2022/6/26
インターネット健全利用促進条例と侮辱罪厳罰化(金井たかしの「江戸川区情報」)
2022年3月26日に「江戸川区でのネットのひぼう中傷対策の条例の制定」の記事を書いており、江戸川区では、インターネット上でのひぼう中傷をなくそうとして、2022年3月25日、に江戸川区議会の本会議で、被害者の支援や区民への啓発などに行政が取り組むとする条例「インターネット健全利用促進条例」が可決され、成立していることを説明しています。
最近、2022年6月13日にインターネット上のひぼう中傷への対策として「侮辱罪」を厳罰化することなどを盛り込んだ刑法の改正法が成立したことが報道されましたので、江戸川区の「インターネット健全利用促進条例」の記事の関連記事として、弁護士としての立場から刑法改正における侮辱罪の厳罰化について説明をします。
法務省公式サイト「刑法等の一部を改正する法律案」では、条文の細かい事項が記載されていますので、条文の説明はこの内容を基に書いていきたいと思います。
従前の「侮辱罪」(刑法231条)の刑罰は30日未満の「拘留」または1万円未満の「科料」のみでした。侮辱罪をめぐっては、フジテレビの番組「テラスハウス」に出演したプロレスラーの木村花さんが、ネット上で中傷を受け、自死したことがきっかけとなり、厳罰化の議論が進んでいたものです。
ここで記載した「拘留」と「科料」を少し説明すると、「拘留」とは、1日以上30日未満、刑事施設(刑務所,少年刑務所及び拘置所)に拘置されることをいいます(刑法16条)。そして、「科料」とは、1000円以上1万円未満の裁判所の定める金額を国に納めなければならないことをいいます(刑法17条)。
木村花さんの事件など社会問題化するインターネット上のひぼう中傷を取り締まるには、侮辱罪について刑罰として「軽い」との指摘がありました。このため、今回の刑法の改正では、1年以下の「懲役・禁錮」または30万円以下の「罰金」が加えられ、厳罰化されることになったものです。この侮辱罪の刑法改正は2022年7月7日(施行日)から施行されます。
【現行刑法】(侮辱)第二百三十一条 事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。
【改正刑法】(侮辱)第二百三十一条事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の懲役若しくは禁錮若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。(なお、懲役刑と禁固刑につき「拘禁刑」に一本化される刑法の改正法も成立しています。)
侮辱罪の刑罰を重くする刑法改正がなされたことで、このことが国民に広く知られるようになればインターネット上でのひぼう中傷が減るのではないかと思います。江戸川区には「インターネット健全利用促進条例」があることから、江戸川区としては刑法改正を踏まえて独自の対策も実施していってもらいたいものです。(筆者金井たかしのプロフィール)
「金井たかし 江戸川区の政策研究(金井たかし公式HP)」 (東京都江戸川区)
弁護士 金井高志(金井たかし)
(江戸川区在住 弁護士 武蔵野大学[江東区]法学部・大学院教授)
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