2025/10/31
皆さん、こんにちは。枚方市議会議員のかじや知宏です。
10月28日、枚方市議会の総務常任委員会で、神奈川県横須賀市を訪問し、「生成AIの行政活用」について視察を行いました。
全国で初めて全職員にChatGPTを導入した自治体として知られる横須賀市。
その背景には、単なる業務効率化を超えた「職員の意識改革」と「市民サービスの向上」をめざす明確な戦略がありました。

今回の横須賀市での視察は、最初に**「実際に生成AIを使ってみよう」**というデモンストレーションから始まりました。
担当職員がその場でAIに指示を出し、文章や資料、音声、映像、音楽を次々と作り出す様子を見せてくれました。
最初はChatGPTで「議会の質問文を作って」と入力。
すると数秒で原稿が完成し、続いてGammaというツールで「この内容を10ページのスライドにまとめて」と指示すると、あっという間にプレゼン資料が出来上がりました。
さらに、NotebookLMではAIがその質問内容を音声で説明。
Sora2では「横須賀市が独立したニュース動画を作って」と入力すると、アナウンサー風の映像が生成され、会場が笑いに包まれました。
最後には、ChatGPTとSunoを使って、枚方市の特色を詰め込んだ「枚方市議会の歌」を即興で作詞・作曲。音楽までAIが生み出す姿に、驚きの声が上がりました。
この体験を通して、「AIは難しいものではなく、誰でも使える便利な道具」だということを実感しました。
横須賀市が生成AIを導入した背景には、人口減少と職員数の減少という共通課題がありました。
「限られた人員で市民サービスをどう維持・向上させるか」。
この問いに対し、同市はChatGPTを“行政の共通ツール”として導入する決断を下しました。
市長からChatGPTの活用について指示があったのが2023年3月、運用開始はわずか1か月後の4月20日。
そのスピードを支えたのが、次の4つの理由です。
■ 市長を含めた、経営層の意気込み&デジガバ室職員のやる気。
(「だって、世界同時スタートの技術って、面白そうじゃない?」)という前向きな空気。
■ 技術に明るい人材がいた。
ChatGPTを既存のビジネスチャットとAPI連携できる職員がおり、技術面での壁を突破。
■ 「ICT利活用費」という柔軟な予算枠。
DX推進のために、試行的導入や新技術検証ができる一定の自由度ある経費が認められていた。
■ 法人カードを作った。
SaaS型(クラウド型)サービスにすぐ契約・支払いができる体制を整え、決裁スピードを向上。
だって、大規模言語モデルは「文章を扱うことができるAI」だから!
行政の多くの仕事は“文書”を中心に動いています。
横須賀市で作成される公文書は、年間およそ9万件+α
文書作成には多大な時間と労力がかかる
文書は「情報の記録」「伝達」の手段であり、分かりやすさも求められる
こうした状況の中で、
「自治体業務において、ChatGPTを活用できる可能性は極めて高い」
と判断したのです。
横須賀市では、AIを一部の専門職だけのツールにせず、全職員が触れられる環境を整えました。
その目的は次の4点です。
✓ 職員が新たなテクノロジーに触れることで意識を変える。
まずは触ってみることが、AI理解の第一歩。
✓ 文書作成業務の効率化。
答弁書・報告書・通知文など、時間のかかる作業をAIが支援。
✓ 庁内の活用事例を収集し、ベストプラクティスを共有。
現場からアイデアを集め、全庁的に活かす仕組みを構築。
✓ シャドーITの防止。
職員が個人で外部ツールを使うリスクをなくし、安全で統一的なAI利用環境を整備。
職員アンケートでは、次のような結果が得られました。
「業務効率が向上した」…83%⇒95%
「今後も継続して使いたい」…64%⇒84%
と高い評価を得ています。
さらに、現場からは次のようなリアルな声が寄せられています。
ユーザーの声
✓ 文書作成が苦手、法令を解釈するのが苦手。いずれもChatGPTで下案を作ったり、解釈を手伝ってもらいながら業務を進めている。
✓ エクセルの関数を作るのが苦手だったが、ChatGPTに相談しながら業務の効率化を図ることができた。
✓ 外国籍の市民が多く、翻訳が必要な場面で非常に役立っている。
✓ ワードやエクセルがほとんど使えなかったが、ChatGPTに相談しながら事業の企画から実施まで行うことができた。
➡ スキルの弱点を補うための利用が多く、生成AIは人間のスキル格差を埋める可能性がある。
デジタルスキルが十分でない人ほど、その恩恵は大きい――まさに“誰もが使えるAI”の姿です。
横須賀市では、AIを一部の職員の専用ツールにせず、全庁的に広げるための工夫が行われています。
🟢 ChatGPT通信(庁内報)
庁内で共有できる使い方や便利なプロンプト例を紹介。職員同士が活用事例を共有し合う文化を醸成。
🟢 ChatGPT研修
深津貴之氏プロデュースのオリジナル研修。深津さんの凄さを前面に押し出し、約400名の職員が参加。
🟢 ChatGPT活用コンテスト
「こんな業務でAIを使ってみた!」というプロンプトの実践例を職員が発表。
52件もの応募があり、互いの発想を共有するきっかけに。
このように、AIを単なる“効率化ツール”に留めず、「学び・共有・挑戦」のサイクルとして定着させているのが特徴です。
横須賀市では、行政内部だけでなく、市民生活を支える多様なAIサービスが生まれています。
外国人住民や観光客向けに、AIが生成した市長アバターが英語で市政を発信。
言語の壁を超えた「グローカル行政」を実現しています。
仮想空間にアバターを配置し、観光案内等を実施。
「市役所がいつでも、どこでも」アクセスできる時代を先取り。
猫型チャットボットが市民の問い合わせに対応。
市民との距離を縮める“親しみやすい行政AI”。
生成AIを活用した音声対話によって高齢者の会話を促し、脳の活性化をサポート。
「会話による認知症予防」を目指す取組です。
孤独・不安を抱える市民の声を24時間365日受け止めるAI。
共感的な対話を重ねる24時間365日対応の“デジタル傾聴ボランティア”として注目されています。
必要に応じて、直接人による相談にも連携可能。AIから人へ、つながる支援を目指します。
ビッグデータから生活習慣病リスクを分析し、個人ごとに健康アドバイスを提供。
健康寿命の延伸と医療費の削減を目指します。
令和8年度には、AIを活用したビッグデータ解析による「要介護リスク予測」を実施予定です。
私はこれまで、枚方市における生成AI導入を次の2つの観点から提案してきました。
6月議会の一般質問でも訴えたように、AIを活用するのは一部の専門部署だけではなく、
全職員が「自分の業務にどう生かせるか」を考えることが重要です。
AIを通じて、業務の見直し・発想の転換・説明力の向上など、行政の質そのものを高めていく必要があります。
さらに、生成AIの進展は、単なる事務作業の効率化にとどまりません。
業務フローや人材配置、そして職員一人ひとりの役割そのものを根本から変革しつつあります。
驚異的なスピードで業務の前提が変わる中で、本市もこうした変化を積極的に取り込み、
組織全体を再設計する視点が欠かせません。
市民サービスを守り抜くためにも、スピード感を持った人材確保と体制整備を進めていきます。
横須賀市では、東北大学や民間企業と連携したAI研究が進められています。
AIを福祉や健康、教育、子育て支援などの分野に応用し、市民生活の質を高める実証実験が進行中です。
枚方市でも、関西圏の大学やスタートアップ企業と協力し、
地域課題をAIで解決する社会実証プロジェクトを展開できる可能性があります。
市民が「行政と共にAIを使いこなす」まちづくりを進めることが、これからの自治体の競争力になると考えます。
今回の視察を通じて感じたのは、「AI導入=人を減らすことではない」という本質です。
横須賀市の職員は、AIを「仕事を助ける仲間」として使いこなし、むしろ人の力を拡張する方向に進んでいます。
枚方市でも、そんな前向きなデジタル改革を進めていきたいと思います。
AIを活かす主役はあくまで「人」です。
横須賀市の取組は、テクノロジーの導入だけでなく、職員一人ひとりの意識変革から始まっています。
枚方市でも、「AI×人」の力で、
✅市民に寄り添う行政
✅職員が誇りを持てる職場
✅そして、誰もが安心して暮らせるまちづくり
を実現していきます。
これからも、現場から生まれる実践的なAI活用を支え、枚方市を“全国のモデル自治体”へと進化させていきます。
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