください😊🙏
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【読売新聞社へお渡しした中谷の返答メモ】
この度はご取材を頂きまして、誠にありがとうございます。
下記、返答させて頂きますので、よろしくお願い申し上げます。
【新聞社から頂いた要旨】
▽予定している記事の趣旨・・・現在の小選挙区比例代表並立制の採用された趣旨、経緯などについてのほか、ほかの選択肢としてあり得る選挙制度(小選挙区のみ、比例代表のみなど)を紹介します。
特定の選挙制度を推進するものではなく、完全な選挙制度はない以上、試行錯誤を重ねていく必要があるという趣旨の提起になればと考えております。
▽中谷先生への取材の趣旨・・・比例代表は死票を減らし、国会に多様な意見を反映させるという意義があります。比例代表で選出される意義、並立制の意義について伺いたいと存じます。
▽質問内容
【質問①】
小選挙区比例代表並立制の評価、特に並立制の評価について、どのように考えるか。
【質問②】
・小選挙区は候補者が2でも半数まで、乱立すれば過半数が死票となり得ることについて、どのように考えるか。
【質問①&②の返答】
結論として、小選挙区比例代表並立制はベストではないけれどベターな選択肢だと考えています。
1792年にフランスで初めて普通選挙が行われてから200年以上経った現在、学生時代からの友人である成田悠輔(イェール大学助教授)さんが「22世紀の民主主義」という書籍を出版し、知的専制主義のような少数のエリートによる意思決定を行う制度や選挙民主主義という大衆の民意による意思決定を行う制度に代わるオルタナティブな仕組みとしてエビデンスとなる蓄積されたデータを基にアルゴリズムで意思決定を行う民主主義のアップデート案を世の中に示していましたが、その時代が来るのはもう少し先になると思いますので、私は今の仕組みを改良することもしくは今でもできる仕組みに改革することをまずは提案したいと思います。
民主主義における選挙は、①民意(投票データ)を②多数決など定めたルールに基いて勝敗を決定し、③勝者の政党や候補者に一定の期間、為政者としての権限を持たせ、政治を行わせる仕組みとしてデザインされてきました。
こうした仕組みの中で、民意を選挙という手法で政治の意思決定に反映させることに主軸を置くとしたならば、行わなければならないことは大きく二つあります。
一つ目は、意思表示された民意がより反映されるよう、死票を減らすこと。
二つ目は、より多くの民意を政治に反映させるために投票率を上げること。
この二つが重要となります。
例えば、投票率が50%の選挙で50.1%得票で当選した者がいた時、その当選者は有権者全体の約25%の民意しか反映をされていない候補者となりますが全体の意思決定を行うことになります。
この状況を改善するためには制度の改良・改革を行うためのソリューションを提供する必要がなります。
まず日本における小選挙区比例代表並立制の改良案としては、
衆議院は、
「小選挙区比例代表完全並立制(比例代表は11ブロックに分けず、全国一律で惜敗率で議席決定)」
とし、
参議院は、
「都道府県を中心とした選挙区制度」及び「拘束名簿式比例代表制」と「非拘束名簿式比例代表制」の双方を採用した比例代表制
とすれば、多様な民意を反映させることができます。
◆国政選挙全体でのイメージ
①小選挙区:地域の代弁者を選ぶ。
②全国一律惜敗率比例代表制:地域の死票を減らす。
③都道府県を中心とした選挙区:広域な地域の代弁者を選ぶ。
④拘束名簿式比例代表制:政党で必要不可欠と考える代弁者を選ぶ。
(女性や若者を優遇するなど一定の拘束ルールを定めるアイデアもあり)
⑤非拘束名簿式比例代表制:全国単位で必要と考える代弁者を選ぶ
次に日本における小選挙区比例代表並立制の改革案としては、
世界で最も完璧に近い投票制度と言われるオーストラリアの「優先順位付投票制度(即時決選投票制度)」を提案します。
この制度は、有権者が候補者を優先順位にしたがってランク付けすることにより、初回投票と決選投票を一回の投票でまとめて行う選挙方法であり、死票を減らして有権者の意見をきめ細かく反映させる制度です。
この制度であれば、小選挙区制度のデメリットである1位以外の候補者に投票した民意がすべて切り捨てられてしまうといった死票が大量発生する弊害を補うための比例代表制の利点も補完された制度となり、好ましいと考えております。
また選挙戦も相対評価の世界感で相手を批判して自分を浮上させようという発想ではなく、1位になるための支持者獲得のみならず、2位以下でも選ばれたいので、より多様な有権者からの支持を獲得するために意見を聞くモチベーションが高まります。結果として、ネガティブキャンペーンが減り、より多くの民意を政策に反映させられるバランスをもたらす可能性があります。
特に首長選挙など強い権力者を生み出す選挙において、多様な民意をしっかりと反映させる制度として望ましいと考えています。
最後に投票率を向上させる観点も重要です。
政治学において、個人の選挙に行くことの合理性は【R=P×B+D-C】というライカー&オードシュックのモデルで表されます。
これは、自分のP(与えられる影響)とB(特定の者が当選した時に得る利益と損失)を掛け合わせた数値に、D(民主主義を維持するための市民としての義務感)を足し、個人が被るC(コスト)を引いた結果、選挙で得られるR(効用)がプラスであれば、個人は投票へ行き、マイナスであれば、投票には行かないということを表されています。
私は国民の皆様の参政権をもっと行使しやすくなるように有権者のD(民主主義への貢献)の意識啓発とC(コスト)を下げる選挙制度改革を進めたいと考えています。
このモデルから投票率の改善を考えて、私は三つの具体策を進めています。
一つ目は、「投票する意味と経験を伝えるシティズンシップ教育の推進」
二つ目は、「被選挙権年齢の引き下げや供託金の代わりに署名を集めることで許可する制度など若者が選挙に立候補をするハードルを引き下げ、身近な若者の投票率向上を目指すこと」
そして三つ目は、投票に行くためのコストを下げることを目的に国民が投票に行きやすくなる環境の整備するための「インターネット投票の推進」。「インターネット投票を推進する法案」は私が筆頭提出者として衆議院に提出いたしました。
こうした具体策を前に進め、投票率の向上を図っていきたいと思います。
【質問③】
・小選挙区で次点の候補者は1票差でも落選になる。そのような候補者が比例復活する意義について、どのように考えるか。
【返答③】
私は前回の総選挙において、得票数12万4524票を獲得し、得票率49.14%を得ましたが、惜敗率96.63%で負けました。
しかしながら、当選したライバルの得票数が12万8870票(得票率50.86%)であったことを考えた時に、裏を返せば、相手候補は12万4524票(49.14%)の有権者からは信任されなかったということになります。
もし比例代表制度がなかったとしたら12万4524票が死に票となりましたが、一騎討ちの構図で51:49の僅差での勝負をした双方の民意が汲み取られる選挙制度であったことは、無効票を除く投票した全ての人の民意が反映された結果となりましたので、神奈川7区(横浜市港北区・都筑区)の市民にとってはよかったことだと思います。
【質問④】
・小選挙区で既存の政治家が強固な地盤を持っている場合、比例復活という選択肢がある方が、挑戦する新人にとっても立候補しやすいという見方もできると思うが、この点については、どのように考えるか。
【返答④】
「絶対的な権力は絶対に腐敗する。」
私たち人類が学んだ歴史の格言ですが、政治は常に新陳代謝を促し、自浄させる作用を仕組み上、整えることが重要です。
選挙の強さは、いわゆる「地盤(組織力)」・「看板(知名度)」・「鞄(資金力)」に大きく影響を受けますが、長く政治家をやっている既存の政治家は強い三バンを持っているケースが多く散見されます。
そして、ゲームルールも小選挙区制のみの勝負になると、自民党・公明党連合で多数の選挙区において得票数の50%以上を獲得するケースが多くなりますから、野党の新人が選挙で勝つことが難しくなり、挑戦しにくい環境が生まれます。
ただそれは結果として、自民党の衆議院議員の議席も既得権益化してしまいますので、自民党内でも若手の出番がなかなか回って来なくなります。
2009年に民主党が政権交代をした時、結果として自民党の若返りが起こりました。
それは多くの自民党の重鎮議員が落選をしたことにより、既得権益だった多くの議席が空き、公募などを通じて広く候補者が募られ、新陳代謝が高まったからです。そして、2012年に自民党で初当選した若手が現在4期生となり、国会でも中心的な役割を担い、活躍しています。この若返りがあったからこそ旧態依然とした組織と見られていた自民党に新しい感性が取り入れられ、私たち野党にとって非常に手強い相手になっています。
こうした観点で考えた時に、比例復活という制度がなければ、野党から衆議院議員を目指すことは非常に難しい状況となります。しかしながら野党を強くすることは、政権与党をしっかりさせることに繋がり、結果として日本の政治にバランスを生み、政治をより良くすると考えておりますので、小選挙区のゲームルールには比例代表の制度を併用させることが望ましく、改革をするとしたら優先順位付投票などの制度に変更することが好ましいと考えます。
【質問⑤】
・中谷先生も21年の総選挙で、小選挙区では僅差で敗れ、比例での選出だったが、選出されたことに果たすことができた役割、仕事はどのようなものか。
【返答⑤】
国会議員の活動指標としては、「質問主意書数」・「国会質問の回数・時間数」・「議員立法数」などの定量的な尺度で仕事を評価されることが多くあります。
ただこの指標の定量数は、国会の仕組み上、野党の方が多くなる傾向があります。
そして日本の選挙制度の仕組み上、小選挙区で勝ち上がっている者が多い政党が与党第一党になる可能性が高く、与党第一党の次に小選挙区で勝ち上がった者が多い与党に属さない政党が野党第一党になる可能性が高くなります。ということは小選挙区で僅差にて敗れた者が野党で比例復活している事例が多くなります。
即ち、僅差で負けた者が野党に属しているケースが多くあり、所謂国会で仕事をしているとされることをしています。
私自身もライバル候補より「質問主意書数」・「国会質問の回数・時間数」・「議員立法数」などの定量的な尺度では全て優っていると思います。
中身についても「インターネット投票の導入の推進に関する法律案」や「低所得である子育て世帯に対する緊急の支援に関する法律案」などを筆頭提出者として衆議院に提出をさせていただきましたが、時代の要請に応じた対策を講じさせて頂いていると考えております。
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