2024/7/19
○田中(健)委員 国民民主党の田中健です。
今日は、参考人の皆さん、貴重なお時間、ありがとうございます。
早速質問をさせていただきます。
まず、村上参考人にお伺いします。介護の件であります。
今回、訪問介護の基本報酬引下げがありました。訪問介護の利益率が全てのサービス平均を上回るということでありましたが、私たちは、それは大企業だけである、中小企業や個人でやっている方はそうではないということをこの委員会でも質疑をしてまいりました。
先ほどの説明の事業者アンケートの中でも、これについては九九%が反対だということも示していただきましたが、実際、介護の従事者ないし働く現場もこの問題についてどのように思っているかというのを聞きたいと思っています。恐らく、大きな声が様々上がっているかと思うんですが、現場の声というのはどのような声が聞こえているか、教えてください。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。
まず、基本報酬の引下げ自体に関しては、介護の在り方、訪問介護の在り方に対する意見というのがかなりありました。訪問介護の必要性を軽く見ているとか、国は在宅介護を捨てたと思うとか、訪問介護を何だと思っているのか、住み慣れた自宅で生活をするために支えている訪問介護や定期巡回の単位数を下げるなんて国の考えと逆行している、このようなことになっています。
それからあと、事業所の経営状態のことをすごく心配している、不安に思っている方がかなりいらっしゃいました。事業所として利益が減少する、それから、現時点でも赤字が出ている状態なのに、更に収入が減少することに心配しかない、あとは、訪問介護事業所の倒産を多く耳にする中、今ある事業所を守っていただけない状況をつくるのはおかしいとか、そういうようなことですね。
それからあと、最も多いのは、やはり、基本報酬が引き下げられたことによって自分自身の賃金が引き下げられるのではないかということなんです。基本報酬の引下げイコール賃金の引下げと捉えている従事者が非常に多いのにちょっと驚きました。賃金が引上げになるのではということで、すごく心配だと。基本報酬が下がることで、賃金が引き下げられる可能性が大きく、更に離職が増加する。報酬が下がると、会社はどこかで経費を削減する、そして、それは働き手にしわ寄せが来て、ますますヘルパーをしたいと思う人が減るとかいうことですね。
今回の調査をして、かなりの数の回答がすごく早い段階で返ってきたというのにすごく驚いておりまして、訪問介護員のモチベーションにかなり影響があったなということを感じている次第です。
以上です。
○田中(健)委員 ありがとうございます。
大変厳しい声、また現場の声があるということなんですけれども、そんな中で、先ほど、離職をする人が多いということと、また賃金が低いということで、人材の話がありました。
訪問介護の人材不足対策は、先ほど質疑がありましたけれども、介護全体としても、今、人材不足というのが大きな課題となっておりますが、処遇改善以上に、またそれ以外で、どのような人材確保のために必要なものがあるかというのを、現場からの声があれば教えていただければと思います。
○村上参考人 御質問ありがとうございます。
処遇改善のほかには、やはり職場の労働環境の改善ということが重要かなと思います。働きやすい職場づくりということですね。
それで、介護業界には、一般的に言うハラスメントのほかに、利用者、家族からのハラスメントというものが発生しています。こちらにつきましては、私どもが二〇一八年に御利用者、御家族からのハラスメント調査を行いまして、実に回答者の七四・二%の方がハラスメントを受けたことがあると回答しています。
この結果を受けまして、厚生労働省の方も検討委員会を設置していただきまして、私の方もその委員に参画いたしましたけれども、その検討会で対策マニュアルとか研修の手引とか事例集とか、そういうものも作成しました。これは厚労省のホームページの方にも載っております。
ただ、様々な対策を講じたとしても、やはり利用者とか家族が介護保険についてちゃんとした理解を持たなければ、このようなハラスメントというのはなくならないというふうに思っています。ですので、国とか自治体とか、もちろん事業者もそうなんですけれども、利用者、家族に介護保険制度のことをもっと理解するように周知をしていただければいいかな、そういうふうに思います。
あと、新しい人を業界に入れるということだけではなくて、今いる人たちを定着させるということも考えていかなければいけないかなと思います。
特に、職場の環境をよりよくするためには、管理職の方がすごく重要でございまして、管理職の方は、管理職に就いたが、研修を受けることなく、かなり、まあ、言い方は悪いですけれども、放置されているような状況があったりするので、管理職教育というのを事業者の方もきっちりしていただきたい。それとともに、介護従事者の職員の方たちも、いろいろな勉強とか研修会とかをしていただくことによって介護のサービスの質というものが向上しますから、こういうこともやっていただきたいということ。あとは、本当に何でも話し合える風通しのよい職場づくり、これが本当に重要だと思います。
以上です。
○田中(健)委員 ありがとうございました。
最後に村上さんに質問なんですけれども、先ほどの質疑の中で、介護専門家も自分の親の介護はできないというような話がありました。
実際、まだ介護休業というのは、全体の労働者、三百二十二万人の中でも一・六%と低い中で、実際介護をしている、介護のプロである介護事業者の中で介護休業を取得した人というのは実際いらっしゃるのか、そういう数がもしもあれば教えていただければと思います。
○村上参考人 私どもNCCUの組合員の中で、介護休業取得者というのが昨年一年間で四十七人です。組合員比率で〇・〇五%です。ですので、ほかの産業に比べて少ないというのが実態です。
介護従事者の皆さんというのは、介護保険制度というのは知っている、理解しているということが前提にあって、それで、介護休業を取ると、介護休業給付金で給与の六七%が保障されるということなんですけれども、今、平均賃金が二十六万ぐらいなんですが、現在もらっている賃金が目減りをするということで、休みを取るのをちゅうちょするということなんですね。
それで、実際、仕事と介護の両立はできると言った方たちに質問をしたんです。では、どうすればいいんでしょうかということなんですが、やはり職場の理解、それからあとは、様々な社会資源、これを利用して介護を乗り切りたいということで、その方は世帯主の方だったんですけれども、働かないと生活ができないので、仕事と介護の両立ができるかできないかではなくて、しなければ生活できないんですということだったんです。
ですので、やはり公的介護サービス、こちらが充実すれば、介護離職というのは減らせるのかなというふうに思います。
以上です。
○田中(健)委員 ありがとうございました。
引き続きまして、佐藤参考人に伺いたいと思うんですけれども、佐藤参考人から、介護離職のない社会ということでお話を伺いましたが、村上参考人の資料に、施設入所の手続期間が三か月から二年と大変長いということがありまして、施設を使いたくても、また介護を使いたくても、期間があるんだという中で、その中で、先ほど最後の方のキーワードで介護・介護両立休業ですかね、ないしは、参考資料で読ませてもらった中では、介護・介護準備休業というような形で、名前を変えたり、そのような形の普及をしていくのがいいんじゃないかという御提言もありましたけれども、もう少しそれについて詳しくお聞かせいただければと思います。
○佐藤参考人 まず、介護休業についての取得率はどのぐらいなんですかという議論があるんですけれども、育児休業と違って、介護休業を取得しないのが一番いいんですよね。取得しないで両立できれば、それはそれでいいわけで。つまり、介護の場合、長い休業を取る必要はそれほどないんですよね。
ただし、例えば、親が地方にいるので、認定を受けるためでも一週間、二週間休まなきゃいけない、こういうふうに取らなきゃいけない場合はあるかも分かりませんけれども、そうじゃない場合であれば、認定を受けるときも、近居、同居であれば、介護休業を使わなくて済んだりする。ですから、まず、介護休業を取りやすくして、みんなが取らなきゃいけないということではなくて、普通の働きをしながら仕事と介護を両立していく、これが一番いいわけですよね。
ただし、長い休業を使わなくても、例えば、今、在宅介護だけれども、ちょっと要介護度が上がって施設に入らなきゃいけない、地方なので施設を探さなきゃいけない、これが一か月ぐらい時間がかかるというようなときに、介護休業を取る。こういうとき、時々、介護休業を取らなきゃいけないということが起きるのですけれども、そういう取り方ができるということが大事かなというふうに思います。
ですので、もう一つは、介護サービスの方ですよね。先ほど、在宅、それから在宅で施設に移れない、今、要介護三以上じゃないと特養に入れませんけれども、もちろん、空きがあるかどうかということがありますよね、それで待機があるというようなことがありますので、そういう意味では、同時に、他方で、介護サービスの方が、現状では人手不足ということがあると思いますけれども、そういう中で、介護の社会化ということを進めながら、やはり介護サービスの基盤をきちっとつくっていただくということをやらないとなかなか難しいかなというふうに思います。
ですので、企業による様々な情報提供と、社員が仕事と介護の両立のマネジメントの仕方を知ると同時に、介護サービスの利用の仕方なり、サービスの充実というのがセットでいかないと、介護離職というのは減らないかなというふうに思います。
○田中(健)委員 ありがとうございます。
介護の関係で、布山参考人にもお伺いしたいんですけれども、今、企業が介護の情報を提供するということは大切だということもお話しいただきました。
今回の制度では、四十歳のときに個別の周知や意思確認をすると掲げられましたが、これもデータを見ますと、なかなかまだ実際は行われていない。
また、四十歳といっても、親と離れていたりしますとまだまだ介護という実感がないという中で、どのようにして企業が四十歳の人たちに介護の情報やまた現状というのを知らせていくのかというのは大変重要なテーマであり、課題かと思っています。
それについて、どのような課題があって、どのような取組が企業にとって必要なのかという御見解があれば、教えていただければと思います。
○布山参考人 ありがとうございます。
まず、四十歳の時点で、今、企業が何かしら周知をしているかとなると、それは、やっている企業というのはそんなに多くないと思います。
今回、労政審で議論していたときに、先ほど佐藤先生からもお話がありましたけれども、まずは、御本人が被保険者になった段階で、余り実感がない、そうすると、どこかのタイミングで、まずは介護保険というのはこういうものだというのを知らせる必要があるだろうというところで、四十歳、被保険者になるところを一つのタイミングというふうに考えました。ですから、これは四十歳以外のところでも、例えば何かの、企業の中の節目節目の研修等の中に入れるということもあると思います。
その中で、介護保険が何なのかということについては、実は保険者もきちんと周知をしていただきたいなというふうに思っておりまして、少なくとも、企業が従業員に周知をするだけではなくて、まずは保険者が被保険者になった方にきちんと周知をしていただきたいのと、そのため、企業が、特に中小企業が対応するためには、それなりの説明ができるようなツールも御用意いただければ大変ありがたいと思います。
いずれにしても、そこで一回、介護保険というのはこういうものだというふうに分かれば、その先、何かあったときに、何も頭にないのと、そういえばこんな話を聞いたということがあるのでは、随分違うのではないかと思っています。
○田中(健)委員 ありがとうございました。
最後、山口参考人に伺いたいんですけれども、育休制度の件です。
もろもろ、答弁の中にもありましたし、また、「子育て支援の経済学」を読ませていただいたんです。その中でも、育休制度というのが母親の就業に及ぼした影響は全体的に高い、短期的には仕事への復帰時間を遅らせる傾向があるものの、中期的には影響はないということでした。また、一年間の公的休業制度は女性の就業を促進する効果がある一方、三年間に延長しても効果はないということもありました。さらに、費用対便益についても、保育は正当化されるけれども、育休政策は当てはまらないという経済学からの指摘もあり、これについて、ちょっと私もどきっとするというか、経済学からするとそうなんだなという、すとんとは落ちなかったんですけれども、それについてちょっと教えていただきたいのと、あくまで、これは母親の就業についてでありまして、これを男性に置き換えられることはできるのかということを最後に教えてください。
○山口参考人 ありがとうございます。
田中委員より御指摘のあったように、女性の育休については、ある程度までは就業にプラスになるんだけれども、余り長くなってしまうとかえって女性をマミートラックに押し込めてしまうということが分かっているので、その使い方については十分気をつけなければいけない、あるいは、女性だけに家事、育児を押しつけるようなことにならないような別の施策、男性の家事、育児参加を促すような施策とセットで行うことが重要なのかなというふうに思っています。
一方で、男性の方の育休取得についてなんですが、これが国際的に見ても仕事に悪影響を及ぼすといった事例については報告されておりません。むしろ、子供の発達上プラスであるとか、夫婦仲、離婚率で測った場合なんですが、そちらについてもプラスであるということが分かっています。なので、男性に関しては、今のところ、取り過ぎを心配するよりも取らな過ぎを心配する方がよいのかなというふうに理解しております。
○田中(健)委員 時間となりました。ありがとうございました。
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