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中谷 一馬 ブログ

「国会では”モリカケ”(森友/加計問題)ばかりやっている?」を客観的にデータ分析してみた。

2018/9/10

◆約90%は”モリカケ”問題以外の質疑

「国会では、モリカケ(森友/加計問題)ばかりをやっている。」

「モリカケのせいで他の大切な議論ができていない。」

という世間の意見を耳にすることがあります。

 

 しかしながら、私が国会にいて森友/加計問題ばかりが国会で審議されているという印象はなく、それのせいで他の大切な議論ができていないと感じることもありませんでした。

 では果たして、何故そのような声が上がっているのか。そして、本当に国会は、森友/加計問題ばかりをやっているのか。客観的なデータをもとに調査・分析してみました。

表1 (衆議院)委員会における森友・加計学園関係質疑件数調

 

 「衆議院立法ネットワークシステム」内の「立法調査情報」に掲載されている「委員会審査概要」の「主な質疑内容」の件数を集計した「森友/加計学園関係質疑件数調」によると、

 

●第196回国会における衆議院の総質疑数は17,480件でした。

●そのうち、森友加計学園に関する質疑は1,792件であり、わずか10.25%に過ぎません。

 

 データとして、森友/加計学園に関する質疑は全委員会質疑の10分の1(10.25%)程度しか行っていないのが、客観的な事実です。

 

 ちなみに、私自身が国会で行った質疑においても、森友/加計学園に関してはわずか6%です。

 94%は別の質疑を行っており、本会議での重要広範議案に関する質疑や、経済産業委員会において、第4次産業革命時代において日本国内でどのように経済成長を高めていくのかどうか、これからの日本のエネルギー計画に関してなどの質疑を行っています。

 詳細は、以下のようなものです。

https://ameblo.jp/kazuma-nakatani/entry-12403719919.html

表2 中谷一馬の国会質問における分野別割合

◆野党は反対ばかりしていて、本当に法案を提出していないのか

  次に、「法案、対案も出さずに反対している。」という意見に対して、客観的データを用いてお話しします。

 第195回国会において提出された議員立法数から分析したいと思います。

 立憲民主党が国会に提出した法案は5本ありました。そのうち立憲民主党が党の政策としてまとめたものが4本あり、既存の法律に対する対案として1本提出しました。

 具体的に立憲民主党が提出した法案を見て行くと、森友加計問題に対する策として提出した「公文書管理法案」と「情報公開法案」。日本におけるカジノ解禁によるギャンブル依存症対策として「ギャンブル依存症対策法案」と「カジノ廃止法案」を提出しました。そして依然として国民からの反発が多い共謀罪に対する対案として「共謀罪廃止法案」を提出しました。

 第196回国会においても立憲民主党は精力的に議員立法案を提出し、党の政策として提出したものが29本、既存の法律に対する対案として3本提出しました。また他党と共同で提出した法案が15本ありました。

 合計の議員立法案の提出数は、党の政策として提出したものが33本、既存の法律に対する対案として4本提出しました。また他党と共同で提出した法案が15本でありました。

 

表3 第195・196回 国会における立憲民主党を中心とした野党が提出した議員立法数

 

【※提出法案の詳細は、ページ最後に記載しております。】

 

◆野党議員のみで提出した法律案中、与党が審議に応じた割合は、わずか16.9%

 

表4 国会図書館 調査資料

 数値から見ても解るように、立憲民主党は「反対ばかりしている」「対案を出していない」のではありません。

野党が法案を提出しても、政府与党が審議自体を拒否し、殆どの法案が審議すらしていただけないというのが、現実です。

 なぜ審議がされないのかと言えば、与党にとって対案が争点になることが困るからです。

 例えば、原発ゼロ基本法案に関してですが、2018年3月4日に行った東京新聞の世論調査によれば、原発を何かしらのかたちゼロにしたいと考えている方は75%おりまして、国民の多くが原発はゼロの方が良いと考えております。その状況で野党が提案する原発ゼロ基本法案が審議されると、メディアを通じて広く国民に情報発信がなされ、世論が喚起されてしまうと原発を推進したい政府与党にとって、都合が悪いのです。

 そういった事情から経済産業委員会で特別議論する法案がなくなった現状にあっても経済産業委員会は開かれず、原発ゼロ基本法を審議していただくことができなかったという事件が今国会では起こりました。審議がなされなかった83.1%に関してもそういった残念な理由が多くあります。

 国民の皆様に、立法府たる国会議員の活動をしっかりとお伝えしきれていないことは深く反省しなくてはなりませんが、我々は主張する政策にそって法律案を提出し続けておりますので、今後も自分たちが政権を担ったらどんな国を創るのかというビジョンを踏まえ活動していきます。

 

なぜ、「モリカケばっかり」・「野党は反対ばっかり」など事実に基づかないことを言う人がいるのか

 以前、「野党は反対ばかりしている?」を客観的にデータ検証してみた。】という記事(https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180817-00010001-senkyocom-pol)を寄稿させて頂きました。

 

 その際に、ネット上で頂いた否定的なご意見として多くあったのは、

「モリカケ問題ばっかりやっていて、大事なことが議論されていない。」

「数字や比率の問題じゃない。」

というものでした。

 しかし前述の通り、立憲民主党は政府提出法案に約8割賛成し、議員立法は52本提出している上に、国会においても森友・加計問題以外の議論を約9割やっているのは、客観的な事実です。

 ではなぜ誤認した事実を発信する人がいるのでしょうか。

 以前BLOGで「フェイクニュースが巨大ビジネスになり、無意識な市民を侵す現代社会の怖さ」という記事(https://ameblo.jp/kazuma-nakatani/entry-12400774767.html)の中でも寄稿をさせて頂きましたが、下記は、津田大介氏の「現代メディアの諸問題と政治コミュニケーションの今後」というテーマでの講演で伺った、IMTルッカ高等研究所のウォルター・クアトロチョッキ氏の調査(2017)です。

 

①普段から怪しい「陰謀論サイト」を見ている人間に、ファクトベースでそれを否定するような記事を見せると、かえってその陰謀論を信じる人が3割にも及ぶ

②「ポスト真実」は事実の問題ではなく、「信仰」の問題になっている

③(上記のような人に)ファクトを突きつける説得は不可。相手と社会的関係を築き、相手の文脈に入っていくことで聞く耳を持ってもらう

 

 また、「なぜネット上にはデマや陰謀論がはびこり、科学の知見は消えていくのか:研究結果」という記事(https://wired.jp/2016/10/16/conspiracy-theory/)によれば、クアトロチョッキ氏は、SNS上で特定の情報が伝播するメカニズムについて、下記のような趣旨の話を述べております。

 

①SNS空間では似た者同士のコミュニティが形成される

②コミュニティでは「自分の価値観を否定するもの」や「目にしたくないもの」は自主的に排斥され、「人々は自分の信念と共存できる“証拠”だけ」がシェアされる

③ある情報の真偽に対するリサーチは「すでに自分のなかで決まっている“答え”を確認する行為」でしかなくなる。この結果「科学の知見は消えていく」

 

 クアトロチョッキ氏の提唱する理論に基づいてSNS上で「モリカケばかり」と言われる理由を考えていくと、

 

①まずモリカケ問題に大いに関心を持っている方々のコミュニティが形成される

②そして彼らが「自分の信念と共存できる“証拠”だけ」をSNS等でシェアする

③「自分のなかで決まっている“答え”を確認する行為」が果たされ、客観的な事実を無視した「モリカケばかり」という風評が立つに至る

 また、当事者の立場の人間も、ただ単に「ファクトベース」の情報を提示して終わりではなく、継続的にコミュニケーションをとり、お互いの信頼関係を構築していくことが重要だと思いますが、この部分が我々野党にも足りていない部分なのかもしれません。

 

◆なぜ野党が森友加計問題をやるのか

「いつまでモリカケやってんだ。それよりも大事なことがあるだろう。」

という意見を耳にすることがあります。

もちろん我々は重要な法案審議をしっかりと行ったうえで、国民が納得していない森友加計問題を追及しております。

 しかしながら、政府や与党の対応に誠意がないため、真相究明には程遠く、余計に質疑回数が増加しているのが現状なのです。

 データを分析することにより、国会は決して森友/加計問題ばかりをやっているわけではなく、森友/加計問題についての質疑の割合が高い委員会には、理由があるということがお分かりかと思います。

 今の時代は、少ない情報や周囲の意見、メディアをもとに「国会は森友/加計問題ばかりやっている」と決めつけるのではなく、ある事象を論じるときは、様々な角度からの情報取集を行い、客観的な判断を行う必要があります。

 また、それでも国会の貴重な場を頂いて、モリカケ問題を追及する理由はただ一つ、政府与党が国民の皆様が疑問に思っている諸問題への説明責任を果たそうとされていないからです。

 

各種世論調査でも、一連の疑惑への政府対応については、まったく国民が納得していないことは明らかです。

 

 例を挙げれば、

 日本経済新聞が2018年4月30日に行った「森友学園を巡る決裁文書改ざん問題で安倍首相に責任は…」という設問に対して、「ある」と答えた方が72%。

 

 朝日新聞が2018年5月21日に行った「安倍政権が加計学園や森友学園を巡る疑惑を解明するために、適切に対応していると思いますか?」という設問に対して、「適切に対応していない」と答えた方が75%。(している:13%)

 

 読売新聞が2018年5月21日に行った「加計学園を巡り、首相秘書官だった柳瀬氏が、加計学園の関係者と首相官邸で3回面会したことを認めましたが、安倍首相は、報告を受けておらず、自ら指示したことはないと説明しています。首相の説明に・・・」という設問に対して、「納得できない」と答えた方が77%。(納得できる:15%)

 

 毎日新聞が2018年5月28日に行った『「加計学園」の問題で、愛媛県は、安倍首相が2015年2月に加計理事長と面会し、獣医学部新設の構想について「いいね」と応じたなどと記された文書を国会に提出しました。安倍首相はこれまで、学園の構想を知ったのは17年1月としてきました。安倍首相の説明を信用できますか?』という設問に対して、「信用できない」と答えた方は70%。(信用できる:14%)  

 

という状況でありまして、これらを客観的に見たときに導き出される答えとしては、当然ですが多くの国民が安倍首相、あるいは政権の説明に納得をされていないということであります。

 

 国民の皆様が納得しない最大の理由は、

「交渉記録を『廃棄した』という、財務省からの嘘の答弁」「財務省職員の手による公文書の改竄」「加計孝太郎理事長や柳瀬唯夫元総理秘書官の証人喚問や中村時広愛媛県知事の参考人招致の拒否」などに代表される、政府与党の不誠実な対応です。

 

 国会中の質疑に応じるにあたっては、「数の力」で質疑を避けたい首相へのそんたくがにじむ与党の対応は残念ながら看過することはできません。都合の悪いことには目をつぶり、多数を背景に強硬な姿勢で自分たちの我を通すという御都合主義的かつ強権的な姿勢は、責任ある与党の姿とはとても思えませんし、国権の最高機関たる国会の本来あるべき姿とは程遠いと考えます。

 

 特にこの森友学園問題は、国会が行政に欺かれたという性質の事案であると考えれば、国民からの信頼回復に向けて、しっかりとした調査や説明を行うべきです。

 

 このままでは、国民の政治不信が高まるばかりで、国会が国民目線からドンドンと乖離をしていってしまいます。

 この状況を断じて放置するわけにはいきませんので、我々は国民の皆様から付託された国会議員として、良いものは良い、悪いものは悪いという是々非々の姿勢で、追及するべきことは今後もしっかりと追及していきます。

 

◆客観的な事実を確かめるファクトチェックが大切

 これらの数値や実態を客観的にみて、「国会ではモリカケばっかり」、「野党は反対ばっかり」していると言う人はまずいないのではないでしょうか。もしそうした情報発信を行っている人がいらっしゃったら、それは客観的な事実に基づいた意見ではないことだけは間違いありません。

 メディアが急速に多様化してゆく中で、正しい判断をする前提として、まず大事なことは正しい情報をもとに考察することだと思います。
 今の時代は、報道や情報を鵜呑みにせず、その真偽を慎重に確かめながらファクトチェック(事実がどうか確認)を行い、真実を客観的に判断するメディアリテラシーの向上が求められております。
 この記事を読んでいただいた皆様におかれましては、有益な情報を取り入れるために、先入観や固定概念を捨て、様々な事象をファクトベースで俯瞰的にご判断していただけましたら幸いです。

 そして私以外の議員に関しましても、衆議院・参議院での公式な議論は全て下記の公式URLからご覧になれます。

 ニュースや新聞、雑誌、メディアへの寄稿記事など何かの意図に基づいて編集された情報ではなく、ありのままの事実がどうであるのかをまず皆様の目でご確認頂きたく存じます。

 その中で、この"モリカケ"と言われるものが、どの程度議論されているのか。そしてその結果として他の議論は御座形になっているのか、それぞれのご判断を頂けましたら幸いです。

 

●衆議院インターネット審議中継

http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php

●衆議院 質問主意書

http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/menu_m.htm

●参議院インターネット審議中継

http://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/sp/index.php

●参議院 質問主意書

http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/196/syuisyo.htm

 

補足資料

※第195・196回 国会における立憲民主党を中心とした野党が提出した議員立法詳細。

【立憲民主党が提出した法案について委員会別にまとめ】

 ・経済産業委員会 ・・・1件

 ・厚生労働委員会 ・・・5件

 ・農林水産委員会 ・・・4件

 ・決算行政委員会 ・・・1件

 ・内閣委員会   ・・・1件

 ・法務委員会   ・・・2件

 

【上記の他に他党と合同で提出したものをまとめ】

 ・震災復興委員会 ・・・4件

 ・厚生労働委員会 ・・・1件

 ・農林水産委員会 ・・・1件

 ・内閣委員会   ・・・5件

 ・環境委員会   ・・・1件

 ・倫理選挙委員会 ・・・2件

 ・文部科学委員会 ・・・2件

 ・国土交通委員会 ・・・1件

 ・議会運営委員会 ・・・1件

 

 

 

 

 

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著者

中谷 一馬

中谷 一馬

選挙 第49回衆議院議員選挙 (2021/10/31)
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神奈川7区 124,524 票 比例 南関東ブロック 立憲民主党 [当選]

肩書 衆議院議員(神奈川7区/横浜市港北区)
党派・会派 立憲民主党
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