2025/4/5
いいお祐介です。
本日は、SNS上でのある議論について、経緯と私自身の考えを整理し、ご説明させていただきます。やや長文となりますが、真摯に受け止め、丁寧にお伝えしたいと思います。
私が毎月主催している「もっといいおおぶを考えナイト」は、市民の皆さんとともに、大府市の暮らしや制度について語り合う対話型のイベントです。4月のテーマは「やらされPTAから、やってみたいPTAへ」というものです。
きっかけは、PTAという仕組みについて、今あらためてその意義やあり方を問い直す声が社会の中にあると感じたことです。同時に、地域や学校とのつながりを感じられる機会として前向きに捉えている方もいます。
私自身、学校と地域とのつながりは今後ますます重要性を増してくると感じており、その中で、地域と学校をつなぐ仕組みとしてのPTAの役割は、改めて再認識されるべきものだと思っています。今回の会の趣旨には、そうした相互理解のきっかけをつくることも含まれており、だからこそ丁寧に進めたいと思っています。
今回のイベント告知をX(旧Twitter)で発信した際、PTAの任意性に関して、保護者の入会意思が十分に確認されないまま自動加入とされている運営が見受けられるのではないか、といった趣旨のご指摘をいただきました。
そのご指摘とは、PTAは任意加入であるため、入会時には必ず意思確認が必要であり、それを怠って保護者を自動加入させている運営は不当であるどころか、違法の可能性すらあるといった趣旨のものでした。
そのうえで、今回のイベントに関連して、そうした状況があり得る場合にどう受け止めるか、議員としての見解はどうかといったご質問を再三にわたりいただきました。
まず、私は一貫して、PTAは任意加入の団体であり、入退会の自由が保護者に確保されていることが前提であると認識しています。この点については、国の見解や日本PTA全国協議会の説明とも一致するもので、今回の議論を通じて改めて整理する機会となりました。
一方で、実際の運営実態がこの原則に適合しているかどうかについては、各PTAごとに異なる事情や経緯があることもまた事実です。私は議員として、個別のPTAの内部運用に対して直接的に関与する立場にはありませんし、各団体の法的適否について一義的に判断できる立場にもありません。
したがって、今回のイベントにおいても、特定の団体に関する内部の運営実態を論じることを目的とするのではなく、あくまで「現状の課題や感じている違和感」も含め、どう改善し得るのかを地域全体で考える対話の場として企画したものです。
ご指摘の中心は、入会意思確認がなされていないPTAの運営は違法である、との趣旨でした。これに対し、私は次のように認識しています。
この点について、星野豊氏(筑波大学大学院教授)も法的見解を示されています。
「近時主張されることが多い見解として、PTAについてはこれを規律する法律等がない以上、民法上の任意団体としての要件を充たすべきであり、保護者の入会については明示の意思表示を必要とすべく、児童生徒の在籍等とPTAとの入会を連動させることは『違法』である、というものがある。しかしながら、PTA活動に参加する個々の保護者の積極的な参加意識を高めるために、PTAの入会に際して明示の意思表示を求めることが望ましいと言うことはできても、入会意思の表示方法について特に規制する法律等がない現状においては、PTAの入会の意思表示を認定するための徴表としては、会費の支払、役職ないし負担の引受、意思決定機関としての総会等への参加、あるいは具体的なPTA活動への積極的参加ないし他の構成員との意見交換等々の事実も、『黙示の意思表示』を十分認定できる筈である。従って、明示の意思表示をPTAが入会に際して求めなかったことを以て『違法PTA』と非難することは、法解釈として誤りであるばかりでなく、学校教育上としての議論として観点からも、およそ生産的な議論とは言い難いように思われる」(星野 2016:84-85)
また、熊本地裁平成28年2月25日判決(いわゆるY小PTA事件)については、
「本件冊子の交付、その後の会費納入袋の交付及び納入袋を使用した会費の納入という一連の流れからすると、Y小PTAが主張するとおり本件冊子の交付をもって入会の申込みと捉えることができるかはさておくとしても、会員ではないのに会費を納入する必要性も合理性も見出しがたいことに鑑みれば、遅くともXが会費納入袋を使用して会費を納入し、Y小PTAがこれを受領した時点において、XとY小PTAとの間で入会についての黙示的な申込みと承諾の合致があったものと認められる。」」(星野 2016:81)
との判断もなされており、「明示の意思表示がなければ即違法」との論調は法解釈上も妥当ではないと考えています。
今回のやりとりを通じて、私は改めて、誤解を招かない説明の大切さと、対話の難しさを痛感しました。
市民の方からの問いかけに対して、責任逃れと受け取られるような言い回しになっていた部分があったことは否定できません。意図としては、特定団体の是非を断じる立場ではなく、制度全体をどう改善していくかに焦点を当てたかったのですが、そのスタンスが伝わりづらかったことは反省点です。
私は「逃げたい」のではなく、誤解を生まない形で、責任を持って制度に向き合いたいと考えています。だからこそ、今回のイベントも、対話の場として企画しました。
もしPTAに関して、「こういう声がある」「こう変えてほしい」という思いがあれば、イベントの場でも、また直接でも、ぜひ聞かせていただきたいと思っています。
今回の議論は、言葉の定義や論理構造が非常に複雑で、互いに認識を擦り合わせることが難しい場面が多くありました。ご指摘くださった方の問題意識も大切なものと受け止め、今後の活動に活かしてまいります。
引き続き、「もっといいおおぶ」を皆さまとともに考えていければ幸いです。
星野豊,2016,「PTAの法的地位(2)」『筑波法政』第68号,pp.79–89,筑波大学法科大学院,(2025年4月4日取得,https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/record/39593/files/HS_68-79.pdf).
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