2024/9/24
足立区議会議員 加地まさなおです。
シリーズ2回目は[種子法廃止のなぜと種苗法改定]についてです。
そもそも種子法とは何なのか。
”種を制するものは世界を制する。”
こんな言葉を知っている方も少なくないのではないでしょうか。
いい種を安く供給し、生産と消費を支えるのが国家の責務だとすれば、それに則ったのが正に種子法だったのです。
米麦・大豆の種は国民の主要食料なので国が予算措置をして、都道府県が優良な品種を開発し、安く安定的に農家に供給することを義務付けた法律、とも言いかえることができるでしょう。
この、農作物種子法は平成30年(2018年)4月に廃止となりました。
出典:農林水産省|農産|米(稲)・麦・大豆|稲、麦類及び大豆の種子について|主要農作物種子法の廃止について
何故か?
表向きは「民間企業の参入を促進して生産資材の価格を下げるため」とのことでしたが、実際はグローバル種子企業の世界戦略を後押しするためだと言っても過言ではないと思います。
更に関連法でこれまで都道府県が開発した種の情報は民間に提供しろと義務付けられたので、グローバル種子企業は、材料をただで入手して、遺伝子組み換えなどをして、独占的な販売権を得て、高く売って利益を得られるようになったのです。
当時、多大な反対意見があったにもかかわらず推し進められたこの法律により、農家経営はマイナスを加速させ、作物価格も上がり消費者も負担を強いられることになりました。それだけでなく、在来の多様な種資源は失われ、不作が生じると全滅して基礎食料の国民への供給ができなくなるリスクも高まったのです。前回お話しした、「令和の米不足」にもつながる話ですね。
更に政府の愚行は加速します。種苗法が改定され令和4年(2022年)4月から施行されました。
種苗法とは種子のいわば著作権を守るためのものであり、植物の新品種を開発した人が、それを利用する権利を独占できると定める法律です。ところがシャインマスカットの種などが海外に流出し、優良品種の開発投資が健全に農業者へ還元されるためにも種苗法の改正が必要となりました。そこまではよかったのです。
この種苗法の21条の2項に農家が利用するのはOKであり、自由に自家採種してよいと記載されていました。2022年の種苗法改定は、その条項を削除して、農家であっても登録品種を無断で使ってはいけないということになったのです。
これにより加速したのは生産資材高騰であり、日本の農家がグローバル種子企業に譲渡されたコメなどの種を買わざるを得ない状況を促進することにつながりました。
出典:農林水産省|輸出・国際|種苗法の改正について|改正種苗法について~法改正の概要と留意点~(令和4年3月版)
種苗法の改正は「日本の種を海外に取られてはいけない」との思いから始まったはずなのに、農家の自家採種のみの規制では自国の農家を苦しめるだけで海外流出の歯止めには不十分でした。もっといえば日本の農家がグローバル種子企業に支配される構図が出来上がり、結果的に「流出阻止」のはずが「流出促進」につながることになったのです。
この二本立ての改悪がどれだけ農家を苦しめたかは筆舌に尽くしがたいものがあります。
そもそも農業とは、食糧安全保障の観点からも重要ですが、それだけでなく、地域の伝統・文化を継承するうえでも大事なのです。
一度失われた伝統は二度と取り戻せないでしょう。
田園風景が広がる日本、日本的なもの、それは風景や肌で感じる故郷の香りにも繋がるものです。子供たちに日本的なもの日本文化を継承してもらいたいと考えるのであれば、まずその土台となる農業の保護こそが重要であると感じます。
日本人のよって立つところの基盤である農村、その伝統文化を育む農業を守り、継承していくことこそが、このグローバル化という言葉のもとに混沌とする世の中に一筋の光を見出すことに繋がると信じています。
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