2024/3/15
維新・無所属議員団を代表して、議案第23号令和6年度杉並区一般会計予算ほか、当委員会に付託されている各議案について意見を申し述べます。
冒頭、改めて、能登半島地震によって亡くなられた方々に、哀悼の意を表しますと共に、被害に遭われた方々、現在もなお不便な生活を送っておられる方々にお見舞いを申し上げます。
能登半島地震復興支援の杉並区の取組みについては、対口支援など詳しく伺い、交流自治体からの要請についても確認をいたしました。
杉並区の現在地は「みどり豊かな住まいのみやこ」というまちの姿を目指し始めたところですが、本当に、新型コロナウイルスで疲弊した区民の暮らしを支えることができているのかどうか。将来に希望を持てる社会がつくれているのかどうか。
本来、ごく自然に得られたはずの、学びや人間関係、経験が得られなかった子ども若者に、さまざまな形で、影響が現れてきたのが令和5年度で、ずっと存在するものと思っていたものが無くなり、先ゆきに対してだけではなく、多くの区民が、今、不安を感じている。これが新年度を迎えた今の杉並区であると感じています。
そういった中、本委員会で審議された各予算に関する基礎的な認識として、区政を取り巻く環境について、改めて整理してまいります。
政府が、令和6年度の経済見通しにおいて、実質GDP成長率を1.3%程度、名目GDP成長率は3.0%程度とし、区の財政面においても、不可避な取組を進めるための歳出規模の拡大が示されており、一方では、ふるさと納税制度や国による税源偏在是正措置の影響などを挙げ、楽観視できる状況でないという区の見解も示されていると承知しています。
このような中、令和6年度予算案では、基本的な考え方として3点が示されました。
1つ目に、杉並区総合計画・実行計画の取組に要する経費を確実に計上したこと、
2つ目に、区民のいのちと暮らしを守りぬくための予算を計上したこと、
3つ目に、先行き不透明な時代において、将来にわたって安定的に区民福祉の向上を図るため、持続可能な財政運営の確保に努めたこととされています。
他会派から、今回の予算の目玉は?と問われた際に、財政課長の「現実的な予算」とのご答弁を印象的に受け止めています。
これらを踏まえ、施策面と財政面に分けて審査した結果について述べてまいります。
まず、施策面について。第一の視点として、杉並第一小学校の設計が盛り込まれているように、阿佐ヶ谷駅北東地区の事業の推進に取り組むことや、都市計画道路の着実な整備に要する費用について、適切な予算措置が行われている点をまず評価します。
その他、学校給食費無償化、キャッシュレス決済等のデジタル化の推進、すぎなみフェスタの引き続きの開催、福祉タクシー券等の所得制限撤廃、ベビーシッター利用支援事業、乳幼児一時預かり利用申込システムの導入準備、道路通報システムの導入など、この間、会派として要望・提案してきた施策が盛り込まれていることを評価します。
また教育現場への人員配置、(具体的には学校ICT支援員の配置拡充、部活動指導員、外部指導員、学習支援教員、通常学級支援員等の配置)、さらに教育相談体制の充実など、学校とこどもに関わる大人を増やす多面的な取り組みについても、感謝と共に評価するものです。
第二の視点として、新規事業立案について。我が会派の代表質問で、新規事業立案が不十分である、と指摘したところ、施策の単位では増えているという答弁がありましたが、代表質問の中で例示したような、先駆的で大きな予算事業が入らなかった、という捉え方は変わりませんでした。
区民の新しいニーズに応えることができなかったという事実認定に対して、その要因として事業の見直し・廃止が十分にできていなかったのではないか、という論点を提示しており、この点は後ほど財政面からあらためて検証してまいります。
以上のことから、施策面においては、その堅実さや、区長交代によって停滞していた事業が再度動き出した面は評価できるものの、目玉施策がないことから、区民の新しいニーズに対応する意思をはっきりとは認めることのできない予算編成であると判断いたしました。
次に、財政面について。第一の視点として、財政規模が拡大の一途を辿っていること。
第二の視点として、健全な財政基盤の構築に向けた取り組みが見られたか。
第三の視点として、行財政改革を推進し、積極的に財源を生み出す姿勢を示しているのかどうか。
この三つの観点から判断してまいります。
第一の視点について申し上げます。財政規模の拡大について、令和6年度当初予算案では、令和5年度当初予算と比較して121億92万円増の2,282億92万円と、過去最大規模の予算となりました。
平成23年度、田中区政における初の予算編成では1,488億円余、以降13年連続の財政規模の拡大であり、
予算規模については田中区政を転換し、一旦立ち止まって熟議する、とはいかなかったことが窺えます。
公共の拡大との一定の関連性を認めつつ、財政の健全化と持続可能な財政運営の確保を大前提とする、という答弁がありました。
既定経費の増に歯止めのかからない状況や、処遇改善など時代の要請に応えていく中で財政規模が拡大していく構図に、一定の危機感が示されたものと受け止めています。
第二の視点ではふるさと納税による区税流失に手をこまねいているなど、区の取組に課題はあるものの、所得の増を背景とする税収増が全てを癒している状況と認識しています。
また、当初予算編成にあたって財政調整基金の取り崩しを行わなかった点について、行政需要の増に対応するために、大きく取り崩した自治体が多い中、現実的な予算として編成したことが、ここに現れていると認識しています。
施策の面で評価した通り、新規事業の創出には物足りなさを感じているものの、現実的には評価すべきものと考えています。
年度末の財調基金残高は、渋谷区に次ぐ規模に達し、本庁舎改築基金の設置や施設整備基金の積み増しを適切に行う前提を作り込むことには、成功したものと認識しています。
一方で起債については、令和5年度当初と比較して13億円余減とはいえ41億円余の特別区債を発行しています。
令和6年度の特別区当初予算編成にみられた特徴の一つに、7区が起債を行わなかったことがあり、都心部の自治体にとどまらず、起債に頼らない他自治体の財政運営についてもよく研究し、区政運営に還元することを求めておきます。
続いて、第三の視点として、行財政改革について。令和6年度予算案における財政効果見込額は前年度予算案との比較で93%減の8300万円余となりましたが、当委員会に付託されている議案第10号杉並区職員定数条例の一部を改正する条例の関連で、定員管理方針に基づく職員数の、適正管理による職員数が増えていることが、マイナス要素として大きく影響しており、この影響を除した財政効果見込額は7億4500万円余と一定の水準を維持していることが質疑を通じて明らかになりました。
職員数増によって財政効果見込額が目減りすることは、財政効果を創出する区の取組を後退させるおそれがあるものとして危機感を持っています。
以上の3つの視点による財政面からの評価では、その主たる要因が区民の努力の賜物としての歳入増であることを前提としながらも、総じて堅実な財政運営がなされたものと認定するに至りました。
施策面における物足りなさも、持続可能な財政運営を最優先してのこと、これが財政課長の言う「現実的な」予算編成であると解釈し、また当初予算による区長公約の達成が相当に抑制的であり、阿佐ヶ谷駅北東地区や都市計画道路など区長公約に反する事業にも適切に予算を配当した点を、あらためて評価するなど、総合的に判断し、維新・無所属議員団は議案第23号杉並区一般会計予算について賛成することといたします。
議案第30号令和6年度杉並区一般会計補正予算(第1号)についても、予算本体に示されている住民税定額減税にかかるシステム改修費用として、必要な措置と考え賛成いたします。
次に、各特別会計について申し上げます。
国民健康保険事業会計、ほか各特別会計予算については、所要の対応が施されており、特段問題ないものと認め、議案第24から26号の、各、特別会計予算には賛成といたします。
なお、国保会計の関連議案として、議案第31号が当委員会に付託されています。
東京都の令和6年度の標準保険料率の改定を捉えた所要の改正と判断し、賛成といたします。
ただし、この間、国保料をはじめとする社会保険料の際限ない増大が続いており、現役世代の負担感は、すでに限界を突破しつつあるものと認識しています。今、国会でも話題になっているように過剰医療の抑制やDXの促進については、杉並区の立場からも、一定の取組が期待されるものです。今後も現役世代への負担増が続くようであれば、区の特別会計に対する見方が変わる可能性があることについて、あらかじめ申し上げておきます。
その他、予算以外に当委員会に付託された8議案について、必要な措置、改正等であることを確認しました。したがって、議案第10から16号、議案第29号に賛成といたします。
なお、我が会派の代表質問や予算審議の過程で申し上げた内容につきましては、予算の執行に当たり留意するよう要望いたします。
特に、受動喫煙に関する取り組みについては、たばこの火による外傷被害から副流煙による受動喫煙による健康被害へと課題がシフトしている中、区の路上禁煙地区指定状況が、それについていけていないことや、児童遊園を含む公園で未だに喫煙が可能であるという状況が質疑を通じて明らかになりました。
人権を尊重する地域社会の醸成を本気で目指していくのであれば、受動喫煙という権利侵害を放置することなく、時代に即した早急な対応を求めるものです。
残念ながら、質疑を通じ、理事者がまちの実際の様子をご覧になっていないのでは、という疑念を抱く場面もあり、デジタル化を通じた業務効率化によって生み出した時間を活用し、理事者ももっとまちに出て、五感で杉並区とその課題を感じていただきたいと思います。
また、経済対策について、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付け変更から1年が迫っており、経済対策の出口が近づいてきているものと認識しています。その中で、区の予算編成にも影響が及んでいますが、今般国が取り組む減税による経済対策に注目しています。
代表質問以降、家庭での食料品等の備蓄について「できれば7日間分」の表記が区ホームページで確認できるようになりました。能登半島地震を受けて防災関連の取り組みを増やしたことも含め、状況の変化や議会からの提案に対し、区の反応速度が上がっていることを感じています。これは重要なことだと思います。
今年度、区、区教委ともに様々な事故、不祥事が発生しましたが、いかに的確に素早くリカバリーするかが重要であり、そういった変化が認められたことについては、予算への賛否を決める会派内の議論にあって賞賛されていたことを申し添えておきます。
予算審議の日々の中で、私の心の中から離れない言葉があります。
「創業と守成と孰れか難き(そうぎょうと、しゅせいと、いずれがかたき)」
『貞観政要』(じょうがんせいよう)の中で李世民が、房玄齢(ぼうげんれい)と魏徴(ぎちょう)に、このように問い、それぞれが答えたというものです。
同じ質問であっても、世の中の状況や、答える側が培ってきた環境と経験により、答えはそれぞれ異なるわけですが、異なるとしても、それぞれの立場を尊重するという意味を踏まえて、我が会派は、「守成の方が難しい」と、答えたいと思います。
もう一つ、学校に行かない選択を続けているある高学年児童の言葉です。
「一年前の自分が感じていた周囲への感覚が、いまは少し違っていて、明け方に見る夢も、前よりも理性的な内容に変わってきたんだよね。」
さて大人である私たちは、こうした子どもの話を、どう感じ、受け止めるでしょうか。
この二つの言葉を、意見開陳の締めくくりとしまして、改めて、誰もが安心して生活できる「みどり豊かな住まいのみやこ」を実現するため、願わくば全ての当事者が、対話によるラポールを築き、その上での強く潔いリーダーシップを区長に強く求めます。
結びに当たりまして、予算審議に際し、誠意を持って御答弁をいただきました理事者の皆様と、資料作成に御協力いただきました、職員の皆様に、心から感謝を申し上げると共に、公平無私な委員会運営を行っていただいた正副委員長に感謝を申し上げ、会派を代表しての意見の開陳を終わります。
ありがとうございました。
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