2026/6/26
静岡市が、物価高騰対策として「水道料金の基本料金を4か月間40%減額する」という補正予算案を発表しました。
「40%減額」と聞けば、水道料金が大幅に安くなるように感じます。
しかし、静岡市が公表している標準家庭の料金で計算すると、下水道を含めた実際の負担は、5月使用分までより安くなりません。
結論から示します。
5月使用分まで 10,768円
↓
減額が2か月分反映された場合 約10,936円
↓
減額終了後 11,648円
つまり、標準家庭では、
水道基本料金が40%減額されても、上下水道の合計額は5月使用分までより約168円高い
という計算になります。
今回の計算は、静岡市が一般家庭のモデルとして示している、次の条件を使っています。
水道メーターの口径は20mm。
2か月の使用水量は40㎥。
下水道も利用している家庭です。
この標準家庭では、2か月分の上下水道料金は次のように変わります。
水道料金 5,214円
下水道使用料 5,554円
合計 10,768円
水道料金 5,650円
下水道使用料 5,998円
合計 11,648円
2か月で880円、率にすると8.2%の値上げです。
今回40%減額されるのは、上下水道料金の合計ではありません。
水道料金全体でもありません。
減額対象は、あくまで水道の基本料金だけです。
標準家庭の場合、減額される金額は1か月356円です。
2か月分では712円になります。
そのため、値上げ後の上下水道合計11,648円から712円を差し引くと、
11,648円-712円=10,936円
となります。
5月使用分までの10,768円と比べると、
減額中でも約168円高い
という結果です。
4か月分で比べても同じです。
5月以前の料金水準なら、4か月で21,536円。
減額期間中は、4か月で約21,872円。
「40%減額」の期間中でも、4か月合計では約336円高くなります。
標準家庭の2か月分の上下水道料金を、時期ごとに並べると次のようになります。
10,768円
約10,936円
5月使用分までより、約168円高くなります。
11,648円
5月使用分までより、880円高くなります。
市民が知りたいのは、「基本料金の一部が何%下がるか」ではありません。
結局、上下水道を合わせて何円払うのか。
ここではないでしょうか。
値上げが先に始まり、減額はその後です
上下水道料金の値上げは、2026年6月使用分から始まっています。
実際の支払いへの反映は、検針時期によって2026年8月または9月からです。
一方、基本料金の40%減額は、2026年8月から12月の使用分のうち、検針時期に応じた4か月分です。
つまり、6月からずっと40%減額されるわけではありません。
値上げが先に始まり、その後に4か月間だけ基本料金の一部を減額する。
減額が終了すれば、値上げ後の通常料金である11,648円に戻ります。
この流れを一つの表で示さなければ、市民には非常に分かりにくいと思います。
「値下げするなら、最初から値上げするな」と感じる
市民感覚から見れば、
「値上げした直後に、なぜ減額するのか」
「値上げしたり、減額したり、ややこしい」
「減額が終われば、結局は高くなるのではないか」
と思うのは当然です。
私自身も率直に言えば、
値下げするなら、最初から値上げをするな
と感じます。
もちろん、市の説明にも理屈はあります。
6月からの値上げは、老朽化した上下水道施設の更新や、地震に備えた耐震化を進めるための恒久的な財源です。
一方、今回の減額は、国の重点支援地方交付金を活用した、4か月間だけの物価高騰対策です。
値上げと減額では、目的も財源も違います。
そのことは理解できます。
しかし、制度上の目的が違うからといって、市民への説明まで分かりにくくてよいわけではありません。
値上げと減額を同じ時期に行うのであれば、行政には通常以上に丁寧で、分かりやすい説明が必要です。
水道料金は税金ではない。しかし、普通の商品でもない
水道料金や下水道使用料は、法律上の税金ではありません。
静岡市の上下水道事業は、原則として利用者が支払う料金で運営する「独立採算制」です。
しかし、水道は生活に欠かすことのできないインフラです。
市民が自由に別の水道会社へ乗り換えることもできません。
一般の商品や民間サービスとは、まったく性質が違います。
生活者の感覚としては、税金と同じように、避けて通ることのできない公的な負担です。
だからこそ、公共料金の改定については、一般企業の広告以上に、正確で分かりやすい説明が必要です。
行政は、お得感を演出する必要はない
私は個人事業主として、サービスの料金を決めたり、値下げやキャンペーンを行ったりする立場でもあります。
民間事業者であっても、お客様に誤解を与えないよう、値引きの対象や実際の金額には注意します。
誤解を招けば、苦情につながり、信用を失うからです。
まして行政が扱っているのは、市民生活に直結する公共料金です。
「40%減額」という最も大きく見える数字だけを前面に出す必要はありません。
行政は広告代理店ではありません。
センセーショナルさも、インパクトも、お得感の演出も不要です。
必要なのは、実際の支払額を包み隠さず示すことです。
今回であれば、
5月使用分までは10,768円
減額が2か月分反映された場合は約10,936円
減額終了後は11,648円
と最初から説明すればよいのです。
これなら、市民は正しく理解し、自分で判断できます。
私は、物価高騰対策として市民の負担を軽くすること自体を否定しているわけではありません。
また、老朽化した上下水道施設の更新や、地震に備えた耐震化も必要です。
今回問いたいのは、値上げが正しいか、減額が正しいかという二者択一ではありません。
問題は、行政の広報の仕方です。
「水道基本料金40%減額」という見出しだけでは、標準家庭の上下水道合計が、5月使用分までより高いことが伝わりません。
減額が終わった後、2か月で880円高い料金になることも、一目では分かりません。
値上げ自体は公表されているため、いわゆる「ステルス値上げ」そのものではありません。
しかし、一時的な減額を大きく見せることで、本来の負担増が見えにくい広報になっています。
私は、この伝え方は不誠実だと感じます。
市民が納得できる上下水道事業を
水道は、すべての市民の暮らしを支える生活インフラです。
料金を上げるのであれば、
なぜ上げるのか。
いくら上がるのか。
そのお金を何に使うのか。
これを明確に示す必要があります。
一時的に減額するのであれば、
実際に何円下がるのか。
値上げ前より高いのか、安いのか。
減額終了後はいくらになるのか。
ここまで説明するべきです。
水道基本料金40%減額でも、標準家庭の上下水道合計は、5月使用分までより高い。
この事実を最初から分かりやすく示すことが、公共料金を扱う行政の誠実な姿勢ではないでしょうか。
私は、値上げと減額を繰り返す分かりにくい運営ではなく、市民が内容を正しく理解し、納得できる上下水道事業を望みます。
※金額は静岡市が公表した「口径20mm、2か月の使用水量40㎥、下水道利用」の標準家庭モデルを基に計算しています。実際の請求額は、メーター口径、使用水量、下水道の利用状況、検針時期によって異なります。
【出典】
・静岡市「2026年6月使用分から水道料金・下水道使用料を値上げします」
・静岡市「令和8年度6月追加補正予算(案)の取組」
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今回の記事では、「水道基本料金40%減額」という伝え方と、実際に市民が支払う金額の違いを検証しました。
しかし、そもそも考えなければならないのは、なぜ静岡市の上下水道料金は値上げされたのか、そして市の予算の優先順位は本当に市民が納得できるものなのかという点です。
水道管や下水道施設の老朽化対策は必要です。
一方で、市が進めるほかの大型事業と比べたとき、本当に市民生活に直結するインフラへの予算が優先されているのか。前回の記事で詳しく整理しています。
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