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不祥事を起こした地方議員の辞職~法的に辞職をさせられるか~ 

2021/7/24

不祥事を起こした地方議員の辞職~法的に辞職をさせられるか~ 

[報道された事実]
2021年6月4日の東京都議選に板橋区から立候補し、2期目の当選を決めたばかりの木下富美子都議が選挙期間中の2日に無免許運転で事故を起こしていました。当選後、このことが発覚し、5日付で都民ファーストの会を除名されたことが報道されていました。しかし、木下都議は自ら辞職をしていないことから、6月4日の選挙で選ばれた新しい都議会議員による6月23日の最初の議会において、欠席した木下議員以外の全員により辞職勧告決議がなされたことが報道されました。

議員辞職勧告決議「木下ふみこ議員に対する辞職勧告決議」
https://www.gikai.metro.tokyo.jp/opinion/ex2021-1/01.html

辞職勧告決議には法的な拘束力はない

議員に不祥事がある場合、本件のように他の議員から辞職勧告決議案が提出されることがありますが、この辞職勧告決議案は地方自治法上認められた議案ではありません。そこで、これが可決されたとしても、法的な効力は生じないもので、事実上の議会の意思を示す決議にすぎません。最終的には、勧告をされた議員本人がその決議を踏まえて辞職するべきか否かを判断することになっています。

議会外での不祥事を起こした議員を強制的に辞職させられる? 除名処分できる?

それでは、辞職勧告決議に従わない議員を強制的に辞職させる法的制度はあるのでしょうか。不祥事を起こした地方議員に対して法的な効力を持つ手続きができないかどうかです。

この点、地方自治法134条と135条では、懲罰として、その議員の意思に基づかないでその議会から排除する「除名」処分が規定されています。これは、議員の定数の8分の1以上の者による発議が必要で、そして、議会の在職議員の3分の2以上の者が出席し、その4分の3以上の者の同意がなければなりません。このような厳しい条件による手続きですが、議会において、この除名処分が行われれば、処分の効力は直ちに生じ、その議員は直ちに失職します。

以上のように、地方自治法134条等で、議会が議員に対して懲罰として除名処分を課すことができますが、これは「この法律[注:地方自治法]並びに会議規則及び委員会に関する条例に違反した議員」に対して行うことができると限定されています。そこで、懲罰が主に問題となるのは、本会議や委員会での問題行動です。議員が議会活動と全く関係なく行った一私人としての非行は懲戒処分の対象とはならないとされています(松本英昭『新版 逐条地方自治法[第9次改訂版]』489頁)。すなわち、飲酒運転で逮捕されたり、不倫をしたりしても、それらは議会外での行為による不祥事ですので、いくら週刊誌等で報道されたとしても、地方自治法に基づく懲罰の対象にはなりません。このような地方自治法の除名についての規律を見ると、木下都議の場合には、地方自治法134条等の除名の手続きを行うことは難しいものと思われます。

辞職勧告決議に従わないことを理由に議員を除名処分できる?

つぎに、議員に対して、議会外の行為について辞職勧告決議をした場合において、その議員がこれに従わないときに、このことを理由として、議会がその議員に対して懲罰を科すことができるかの問題がありますが、これは、議会外の行為について懲罰を科すことに等しいことになることから、できないものと解されています。

住民の有権者から特定の議員に対する解職請求(リコール)は?

他に法的手続きがないかですが、議員を辞職させるための方法として地方自治法に他の制度があります。第80条、第82条、第83条等の規定です。これは、当該自治体の有権者の3分の1以上の署名を集めることで、特定の議員の解職請求をすることができるというものです。請求が認められると住民投票が行われ、有効投票数の過半数の賛成により、特定の議員は失職することになります。しかし、この手続きは認められるための要件が重いものですので、実際には、用いられにくいものです。

まとめ

以上をまとめると、地方議会の議員に不祥事が発生した場合、本人が辞職すれば、地方議会としては許可をするだけのことですが(地方自治法126条)、本人が辞職しないということであれば、辞職勧告決議を行うことが考えられます。そして、本人が辞職しない場合、地方自治法上は、除名と住民投票に基づく解職が規定されています。地方自治体の住民としては、議会が不祥事を起こした議員に対するどのような対応をするかを注視していく必要があります。

今後、木下都議はどうするのか?

今回の木下都議の事件について、木下都議自身が辞職をしないことから、議会において議員辞職勧告決議がなされていますが、地方自治法で認められている除名はできないものであり、また、有権者からの解職請求も要件が重く、実際上なされないものです。このように考えると、今後も木下都議がどのような対応をしていくかについて注視していかなければなりません。

 

地方自治体・学校の法律問題に関する調査・研究

自治体スクールコンプライアンス研究所  (東京都江戸川区)

http://www.jsc-i.jp   代表 金井高志

http://twitter.com/kanai_jsc (フォローをよろしくお願いします)

 

 

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肩書 弁護士・武蔵野大学(江東区所在)法学部教授
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