2022/2/8
■先行するデジタル人民元が広がる危険性
現在、デジタル人民元の試験運用が中国の10都市及び冬季オリンピック会場で行われています。中国人民銀行総裁の2021年末発表によると、21年10月8日時点で累計1億2300万個の個人用の電子さいふが作られ、取引金額は1兆80億円に及ぶらしいです。(2022年1月22日:日経ビジネス参照)
今後デジタル人民元が、もし世界中で貿易などのお金のやりとりの為にいち早く利用されていくと、ドル・ユーロ・円よりも流通量が増えていく可能性があります。
中国では、何のためにどう使われたか、お金のやり取り履歴が全て管理されることになります。また、個人信用チェックも行われていることから、人民の監視を強め、金融管理を強めていくツールの一部に利用されていくのでしょう。
■デジタル円とは何か
デジタル円発行は、私の松田プランの中でも中核にある構想です。これはブロックチェーンを想定していて、ひと時話題にもなったビットコインなどの仮想通貨と似ています。(※ブロックチェーンとは、「取引履歴を暗号技術によって過去から1本の鎖のようにつなげ、正確な取引履歴を維持しようとする技術」)
凄く簡単にいいますと、スマホの中に電子データのお金があると考えて下さい。誰でも発行できるような仮想通貨と違い、デジタル円の発行主体は1ヶ所で、公的に管理します。その発行主体を、日銀ではなく政府にすれば、政府は個人情報のビッグデータを持っているので、色々なサービスを提供できますし、対外的な信用も得られます。
デジタル円も、政府が発行する法定通貨なので、1万円札とか、あるいは500円玉とか、皆さんが使う日常の現金(市中マネー)にもう1種類の通貨が加わるだけです。他通貨と同じ性質の決済手段なので、他の法定通貨と同じレートで交換ができるものです。
■デジタル円で変わる世の中の仕組みと金融政策の実現
例えばあなたが政府発行デジタル円を100万円欲しいというとき、具体的にどうなるか。まず、皆さんのスマホに、マイナンバーアプリが入っていて、銀行は、そのマイナンバーアプリと接続するような形でウォレット(電子さいふ)を装着します。
そして銀行は100万円のデジタル円を日銀から仕入れてお客様(皆さん)に売ることになります。その日銀はどこからこの政府発行のデジタル円を調達するかというと、発行元の政府から調達するわけです。
日銀は、現在大量の国債を持っています。その一部を満期が来たら永久国債に変えていきます。永久国債と政府が発行するデジタル円を、日銀と政府の間で交換します。
そうしますと、日銀が持っている永久国債は政府発行のデジタル円に変わり、帳簿上、資産の部がデジタル通貨に一部変わって、100万円あったデジタル通貨が銀行に販売され資産が100万円縮小します。
つまり、政府発行通貨のデジタル円を売れば売るほど縮小していくという、国債買い取りの為に巨額に膨らんだバランスシート(対借対照表の帳簿)が徐々に縮小していく道筋が描かれて行くことになります。
日銀が、もし今のマイナス金利を終了する金融政策の出口として、積上がった国債を一斉に売却すると、金利が上がって大変なことになる為、簡単には売却できません。しかし、デジタル円というお金であれば金利は関係ありませんから、金融政策の支障も生じないのです。
そして、あなたの手に渡ったデジタル円は、色々な形で使用できるのですが、売買するときにスマホに入るマイナンバーの本人確認機能と結びつけば、政府は「公共サービスや福祉が受けられます」と簡単に通知できます。
今回のコロナ給付金のようなサービスも非常に簡単に手続きができるようになります。民間のサービスとのやりとりも、手続きと支払いが一体ででき、〇〇ペイなどを使わなくてもすぐに支払いができ、どこでも使え、便利な世の中になって行きます。
■デジタルマネーの確立が早いほど、世界にも対抗できる!
日本は、こうした準備を進めることで、いくらデジタル人民元が出て、それが世界あちこちで使われ出したとしても、我々自身はそれを使わなくても済みます。まだない、デジタルユーロやデジタルドルに対しても同じ事で、通貨上の管理下に置かれることがなくなります。デジタル円なら政府が情報を管理し、その用途も様々スピーディに実現できるのです。
我々が考えるやり方なら、デジタル円をサービスの利便性向上のために使い、監視のためには使うことはしません。お隣のような全体主義統制国家とは全く逆の論理ですから。
新しい通貨の時代を、日本は中国デジタル人民元に先を越されないように、いち早くブロックチェーンの共通基盤を整備し、このデジタル円の実現に向けて、動いていかなければいけないと思っています。
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