2022/8/1
●医療分野は、高齢化による介護や認知症の高齢者の増加が進む一方で、労働人口が減少し需要と供給のバランスが崩れ、人手不足も相俟って、期待される医療サービスの継続が困難になっている。その中で、サービスの効率化とコスト削減の見直しが進行し、2025年問題や社会保障システムの変化による一段の経営環境悪化を見据えて、急性期医療・慢性期医療の選択による「超急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」に対する機能分化が実施される予定である。ICT(情報通信技術)による「オンライン診療」の普及、「ヘルスケアモビリティ(医療車両)」の導入など、更なる情報ネットワークの構築によって医療・介護・行政ほかの相互連携を図り、個々人に適したトータル的な健康管理サービスの提供を目指している。
●予防医療に注力し、ライフスタイルの多様化を受けての身体的・精神的・社会的な状態(所謂ウエルビーイング)を高めるという方向に進みつつある。また、地域において在宅医療と高齢者への医療・生活関連サービスを進める「地域包括ケアシステム」によって、「医療」と「介護」の垣根が見直され、医療施設と介護事業所の連携がますます深まっているところである。
●社会福祉の経営課題は、社会福祉事業のみならず、地域における新たな課題に応えるための公益的な役割がますます求められるという点である。社会福祉の制度の狭間のニーズ(市場原理では対応できないニーズ)への取組み、例えば、コロナ渦ほかの影響による一層の「格差拡大問題」、深刻化する「8050問題」など、期待される役割は極めて多く大きい。「少子高齢化」「地域コミュニティの脆弱化」「限界集落化」などの社会問題を打開・解決するための、新たなセーフティネットの構築に挑むという経営理念を明確することが重要である。
●そして、異業種からの参入に対抗し得る、レベルの高い社会福祉事業を担える福祉のスペシャリストを育成し、地域の新たな福祉ニーズに常にアンテナを張り巡らせ、支援ニーズの察知と支援方法論を提案し続けることに注力しなければならない。
●社会福祉事業の今後の取るべき途は、何か特別なことが求められているのではなく、なんら完備されていない状況において、ひたすら必死に援助を要する者を支えた、かつての「慈善事業」「社会事業」と言われる事業も、先人の先駆性と開拓性に満ちた事業の提案からスタートしたものであったことがその証左である。
●そのような社会福祉事業の原点を見失うことなく、今日的な地域福祉の課題の打開・解決にチャレンジし続けることが本来の道筋で、長い歴史で培ったノウハウを、既成の制度や市場原理では満たされないニーズに応えるという原点に基づいた、他の経営主体が担い難い福祉サービス(独居・高齢夫婦・認知症・家族間虐待・精神障害・発達障害などの生活困難住民への日常生活の見守りや権利擁護などの制度によって提供されるサービスにとどまらない支援。)を積極的に実施・開発することが社会からの負託であると考える。(以上)
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ホーム>政党・政治家>三原 義之 (ミハラ ヨシユキ)>医療と較べての社会福祉の経営課題について~社会福祉士国家試験に向けての学習ノートです。