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首長から自治体議会議長への「議員よる職員へのパワハラ」についての申入れ

2021/9/19

首長から自治体議会議長への「議員よる職員へのパワハラ」についての申入れ

 2021年8月25日に、東京新聞で、市川市長から市議から職員へのパワハラについて市議会議長に申し入れをすることが報道され、https://www.tokyo-np.co.jp/article/126615 そして、9月2日に、毎日新聞で、市川市長が、8月30日に市川市議会議長に対し、市議会による調査と「厳正な対処」を求める申し入れ書を提出したことが報道されました。https://mainichi.jp/articles/20210902/k00/00m/040/197000c

 この事件を機に、自治体職員に対して、自治体議会議員からパワハラ行為がされたか否かについて問題とされる場合に、自治体と自治体議会がどのように対応することがよいかについて考えてみたいと思います。

 なお、9月2日に、毎日新聞で、市川市長からの議長への申入れについて、申入れの対象とされている市議が市長の市政運営の追及をしてきている人物であることから、今回の申入れの背景に、市政追及をされていることがあるのではないか、ということが報道されています。この問題は、政治的な問題として興味深いのですが(機会を見つけて記事を書きたいとは思いますが)、今回の議員によるパワハラの法律問題を検討する背景事情の問題として、今回の法的な検討対象からは外しておくことにします。

 まず、私のブログサイトの他の「自治体議会議員による職員へのパワハラ」の記事で検討していますが、自治体議会議員についても、地方公務員であることから、パワハラ防止法(労働施策総合推進法の一部)の適用が問題となります。また、パワハラ防止法に規定される「事業主」による雇用管理上の措置義務の問題として、自治体議会議員につき、その自治体の代表者である首長による雇用管理上の措置の対象となるかどうかが問題となります。

 この点、自治体議会の議員の法的な地位については法律学的には議論がある曖昧なものであり、また、地方自治における二元代表制の趣旨を考えると、自治体議会議員について自治体の首長による雇用管理上の措置の対象として考えることは妥当ではありません。すなわち、首長を自治体議会議員の「事業主」と考えることは妥当ではないということです。そこで、自治体議会議員によるパワハラの防止のための管理上の措置を考える主体としては議会と考えるべきです。

 このように考えると、自治体職員に対して自治体議会議員からのパワハラ行為があったかどうかが問題となる場合、まず、自治体・首長サイドで、パワハラが問題とされる議員に対して直接パワハラの有無に関する聞き取りをすることも考えられますが、地方自治における二元代表制の趣旨からすると、自治体・首長サイドで、議員に対して直接パワハラに関する聞き取りを行うことは、違法とまでは言えないかもしれませんが、妥当なものではありません。

 そこで、首長が自治体議会議員に対する管理上の措置をとる明確な権限はないと考えられますから、首長が、議員のパワハラについての管理上の措置をとる権限のある自治体議会の議長に対して、パワハラ行為が問題とされている議員についての調査や対処を求める申し入れをすることは、法律的には正当なものと考えられます。その首長による申入れの際に、法的視点からすれば、行政・首長サイドで自治体の職員につき調査をした資料・証拠を自治体議会議長に対して提出することが好ましいと考えられます。

 そこで、次に、首長からの申入れに対して、自治体議会として、申入れ対象となっている議員や被害者とされている職員に対する聞き取り調査を行うかどうかが課題となります。法律的視点からは、申入れの対象となっている議員による職員に対するパワハラの有無の調査については、首長と自治体議会の二元代表制の趣旨から、議会としては、首長から提供された物的証拠や関係者による証言の内容などを受け取るべきと考えられ、それらの資料を基礎にしつつも、自治体議会としても、特別委員会(地方自治法第100条に基づくいわゆる「百条委員会」としての特別委員会の設置までは、地方自治法第100条の趣旨からして、必要はないと思われます)の設置を行い、別途独自に、物的証拠の調査、また、証人からの証言、被害者からの聞き取り、加害者とされている議員からの聞き取りなどを行うべきです。その調査の際には、法的には、証拠の種類、聞き取りの順番、事実認定をするルールなど、いくつか注意点がありますので、議会としては、弁護士から助言を受けつつ調査方法をきちんと理解した上で調査をすることが望まれます。

 

自治体スクールコンプライアンス研究所 (東京都江戸川区)

http://www.jsc-i.jp   代表 弁護士 金井高志(金井たかし)

(江戸川区在住 弁護士 武蔵野大学[江東区]法学部・大学院教授)

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