2020/11/25
慌ただしさが恒例化
与党の税制調査会で来年度の税制改正の議論が始まった報道がありました。改めて説明するまでもなく、今後大綱の取りまとめに向けて議論と作業が重ねられていきます。また、政府でも各省庁の要望等踏まえて作業が進められ。与党の大綱も反映し、大綱がまとめられ、閣議決定されます。
そして、実務としては並行して進められていますが、制度上は大綱の内容を受けて、改正の法律案がつくられ、年明けの通常国会で審議されます。審議を経て、可決・成立すると、3月末に公布され、翌4月1日に施行されるのが一般的な流れです。また、これと同時に、改正にかかわる政令や省令が公布されることになります。来年度は新型コロナウイルス感染症対策としての税制面での改正が大きな課題となりますが、改正作業は今年に限ったことでなく、当然恒例となっています。
毎年繰り返される煩雑で長い道のり 官僚・職員の職務に負担
毎年恒例の改正作業は。先のブログでも書いたように、税が歳入の確保手段という本来の機能とあわせて、税負担の増減により政策の推進や国民の行動の抑制などの制御機能を持たされているからです。これ自体は重要なことです。
ところで、各省庁の要望作業は夏から始まります。事業系の省庁であれば、1省庁だけで40件前後の項目が出されます。これらが、上に述べた通り改正の法律案として形を成し、国会での本会議と委員会審議を経て、最終的に政令や省令が公布をまって、ようやく社会で機能する準備が整います。
まだ先がある 国民への制度説明 自治体では条例づくりの時間なく
ここまでだけでも、煩雑で気の遠くなるような道のりですが、まだ残っている作業があります。ひとつは、国民・納税者向けの広報や案内のための資料の用意、また新しい制度に基づいて職員が仕事ができるための資料作成と必要な場合は研修などです。国民・納税者にしても、広報以前の問題として、年度末に決まって翌月からというのは慌ただしすぎます。
もうひとつ深刻なことは、自治体現場の状況です。法律改正が自治体の条例改正を伴う場合も結構あります。法律案の可決・成立は一般的に3月の下旬になります。時によっては、31日の時間外ということもあります。法案としての情報はあらかじ把握はできますが、それでも自治体職員にとっては、自分たちの作業時間がみられていないため、翌4月1日の施行めざして、無理な作業を強いられることになります。
自治体議会でも条例案の審議ができるよう 官僚・職員の負担軽減と事務の効率化の観点からも
最後にこの流れのなかの一段深刻な問題は、条例案ができた段階、いや法律案が可決・成立する段階で、自治体の議会は最終段階か、場合によっては、閉会となっていることもよくあります。条例案でありながら、議会に提案する時間がないということになります。仕方がないので、首長が専決処分し、年度が始まってから直後の議会に報告して、承認を受ける手続きにならざるを得ません。日本国憲法第94条で「地方公共団体は、その財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能を有し、法律の範囲内で条例を制定することができる。」と定められているから、審議してもしなくても同じと言ってしまっては、身も蓋もありません。
自治体議会においても本来的に審議ができるように、国の工程が改善されることが望ましいと考えます。また、税制の社会経済と国民行動に対する制御機能は重要ですが、事務の煩雑さと膨大さの見直しは、官僚・職員の負担軽減と事務の効率化の観点からも併せて重要です。政策の敏感さも大事ですが、制度自体が全体的にもっと余裕を持ったものへの転換が望まれます。
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ヤマナカ ヨシアキ/70歳/男
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