2026/6/28

内部統制と聞くと、上場企業の話だと思われがちだ。それは間違いではない。上場企業には金融商品取引法によって内部統制報告制度(いわゆるJ-SOX)が義務づけられ、会社法でも規模の大きな会社には内部統制システムの整備が求められている。民間では、組織が大きくなるほど、これを備えることが法的な責務とされてきた。
その中身は難しいものではない。職員や社員が一人で記録を作成・操作でき、誰のチェックも受けない――そういう状態を組織として作らないための仕組みのことだ。
なぜ必要か。不正は「悪い人がいるから起きる」のではなく、「単独で操作でき、牽制が効かない状態があるから起きる」からだ。防ぐべきは個人ではなく、その状態を許す仕組みの側。これが内部統制の発想だ。
この民間で確立した仕組みは、行政にも取り入れられている。地方自治法は、内部統制に関する方針の策定を、都道府県と政令指定都市には義務づけている。一方、それ以外の市区町村は努力義務にとどまる。東京23区もこの努力義務の側だ。
民間では規模が大きいほど義務とされてきたものが、自治体の世界では、規模にかかわらず一部に義務が及んでいない。ここで「義務がないならやらなくていい」と考えるか、「義務がなくても備えるべきリスクだ」と考えるかで、自治体の姿勢は大きく分かれる。
実際、努力義務であっても自主的に方針を策定している区は複数ある。総務省の調査では、すでに23区のうち8区が内部統制の方針を持っている。同じ制度的条件のもとで、踏み込む区と踏み込まない区に分かれているのが現状だ。
内部統制が特に問われるのが、委託・指定管理の現場だ。
自治体は多くの公共サービスを外部に委ねている。委託先は定期的な入札で見直されるが、これには「同じ相手に長く任せることで生じるなれ合いやブラックボックス化を防ぐ」という牽制の意味もある。ところが、入札で事業者が替わっても、現場のスタッフが移籍してそのまま居座れば、この牽制は形だけのものになる。業務が属人化し、チェックの目が入らなくなる。
総務省のガイドラインは、委託業務に関する内部統制の責任は委託者の側にあると明記している。現場を直接指揮するのではなく、事業者の体制が適正かを管理し、その管理が機能しているかを監督する。委託事業者・指定管理者・自治体という三つの層で、それぞれにチェックが働く必要がある。
努力義務という言葉は、ともすれば「やらない理由」に使われがちだ。だが、民間では当然に求められる仕組みを、自治体が「義務ではない」という理由で持たずにいるあいだに、委託業務の現場で不正が起き、それが長期にわたって見過ごされる――そうした事態が生じたとき、「義務ではなかった」という説明が区民に通用するだろうか。
内部統制は、不正が起きてから整えるものではない。起きる前に、単独で操作できる状態を作らないための仕組みだ。努力義務であっても、その発想を区政の土台として持っているかどうかが、いざというときの差になる。
東京・江東区の深川北スポーツセンターで起きた、委託スタッフによる予約の不正利用も、まさにこの「委託業務に内部統制が働いていたか」が問われた一件だった。この個別事案の経緯と、江東区の内部統制をめぐる具体的な状況(区の監査委員による指摘を含む)については、本家ブログで詳しく分析している。
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ホーム>政党・政治家>中島 ゆうたろう (ナカジマ ユウタロウ)>自治体の内部統制とは -「努力義務だから」で済まされない、委託業務の死角