2024/7/25
○田中健君 国民民主党の田中健です。
私は、会派を代表して、ただいま議題となりました子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について質問させていただきます。(拍手)
まず、今回の改正法案の中で、国民民主党が訴え続けてきましたヤングケアラーの支援が法制化されます。大きな一歩です。国が実態把握に努め、地域による支援格差の解消につなげていただきたいと思います。
一方、支援金については問題点を指摘しなくてはなりません。政府は、少子化対策の財源として、子ども・子育て支援金の新設を提案しています。総理は、支援金は歳出改革と賃上げによって実質的な負担はないと説明をしてまいりました。今回、こども家庭庁から示された給付と拠出の試算は、負担額を全ての国民の数で割り平均値を示しただけのものであり、月四百五十円という金額が独り歩きするのは、負担をごまかすと言われても仕方がありません。
そこで、伺います。年収によっては毎月の負担額が千円や千五百円を超えることはあり得るのでしょうか。具体的に、年収が六百万円、八百万円、一千万円の場合、それぞれの組合健保加入の被保険者一人当たりの平均の負担額は幾らになるのかをお示しください。
試算表の中で組合健保における医療保険額は加入者一人当たり一万一千三百円とありますが、この額から保険料の負担額は一円も増えないという理解でよいのかも伺います。
支援金の実質国民負担ゼロは、二つの前提が置かれています。
一つは歳出改革です。工程表には、医療、介護の三割負担の見直し、つまり高齢者の窓口負担の問題や、また、支援金の賦課に金融所得勘案、つまり金融所得の情報をどう把握するのかの問題を始め、多くの検討課題が掲げられています。それぞれの課題で財源をどれだけ捻出できるのかは示されておらず、また、それぞれ熟議が必要なテーマばかりであり、実現性が見えません。これを財源と言えるのでしょうか。歳出削減一・一兆円の中身をお示しください。また、歳出改革の内容次第では、窓口負担の増加や受診控えなど、医療や介護制度のサービス低下につながることはないのか、総理の考えを伺います。
改革工程表の改革ができなかった場合は実質的に負担が増えることになるのかも伺います。それとも、子ども・子育て支援特例公債の発行を継続して、負担を増やさないようにするのでしょうか。既に、後期高齢者医療制度の窓口負担原則二割の導入などの検討は、選挙を意識した与党の反対等で遅れているのではないですか。総理の見解を伺います。
もう一つの前提は、賃上げです。賃上げは労使の協議によって決まるものであり、確実に全ての労働者の賃金が上がるとは言えません。実際に、春闘においても、賃上げに至っていない中小企業は数多く存在します。どうして負担がないと言い切れるのでしょうか。賃上げが上がらない被保険者であっても負担は増えないと言えるのか、総理の見解を伺います。
また、社会保険料が上がることは賃上げにマイナスになるのではないかとの懸念の声が上がっています。賃上げに関する課題で、正社員が雇えないのも、可処分所得が増えないのも、社会保険料の負担が大きいことが、国民民主党が行ったアンケート調査でも明らかになっています。国を挙げて賃上げを進めている中、社会保険料が増えることは、賃上げのマインドを下げることにつながることはないのでしょうか。そもそも、支援金が労使折半であり、事業主負担も発生する中、会社側の負担金は、本来、従業員の給料に回すことができるのではないでしょうか。総理の考えを伺います。
このままでは、子ども・子育て支援金は、現役世代に重く負担ののしかかるステルス増税となります。保険料の目的外使用が問題であることのみならず、企業にとっても社会保険料の更なる負担増となり、賃上げ抑制の要因にもなりかねず、子供を産み育てる世代の支援という少子化対策と逆行します。制度設計を見直すべきです。
年少扶養控除の廃止等により、児童手当受給時に比べ、実質手取りが減少する世帯が生まれています。国民民主党は、異次元の少子化対策は、若者世代、子育て世代、両世代の異次元の可処分所得対策であり、一日も早く教育無償化を実現し、子供たちを奨学金返済から解放し、結婚や出産がリスクだと思わない社会をつくることが必要であると訴え続けてきました。その意味では、扶養控除の維持拡充と年少扶養控除の復活については、検討するかしないかではなくて、もはやこれは少子化対策の前提であります。実質手取りが減少する世帯が生じない額を最低限支給すべきです。年少扶養控除の復活についての総理の見解を伺います。
こども誰でも通園制度は、利用者からは助かるという声がある一方、現場からは不安の声が上がっています。モデル事業を行った自治体からは、月十時間の時間制約について、短時間しか利用できないのは託児所になってしまう、質の高い保育を受ける権利を守る観点からすると時間制限をなくしてほしいという声。また、都市部では、そもそも待機児童が存在しており、働きたくても働けないという問題があり、後回しにされるのではないかとの声。保育士からは、ただ預かればいいというわけでなく、保育の質を担保すべきとの声。どれも大切な声です。
十時間の時間制約は今後拡大していく考えはあるのか、伺います。また、どの地域においても、希望の施設が利用できる環境を整備すべきであります。保育士などの保育施設で働く全ての人の賃金や労働条件を改善し、質の高い保育を提供するための必要な人材を確保すべきであると考えますが、総理の見解を伺います。
保育士の配置基準がようやく改善されますが、全ての子供が良質な保育を利用できる権利を持つ保育保障の実現を目指していくためには、更なる改善が必要です。配置基準に関して今後どのような改善を図っていくのか、猶予期間を続けるのではなくて、期限を区切って早期に改善をすべきと考えますが、総理の見解を伺います。
政府は、異次元の少子化対策はこれでスウェーデン並みになったと言っていますが、国際比較可能なGDP比では二%が二・四%になっただけ。スウェーデンの三・四%にはいまだ至っていません。自分の国を子供を産みやすい、育てやすい国だと思うかの国際意識調査、日本四・四%に対し、スウェーデン八〇・四%。是非、この現状を見るべきです。大きな開きがあります。
私たち国民民主党は、人づくりこそ国づくり、誰もが子供を産みやすい、育てやすいと思えるために愚直に訴えていきますことをお約束し、質問を終わります。
ありがとうございました。(拍手)
〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇〕
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 田中健議員にお答えいたします。
まず、子ども・子育て支援金制度についてお尋ねがありました。
先日、こども家庭庁からお示ししたとおり、月約四百五十円という、加入者一人当たりの平均値で拠出額をお示しすること、これは理にかなったものであると考えております。
毎月の具体的な拠出額は、加入する医療保険制度や所得等に応じて異なるものであり、年収別の拠出額については、数年後の賃金水準等によることから、現時点で一概に申し上げることはできませんが、所得が高く拠出額が大きい場合は、歳出改革に伴う保険料軽減効果も併せて大きくなる、この点について留意することが必要です。
こども家庭庁の試算では、現行の医療保険料額の四から五%程度となることをお示ししており、これにより、国民お一人お一人の拠出のイメージを持っていただけるものと考えております。
また、健保組合の医療保険料額については、令和三年度の実績を参考としてお示ししたものであり、歳出改革や支援金制度の影響以前に、高齢化等の影響を受けるものであることに留意が必要であります。
歳出改革による財源確保の実現性と医療、介護制度のサービス低下の可能性についてお尋ねがありました。
昨年末に閣議決定した改革工程においては幅広い歳出改革のメニューが列挙されていますが、これらは、一義的には、社会保障の持続可能性を高め全世代型社会保障を構築する観点から盛り込まれたものであり、議論を続けていかなければなりません。
これらのメニューの中から、一・一兆円の財源確保に向けて実際の取組を検討、実施するに当たっては、必要な保障が欠けることがないよう、見直しによって生じる影響を考慮しながら、丁寧に検討してまいります。
政府としては、歳出改革が十分にできず、加速化プランの財源が賄えない事態は想定しておらず、徹底した歳出改革に取り組んでまいります。
支援金制度の導入と賃上げの関係についてお尋ねがありました。
支援金については、実効性のある少子化対策の推進が、労働力の確保や国内市場の維持の観点から、企業に極めて重要な受益をもたらすものであることから、これまで社会保険制度において事業主が果たしてきた役割や取扱いも踏まえ、事業主にその一部を拠出いただくことといたしました。
歳出改革によって保険料負担の軽減効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することを基本としており、このために実質的な負担が生じない点は事業主が拠出する分についても同様であり、支援金に事業主拠出を求めることが賃上げを阻害するとは考えておりません。
年少扶養控除についてお尋ねがありました。
こども未来戦略において、所得制限の撤廃、高校生年代への支給期間の延長、第三子以降の支給額を三万円とする児童手当の抜本的拡充を始めとした、子供、子育て世帯に対する経済的な支援の強化に取り組んでいます。
このように、今回、主として歳出面の取組において、前例のない規模で、子供、子育て政策の抜本的な強化を図ることとしている中、子ども手当創設に合わせて、所得控除から手当へとの考え方の下で廃止された年少扶養控除の復活については、検討課題としてはおりません。御指摘のような、復活の代案としての、廃止の影響を緩和する給付を行うことも考えておりません。
こども誰でも通園制度についてお尋ねがありました。
こども誰でも通園制度の来年度からの制度化後において設ける、月一定時間までの上限時間については、今年度から月十時間を上限として実施している試行的事業の状況や、全国的な提供体制の確保状況等も踏まえながら、都市部を含め全国の自治体において提供体制を確保できるかといった観点から、今後検討してまいります。
また、こども誰でも通園制度の本格導入に当たっては、保育人材の確保は重要であり、保育士資格の取得支援や保育所等におけるICT化の推進等による負担軽減、潜在保育士のマッチング支援等の取組を進めるとともに、引き続き、民間給与動向等を踏まえた処遇改善を行ってまいります。
保育士の配置基準についてお尋ねがありました。
加速化プランに基づき、四、五歳児における保育士の配置基準について、令和六年度より、三十対一から二十五対一へ、七十六年ぶりの改善を行うとともに、一歳児についても、令和七年度以降、六対一から五対一へ改善を進めることとしております。
四、五歳児の配置基準については、人材確保等の施策を進めながら、今回の配置改善を早期に実現することができるよう努めることは当然だと考えておりますが、その前提の下、人材確保に困難を抱える保育現場に配慮し、従前の基準で運営することも妨げないとする経過措置を、当分の間、設けることとしております。経過措置の早期の終了を図ってまいります。(拍手)
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>田中 けん (タナカ ケン)>2024年4月2日 衆本会議 議事録