2023/10/23
マンモス予算、いただきマンモス、たまにはがまんモス。
自動車運転手の労働時間の環境整備、警視庁の残業時の一時託児や親族の一時的に託す施設の環境整備、政府情報システムのクラウド基盤の整備費用、防衛省のテレワーク用の端末整備、地域まちなか商業活性化支援、再挑戦支援資金、新創業融資制度、教育訓練給付金、造船業の人材確保、自動車分野の生産性向上、まちプロデュース活動支援事業、農業六次産業化の推進、森林・山村多面的機能発揮対策交付金、薬物乱用防止教育推進費、トライアル雇用助成金、通信・放送分野の情報バリアフリー促進費用、シルバー人材センター事業、都市公園のバリアフリー化、各省庁のバリアフリー化、放送大学の充実、中南米系日系農業者との連携交流・ビジネス創出、ロボット介護機器開発標準化事業・・・。
驚くほどの広範囲な施策・事業の領域だ。実はこれ、すべてが男女共同参画の基本計画によって予算化されて実行された事業である。上記は全項目の中のほんの一部です。施策や事業は令和2年度では全部で1856項目もあった。多くは厚生労働省、内閣府、警視庁、防衛省、経済産業省、農林水産省、文部科学省の事業項目となっている。令和元年度の予算と実績の全項目に目を通した。その上で感じることは各省庁で個別に予算化している事業をなんでもかんでも男女共同参画に関わる事業として寄せ集めて基本計画に計上しているという実態があるということ。一見、男女共同参画とは無関係な事業をわざわざ男女共同参画の基本計画に計上することは無意味なような気がする。しかしながら1800以上の事業が各省庁から男女共同参画の基本計画に参画するべく集まってくるのだから何か理由があるはずだ。
前述の男女共同参画とは縁遠そうな数々の事業も男女共同参画の基本計画に盛りこむことで予算を獲得しやすく、予算額もある程度満たされるということなのだろう。男女共同参画事業であるという大義名分を各省庁が利用して予算獲得競争を戦っているという構図が目に浮かぶ。男女共同参画を否定することは人権を否定するような感覚があり財務省や総務省も決してネガティブには扱えない。そこを突いた官僚同士の化かし合いは実に欺瞞に満ちている。ストッパーもグリップも効かない状態で男女行動参画の基本計画はアメーバー状に遍満していった結果が今にある。令和2年度の男女共同参画基本計画事業の予算総額は8兆9千9百億円、凡そ9兆円にまで膨らんだ。9兆円というと社会保障を担当する厚労省の予算が約33兆円、次いで地方交付税を担当する総務省が約17兆円に続く3番目の高額予算に相当する。もちろん、男女共同参画局の予算は15億円程度で9兆円ではない。9兆円は各省庁における男女共同参画事業の総額である。寄せ集めの予算総額とは言っても9兆円はのっぴきならない高額予算だ。防衛省の予算が5.5兆円であるから凡そその1.5倍以上の予算にあたる。岸田政権は今後5年間で防衛費を43兆円確保する方針を打ち出している。要するにGDP比2%を目安にしている。短期間に防衛予算を急増させりことは容易ではない。岸田首相は各省庁を横断して科学技術費を関連付けて予算の捻出を図るとしている。それでも予算確保に不足がある場合は防衛増税を行うことも辞さない意向を示している。
そんな中、ネットではこんな声も上がっている。「男女共同参画費を防衛予算に振り替えたら良い」「男女共同参画費を削減したらすべて解決」「この際、男女共同参加法を廃止してしまえばよい」。確かに正論ではある。そもそも国民の命を、国民の財産を、国土を守ることができなければ男女共同参画どころか日本が国家たる所以を失う。中国は台湾の併合する野心を隠していない。台湾の有事は即時に隣国日本の安全を脅かす。米国とは安全保障条約上の同盟関係にあるが日本の防衛を丸投げできるわけではない。あくまでもパートナーシップである。米国はもはや世界の警察ではない。中国の覇権主義が世界の安全保障の秩序を脅かしている。北朝鮮も米国と中国の間隙を狙って挑発を続けている。北方ではオホーツク海を挟んでロシア海軍が大規模演習を繰り返している。東アジアの情勢は緊迫化している。日本は有事に対する備えが万全であるとは言い難い。憲法や予算を理由に腕をこまねいていると手遅れになる。国際情勢を見ても地政学上でも日本の防衛体制は看過できない状況にある。男女共同参画に絡む予算が防衛予算に優先されるようなことがあってはならないのではないか。国家が存続し国民の生命があってこその男女共同参画社会の実現への取り組みであるはずだ。
各省庁は男女共同参画の印籠のもとで獲得した予算を再考すべき時期に来ている。省庁ごとの権益を度外視して国民にとって何を優先すべきか、その当たり前の答えを共有しなければならない。
とはいえ、男女共同参画事業にはおざなりにできない重要な事業も含まれている。ひとつは介護給付費国庫負担金であり、約2兆9千億円に上る。介護給費の国の負担は25%となっている。これを無くすと介護保険料は高騰し自治体と国民の負担は跳ね上がってしまう。もうひとつは児童手当であり、予算は約1兆3千5百億円となっている。併せて教育保育給付金として約1兆1千8百億円が計上されている。こども関係で総額は約2兆4千3百億円となる。所得制限付きではあるが中学校卒業まで児童ひとりにつき1万円が支給される。教育保育給付金は教育保育給付認定を受けた保育所、地域型保育事業、認定こども園、新制度幼稚園が幼児教育や保育の無償化に伴う認定こども園等の預かり保育事業や認可外保育施設等の利用において利用料の支給を受けることができる給付金である。子供手当と保育給付金は日本の未来と国民生活に大きな影響を及ぼすことから維持継続が必要なのではないか。男女共同参画事業の予算にはこれら2つの大きな重要事業の予算が含まれている。介護関係と子供関係の予算を足すと約5兆3千3百億円となる。男女共同参画の予算総額9兆円からこれらを引くと残りは約3兆7千億円になる。この約3兆7千億円の予算措置の内容を再検討することが妥当ではないか。男女共同参画事業の膨張した予算の中から1兆円から1.5兆円の削減を達成することが出来れば増税論を封鎖できるであろう。不足分の約2兆円は外為特会の差益や税収の上振れ分で補うことが可能な範囲である。
男女共同参画法を廃止もしくは改正し、「男女がお互いを尊重し合い、職場、学校、家庭、地域などの社会のあらゆる分野で、性別にかかわらず個性と能力を十分に発揮し、喜びや責任を分かち合うことができる社会」を実現するための啓蒙活動のみに絞るとする。そうするとこれまでの努力が水泡と帰すのか。そうではない。
2016年に成立した女性活躍推進法が女性の社会参加を後押しするべく役割の一部を引き継げば良い。女性活躍推進法は10年の時限立法ではあるが必要とあれば3年か5年程度の延長を行えば良い。女性活躍推進法の理念は「自らの意思によって職業生活を営み、又は営もうとする女性の個性と能力が十分に発揮されることが一層重要。女性の職業生活における活躍を推進し、豊かで活力ある社会の実現を図る」というもの。国や公共団体、民間事業者(300人以上)は女性採用比率 、勤続年数男女差、労働時間の状況 、女性管理職比率等を把握し、女性の活躍に関する情報の公表することを法で義務付けた。女性の躍進は未だ物足りないという声も多くあるが一定の効果を上げているのも事実。男女の雇用機会や賃金格差の溝は徐々にではあるが埋まりつつある。ただし、雇用や昇進や出産を望まない女性もいることも念頭に置かなければならない。議会の議席にクオーター制のような女性にだけ下駄をはかせるような取り組みは実現する前に時代遅れになるのかもしれない。
男女共同参画事業には女性活躍推進法では拾えない活動も多い。それらは各省庁の帰属に戻せばよい。DVやストーカーの問題は警察に、パワハラに関しては裁判所に、雇用に関しては労働基準監督署に、求人に関してはハローワークに戻せば良い。警視庁も法務省も厚労省も男女共同参画の傘を取り払い、より強い当事者意識を取り戻すことで過分に補えて推進できると確信する。
参考資料
令和元年度男女共同参画基本計画関係予算額(分野別内訳表) 内閣府
https://www.gender.go.jp/about_danjo/yosan/pdf/01yosan-detail.pdf
第5次男女共同参画基本計画の訂正について
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/pdf/honbun_teisei.pdf
第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/index.html
概算要求110兆484億円発表 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/983608/
女性活躍推進法とは?カオナビ
https://www.kaonavi.jp/dictionary/female-employees-promotion-law/
岸田首相「防衛費GDP2%、27年度に」 財源は年内決着 日経新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA284270Y2A121C2000000/
介護保険財政とは 健康長寿ネット
https://www.tyojyu.or.jp/net/kaigo-seido/kaigo-hoken/kaigo-hoken-zaisei.html
この記事をシェアする
ホーム>政党・政治家>坂本 雅彦 (サカモト マサヒコ)>男女共同参画事業の9兆円に膨れた巨大予算