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【横浜市長選挙】山中竹春候補「圧勝」が立憲民主にもたらす“最悪の結果”

2021/8/22

本日(8月22日)。横浜市長選挙は、投開票日を迎えた。

私は、8月5日の記者会見で、立候補の意志を撤回し、小此木・山中両候補の落選運動に転じる旨表明し、それ以降、横浜市における「菅支配の闇」を一層盤石化することになる小此木氏の当選を絶対に阻止すべきであることを訴えるとともに、山中氏については、「コロナの専門家」であることの疑問に加え、パワハラ疑惑、経歴詐称疑惑などを、「夕刊紙風」落選運動チラシを公開、パワハラ音声の公開などの様々な方法で展開してきた。(もう一人の自民系の林文子現市長も支持するものではないが、前回選挙以降のIR誘致への姿勢への市民の批判もあり、当初から当選の可能性は極めて低いものと考えており、落選運動の対象とはして来なかった。)

投票日直前の各社の情勢調査の結果によると、山中竹春氏がリードしており、最新の期日前投票の出口調査の結果でも、同様の傾向が見られるという情報もある。

菅政権は、東京五輪優先で、感染拡大のための抜本的な対策を何一つ講ずることができず、神奈川県の一日の新型コロナ新規感染者数が3000人に迫るという感染爆発を引き起こし、提供されるべき医療も提供されない膨大な数の「自宅放置」を生じさせている。国民の命を危険に晒している菅政権への批判が、自民党、そして、菅首相が全面支援する小此木八郎候補に「強烈な逆風」となっており、小此木陣営は、開票を待つまでもなく、選挙での勝利をほとんど諦めざるを得ない状況に追い込まれている。

一方で、山中陣営は、山中氏が横浜市立大学医学部教授であったこと、新型コロナの中和抗体の研究成果の発表を行ったことから、「コロナの専門家」であるとして前面に打ち出す選挙戦略で臨んでおり(正確には、山中氏は医師ではなく、臨床研究等の統計処理の専門家であって、コロナ医療あるいは感染症の専門家でもない。)、新型コロナ感染急拡大による自民党・菅政権への「逆風」が、そのまま山中氏への「追い風」につながる現状となっている。

しかし、山中氏がこのまま市長選で勝利して横浜市長に就任した場合、その後に訪れると予想される事態が、山中氏にとっても、立憲民主党など野党にとっても、最悪のものとなることは、これまでもブログ・ツイッター等で繰り返し訴えてきたところだ。

公選法上、落選運動には、選挙運動と異なり、期間の制限はなく、投票日当日も行うことが可能なので、これまでの落選運動で訴えてきたことを、取りまとめて述べておくこととしたい。

パワハラ・不当要求問題

山中氏が市長選挙で当選したら、その直後から直面するのが「パワハラ・不当要求問題」である。私は、落選運動の中で、これに関して多くの問題を指摘してきた(【「小此木・山中候補落選運動」で “菅支配の完成”と“パワハラ市長”を阻止する!】)が、山中氏も、山中陣営も、立憲民主党も、すべて無視・沈黙している。

  1. 横浜市立大学内部における山中氏のパワハラ問題
  2. 同大学の取引先に対する「経営介入」の不当要求・脅迫問題
  3. 山中氏の市長選出馬報道に際して、同大学学長・理事長で発出された学内文書について、訂正・謝罪と自己を称賛する新たな文書発出を強要した問題

これらのうち、2. の大学の取引先企業の役員に対する不当要求については、既に音声をYouTubeで公開している(【山中竹春氏パワハラ発言音声&文字起こし】【山中竹春氏パワハラ発言音声&文字起こし<第2弾>】)。2019年12月8日に、山中氏がA氏への電話で発言したものである。

ここで「英語の文章にしてー、出せって言ってる」「それを君ははいって言ったけどー、やらない」「昨日中にそんな文面を送ってくる予定だった」という山中氏の発言は、取引先のA氏に山中氏が不当要求していた会社の役員人事への介入を許すことにつながる「英語の文書」を書くように要求している。これがA氏にとって「義務なきこと」であることは明らかだ。(学生や部下の研究者に対して英文のレポートを書くように「指導」しているのではない。)

「日本の大学病院に多く入れられなくなる」「僕は最後の行動に出る」「君がわからない知らないような」、「ほんと潰れるよ」と言って、自分の行動によって会社が潰れると「害悪の告知」を行っているのであり、強要未遂罪(刑法223条3項)が成立する可能性は高い

名誉棄損罪等と異なり、強要罪は被害者の告訴が要件となる「親告罪」ではない。市長選に当選した人物の犯罪の嫌疑について捜査し、犯罪が成立するのなら処罰してもらいたいという「告発」は、何人でも、犯罪があると思うときは行うことができる(刑訴法239条1項)。

また、3. についても、当初の学内文書では、「市長選には関わらない」として政治的中立を宣言していたのが、山中氏の要求によって山中氏の研究成果を絶賛する文書になっていることからしても、理事長・学長の意思に反して発出させられたことは明らかであり、また、その経過については、不当要求に加わった市議会議員 花上喜代治氏が、周囲に言いふらしているほか、対応した大学当局にも記録が残ってものと考えられ、事実の立証は容易なはずだ。もし、山中氏が、2. と同様に、何らかの「害悪の告知」をして不当要求していれば、強要罪が成立する可能性が高い。

1. の横浜市大内部の教職員、学生等に対するパワハラは、市長選挙に当選し、強大な権限を持つことになる山中氏の問題であるだけに、被害者の協力を得ることは容易ではないが、外部弁護士によって、被害者の保護、匿名化を図りつつ調査を行えば、事実を明らかにすることは十分に可能である。 

「コロナの専門家」、経歴詐称問題

山中氏が、医師でも医学者でもない、医療に関する「統計」の専門家なのに、選挙公報で「コロナの専門家」と記載していることについて、虚偽事項公表罪(公選法235条1項)に該当するのではないかとの指摘がある。「コロナの専門家」というのは、多くの人が「感染症医学の専門家」という意味で理解している(立憲民主党の蓮舫氏も「感染症の専門家」とツイートしている)。山中氏本人に「虚偽の事実」という認識がなければ犯罪は成立しないが、有権者に重大な誤解を与えていることは確かである。

また、研究者用の業績公表サイトのリサーチマップ等に記載していた「NIH(米国国立衛生研究所)リサーチフェロー」と記載していたことの「経歴詐称」問題は、今回の選挙においては「研究員」と記載しているので、虚偽事項公表罪の問題は生じない。しかし、出馬表明に際して自己のリサーチマップを削除していることの説明も含め、自らの経歴についての説明責任が生じていることは明らかである。(【横浜市長選、山中竹春氏は「NIH リサーチフェロー」の経歴への疑問にどう答えるのか】

「IR即時撤回」で予想される事態

横浜市では、林市長が、2年前にIR誘致の方針を打ち出して以降、市議会で多数を占める自民公明両党に支持されて、誘致に向けての作業が着々と進められてきた。それに対して市民からは反対意見が多く、住民投票を求める19万筆を超える署名が提出されたが、直接請求による住民投票条例は自公両党の反対で否決され、既に、事業者の公募、事業提案の提出が行われ、今年夏から秋に予定されている事業者選定が目前に迫っている。

山中氏は、出馬表明の時点から「IR即時撤回」を公約に掲げてきた。当選すれば、その時点で、IR撤回の方針を明確にすることになるであろう。

ここで問題となるのは、これまで、市議会で積み重ねられてきたIR誘致に関する議論が、山中新市長の「即時撤回」方針の表明でどうなるか、ということだ。

山中氏が、出馬表明の会見や、選挙戦の中で訴えてきた「IR即時撤回」の理由は、カジノによる「ギャンブル依存症の増加」と「治安の悪化」であった。いずれも、従来の横浜市の担当部局が、それらを否定する根拠を用意してきたものだ。市議会自民党も、そのようなIRの負の要素を否定する一方で、将来の横浜市の財政事情から、IRによる税収が不可欠だと述べてきた。そのような議論を、今後、根底から覆すというのである。私が、重点政策の筆頭に挙げていた「市長選後の住民投票」によって、民意を理由にIR誘致を撤回するということでなければ、理由付けは相当に難しいのではないか。

「IR即時撤回」を宣言するだけではなく、市議会と力を合わせて、IR撤回を実現していくためには、市議会の市長に対する信頼が不可欠である。上記のようにパワハラ・不当要求疑惑、経歴詐称問題などの多くの問題を抱える山中氏が、市議会側と信頼関係を築くことができるか甚だ疑問である。

「落選運動」に対する山中陣営・野党側の姿勢

当初、7月7日に私が「解除条件付き」で立候補意志を表明したのも、立憲民主党に山中氏の推薦決定の再考を求めることが主目的であり、それ以降、山中氏の市長としての適格性について様々な情報を入手し、立憲民主党に再検討を求めてきた。ところが、それらは全く受け入れられなかったため、落選運動に転じ、自らの資金を投じて、山中氏に説明責任を問い、その責任を果たさないままの当選を阻止するために最大限の活動をしてきた。

しかし、ブログ、YouTube、チラシ等で行ってきた私の指摘に対して、立憲民主党側は、全く説明を行おうとせず、無視している。ブログ【横浜市長選、山中候補の説明責任「無視」の立憲民主党に、安倍・菅政権を批判する資格があるのか】を、枝野幸男代表、福山哲郎幹事長、平野博文選対委員長に送付したが、何の反応もない。

このような立憲民主党の姿勢を見て、私が思い出したのが、4年前の東京都議選の応援演説で、当時の安倍晋三首相が、森友・加計学園問題等についての説明責任を全く果たさないことで「安倍やめろ」と声を上げていた人達に対して、

「“こんな人たち”に負けるわけにはいかない」

と言い放ったシーンである。山中竹春氏についての説明を求める私は、立憲民主党にとって、都合の悪いことを声高に言う「負けるわけにはいかない“こんな人(達)”」なのであろうか。そうだとすると、立憲民主党が説明責任を強く求め、退陣を迫っていた安倍氏と、現在の立憲民主党幹部は、全く変わらないことになる。

先週、警視庁麻布警察署から私に電話があった。警察庁の公開アドレスに、「横浜市長選 郷原」と書いた殺害予告メールが届いたとのことで、私の事務所、自宅、横浜事務所の警備を強化するとの連絡だった。私としては、横浜市のため、市民のために、市長選の有力候補の山中氏の適格性を問い、説明を求めてきた。山中支持者側は、山中氏に説明を求めるのではなく、「誹謗中傷」などと私を非難しているようだ。そのような姿勢が、卑劣なメールにつながったのかと思うと、何ともやるせない思いだ。

横浜市長選での野党共闘候補山中竹春氏が「圧勝」しても、早々に「市長不適格」が明らかになれば、コロナ禍に立ち向かうべき横浜市政の混乱を招き、立憲民主党への国民の期待を急速に失わせる。それによって、野党第一党の同党が、自公政権に替わる「政権の受け皿」にはなり得ないことが露呈するという「最悪の結果」に終わることになりかねない。

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郷原 信郎

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肩書 弁護士 元検事
党派・会派 無所属
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