皆さん、こんにちは。枚方市議会議員のかじや知宏です。

令和7年度（2025年度）の「全国学力・学習状況調査（全国学力テスト）」の結果が公表されました。枚方市では、国語・算数・数学で全国平均を上回る成果が見られる一方、理科では課題も明らかになりました。
さらに、児童生徒の学習習慣やICT活用の実態を調べた質問紙調査からも、多くのヒントが見えてきました。

はじめに｜調査の趣旨と枚方市の位置づけ

全国学力・学習状況調査は、全国の小学6年生と中学3年生を対象に、学力と学習状況を把握・分析し、授業改善や教育施策に生かすことを目的に行われています。
枚方市も例年参加しており、結果は市の教育施策や学校現場での改善に活用されています。

国語・算数・数学で全国平均と同等または上回る

小学校国語は、67.0％（全国66.8％）で＋0.2ポイント上回りました。特に「話す・聞く」領域で良好な結果でした。

小学校算数は、58.0％で全国平均と同水準でした。「数と計算」の領域では全国を上回る一方、「測定」分野に課題が見られます。

中学校国語は、55.0％（全国54.3％）で＋0.7ポイント上回りました。「読む力」が特に強みです。

中学校数学は、49.0％（全国48.3％）で＋0.7ポイント上回りました。「図形」領域が優れている一方、「データ活用」は課題です。

理科に明確な課題と新しい評価方式

小学校理科：全国平均57.1％に対し、枚方市は55.0％（−2.1ポイント）

中学校理科（IRTスコア）：全国503に対し、枚方495（−8ポイント）

今年度から中学校理科では、従来の紙による一斉テストではなく、タブレット端末を使ったCBT（Computer Based Testing）方式が導入されました。
生徒ごとに一部の設問がランダムに出題される仕組みになっており、テスト内容が全員同じではない点が特徴です。

評価にはこれに合わせて、**IRTスコア（項目反応理論）**が初めて採用されました。
単純な正答率ではなく、「どの問題に正解・不正解だったか」と「各設問の難易度」をもとに学力を数値化する方法で、全国平均500を基準に偏差値のように評価します。
また、IRTスコア・IRTバンドは、難易度の高い問題に正答すると高く、難易度の低い問題を間違えると低く算出されるという特徴があります。

枚方市の中学校理科の平均IRTスコアは**495（全国503）**と全国を下回り、とくに高得点層（IRTバンド4・5）の割合が少ない傾向が見られました。

💻 ICT活用と主体的な学びの広がり

質問紙調査からは、枚方市のICT活用が全国に比べて非常に進んでいることが明らかになりました。

小学校では、「ほぼ毎日（複数の授業）」**97.7％**と「ほぼ毎日（1回くらいの授業）」**2.3％**を合わせて、**合計100.0％**の児童が端末を日常的に活用しています。
　全国平均は「複数」61.0％＋「1回」**23.8％**で、**合計84.8％**です。

中学校でも、「ほぼ毎日（複数の授業）」**89.5％**と「ほぼ毎日（1回くらいの授業）」**10.5％**を合わせて、**合計100.0％**となっています。
　全国平均は「複数」63.7％＋「1回」**19.1％**で、**合計82.8％**です。

このように、枚方市のICT活用は小・中学校ともに全国平均を15ポイント以上上回る高い水準にあり、前年度からの減少も見られません。
また、課題解決に自ら取り組む児童生徒の割合も、**小学校81.1％・中学校82.3％**といずれも全国平均を上回っており、ICTを通じて「自分の考えを表現する力」が確実に育ちつつあります。

さらに、質問紙調査では、「ICT機器を使って情報を整理できる」児童ほど、「学んだことを生かしながら考えをまとめていた」と回答する割合が高いという結果も示されています。
小学校では、両者の相関係数が0.400と高く、ICTを学習の「思考ツール」として活用できているかどうかが、探究的な学びの深まりと強く関連していることが明らかになりました。
単に端末を「使っている」だけではなく、情報を整理し、自分の考えを構築・表現する学びの質が問われていることが示されています。

🌿 「学校に行くのは楽しい」とウェルビーイングとの関係

質問紙調査では、**「学校に行くのは楽しいと思いますか」という設問と、友達関係・生活満足度・先生との関係といったウェルビーイング（心の充実）に関する項目との間に、比較的強い相関関係（相関係数0.2以上）**が見られました。

📌 具体的な相関係数は以下のとおりです。

「友達関係に満足していますか」
　　…小学校 0.326 ／ 中学校 0.441

「普段の生活の中で、幸せな気持ちになることはどれくらいありますか」
　　…小学校 0.361 ／ 中学校 0.420

「先生は、あなたのよいところを認めてくれていると思いますか」
　　…小学校 0.297 ／ 中学校 0.348

つまり、「学校に行くのは楽しい」という感覚は、友人関係や日常生活の幸福感、先生との関係と深く結びついていることがデータとして示されています。

反対に、楽しくないと感じている子どもたちは、こうした関係性や生活面に課題を抱えている可能性が高いことも浮かび上がっており、今後の重要な支援対象となります。

📌 枚方市議会議員かじや知宏の視点

成果を広げ、課題を克服するために

今回の調査結果は、枚方市の教育の現状を多面的に示す非常に貴重なデータです。
ICT環境や国語・数学の成果は、市全体の教育力を示すものであり、今後の取り組みの基盤になります。
一方で、理科や特定分野、授業理解度の課題には早急な対応が必要です。

📝 課題分野の授業改善と専門性の強化
　理科や「読む力」「測定」「データ活用」など、課題が明確になった領域について、市教育委員会と学校が連携し、授業改善・教材開発・教員研修を重点的に進める必要があります。

💻 ICT活用を“日常の学びの質”へと結びつける
　端末整備と活用状況は全国でも高い水準です。今後は、子どもたちがICTを使って情報を整理し、自分の考えを構築・発表できる授業づくりを支援することが重要です。学校間の活用格差を防ぐための継続的なサポートも必要です。

👨‍🏫 「わかる・できる」の実感を重視した授業へ
　授業内容の理解度の低下は深刻な課題です。点数の向上だけでなく、子どもたちが日々の授業の中で「わかった」「できた」と実感できるような授業設計・個別支援・評価方法の見直しが求められます。

🤝 地域・保護者との連携強化と、心理的な居場所づくり
　調査結果からは、学校生活の充実感と友人関係・生活基盤・先生との信頼関係が密接に関連していることが明らかになりました。
　特に、学校を「楽しくない」と感じる子どもたちに対しては、心理的な居場所の確保、生活支援、教職員との信頼関係の再構築といった多面的な支援が求められます。ウェルビーイングの視点を教育政策に明確に位置づけ、学校・地域・家庭が連携した体制づくりを進めることが、今後の重要な課題です。

おわりに｜成果と課題を次のステージへ

枚方市の全国学力テスト結果には、いくつかの明確な成果と、今後取り組むべき課題が示されました。
ICT活用や国語・数学の着実な成果は、市全体の教育力の向上を示すものです。
一方、理科や特定領域での課題、授業理解度の低下といった課題に対しては、市全体での授業改善や学習支援体制の強化が求められます。

今後は、調査結果の詳細分析を踏まえ、授業改善・教員研修・学習支援の充実を進めるとともに、ICTや探究的な学びを活かしながら、子どもたち一人ひとりが「わかる・できる」を実感できる教育環境づくりを、市と地域が一体となって進めていくことが重要です。

これらを踏まえ、議会としても教育委員会と連携しながら、子どもたちの学力と学びの質の双方を高める政策をしっかりと後押ししていきます。

🔗 関連リンク（参考資料）

全国学力・学習状況調査（国立教育政策研究所）
👉 https://www.nier.go.jp/kaihatsu/zenkokugakuryoku.html

枚方市「令和7年度 全国学力・学習状況調査結果について（枚方市教育委員会）」
👉 https://www.city.hirakata.osaka.jp/0000052701.html