2024/9/28
前回の記事の続きです。参議院調査室からの調査回答をご紹介します。
1.労働者の解雇について、雇用主側が受ける規制内容の詳細(関連法令及び逐条
解説)
労働者の解雇にかかる主な法律上の規制として、労働基準法第20条及び労働契約法第16、17条がございます。
また、厚生労働省のHP上において、労働者を解雇する際に雇用主が受ける規制につ
いてまとまった記載がございましたので、こちらもご参照いただけますと幸いです。
▼労働契約の終了に関するルール
2.いわゆる解雇(会社都合退職)を行うと申請ができないまたは支給されない助
成金
▼厚生労働調査室より
「令和6年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)」(下記URL参照)に掲載されている各助成金について、パンフレット・支給要領等により支給要件を当方で確認した結果を記載しました。(下記表)
助成金名 | 「○」解雇に関する要件有 |
雇用調整助成金 | - |
産業雇用安定助成金 (産業連携人材確保等支援コース) | ○ |
産業雇用安定助成金 (スキルアップ支援コース) | ○ |
早期再就職支援等助成金 (再就職支援コース) | - |
早期再就職支援等助成金 (雇入れ支援コース) | ○ |
早期再就職支援等助成金 (中途採用拡大コース) | ○ |
早期再就職支援等助成金 (UIJターンコース) | ○ |
特定求職者雇用開発助成金 (特定就職困難者コース) | ○ |
特定求職者雇用開発助成金 (発達障害者・難治性疾患患者雇用開発 コース) | ○ |
特定求職者雇用開発助成金 (就職氷河期世代安定雇用実現コース) | ○ |
特定求職者雇用開発助成金 (生活保護受給者等雇用開発コース) | ○ |
特定求職者雇用開発助成金 (成長分野等人材確保・育成コース) | ○ |
トライアル雇用助成金 (一般トライアルコース) | ○ |
トライアル雇用助成金 (障害者トライアルコース) | ○ |
トライアル雇用助成金 (障害者短時間トライアルコース) | ○ |
トライアル雇用助成金 (若年・女性建設労働者トライアルコース) | ○ |
地域雇用開発助成金 (地域雇用開発コース) | ○ |
地域雇用開発助成金 (沖縄若年者雇用促進コース) | ○ |
障害者作業施設設置等助成金 | - |
障害者福祉施設設置等助成金 | ○ |
障害者介助等助成金 | - |
職場適応援助者助成金 | - |
重度障害者等通勤対策助成金 | - |
重度障害者多数雇用事業所 施設設置等助成金 | ○ |
障害者雇用相談援助助成金 | - |
人材確保等支援助成金 (雇用管理制度助成コース ) | ○ |
人材確保等支援助成金 (中小企業団体助成コース) | - |
人材確保等支援助成金 (人事評価改善等助成コース ) | ○ |
人材確保等支援助成金 (建設キャリアアップシステム等普及促進コース) | - |
人材確保等支援助成金 (若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)) | ○ |
人材確保等支援助成金 (作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)) | ○ |
人材確保等支援助成金 (外国人労働者就労環境整備助成コース) | ○ |
人材確保等支援助成金 (テレワークコース) | - |
通年雇用助成金 | - |
65歳超雇用推進助成金 (65歳超継続雇用促進コース) | - |
65歳超雇用推進助成金 (高年齢者評価制度等雇用管理改善コー ス) | - |
65歳超雇用推進助成金 (高年齢者無期雇用転換コース) | ○ |
高年齢労働者処遇改善促進助成金 | - |
キャリアアップ助成金 (正社員化コース) | ○ |
キャリアアップ助成金 (障害者正社員化コース) | ○ |
キャリアアップ助成金 (賃金規定等改定コース) | - |
キャリアアップ助成金 (賃金規定等共通化コース) | - |
キャリアアップ助成金 (賞与・退職金制度導入コース) | - |
キャリアアップ助成金 (社会保険適用時処遇改善コース) | - |
両立支援等助成金 (出生時両立支援コース) | - |
両立支援等助成金 (介護離職防止支援コース) | - |
両立支援等助成金 (育児休業等支援コース) | - |
両立支援等助成金 (育休中等業務代替支援コース) | - |
両立支援等助成金 (柔軟な働き方選択制度等支援コース) | - |
両立支援等助成金 (事業所内保育施設コース) | - |
両立支援等助成金 (不妊治療両立支援コース) | - |
人材開発支援助成金 (人材育成支援コース) | ○ |
人材開発支援助成金 (教育訓練休暇等付与コース) | ○ |
人材開発支援助成金 (建設労働者認定訓練コース) | ○ |
人材開発支援助成金 (建設労働者技能実習コース) | ○ |
人材開発支援助成金 (人への投資促進コース) | ○ |
人材開発支援助成金 (事業展開等リスキリング支援コース) | - |
障害者能力開発助成金 | - |
職場適応訓練費 | - |
業務改善助成金 | - |
働き方改革推進支援助成金(業種別課題対応コース)※ | ○ |
働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)※ | ○ |
働き方改革推進支援助成金(勤務間インターバル導入コース)※ | ○ |
働き方改革推進支援助成金(団体推進コース) | - |
受動喫煙防止対策助成金 | - |
団体経由産業保健活動推進助成金 | - |
高度安全機械等導入支援補助金 | - |
エイジフレンドリー補助金 | - |
個人ばく露測定定着促進補助金 | - |
一般の中小企業退職金共済制度に係る掛金助成 | - |
建設業退職金共済制度に係る掛金助成 | - |
清酒製造業退職金共済制度に係る掛金助成 | - |
林業退職金共済制度に係る掛金助成 | - |
※賃金額の引上げを成果目標に加えた場合に限る
(参考)
・令和6年度雇用・労働分野の助成金のご案内(簡略版)
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000758206.pdf
・事業主の方のための雇用関係助成金
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/index.html
・「労働条件等関係助成金」のご案内
▼経済産業調査室より
(チラシ)
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/pdf/jigyo_saikoutiku.pdf
(公募要領)https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo.pdf
→公募要領28頁以降に以下の記載があります。
(17)注意事項
以下に該当する場合には、補助金交付候補者として不採択又は交付取消となります。本事業に補助金交付候補者として採択された場合であっても、交付審査において以下に該当すると判明した場合には、採択取消となりますのでご注意ください。
⑧ 主として従業員の解雇を通じて付加価値額要件を達成させるような事業
(チラシ)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r6/shoryokuka.pdf
(公募要領)
https://shoryokuka.smrj.go.jp/assets/pdf/application_guidelines.pdf
→公募要領15頁以降に以下の記載があります。
3-5.補助事業終了後のフォローアップ
(1)効果報告
以下のいずれかに該当すると認められた場合は、補助金の返還又は収益納付が発生する場合があることに留意すること。
・省力化を通じて人員整理・解雇を行っていた場合
(チラシ)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/yosan/r5/r5_mono.pdf
(公募要領)
→公募要領7頁に以下の記載があります。
1-2-2補助対象外となる事業
以下に該当する事業は補助対象外とします。該当するとされた場合は不採択、採択決定の取消又は交付決定の取消を行います。
■ 主として従業員の解雇を通じて、要件や目標の達成のために付加価値額等を操作させるような事業
(チラシ)https://seichotoushi-hojo.jp/assets/pdf/leaf_2ji.pdf
(公募要領)https://seichotoushi-hojo.jp/assets/pdf/outline_2ji.pdf
→公募要領7頁に以下の記載があります。
以下に該当する事業者又は事業を行う事業者は、補助金交付候補者として不採択又は交付決定の取消となります。本事業に補助金交付候補者として採択された場合であっても、以下に該当すると判明した場合には、採択取消となります。
⑥ 主として従業員の解雇を通じて賃上げ要件を達成させるような事業
※参考 補助事業ではありませんが、以下の事業では、労働者の解雇によって経済産業大臣の認定が受けることができないとしています。
(概要)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/seizogyo/downloadfiles/seizogyojigyogaiyo.pdf
(ガイドライン)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/seizogyo/downloadfiles/R5.6_seizougyoguideline.pdf
→ガイドライン13頁に、認定要件として、以下の記載があります。
第4 製造特定活動計画の認定の申請
3 経済産業大臣は、1の認定の申請があった場合において、その製造特定活動計画が次に掲げる要件のいずれにも適合するものであると認めるときは、その認定をするものとする。
(1)特定外国従業員受入企業になろうとする者が次のいずれにも該当するものであること。
⑤特定外国従業員に従事させる業務に従事する相当数の労働者を過去3年間に非自発的に離職させていないこと。
3. 会社都合退職を行ったことで受ける企業側の想定リスク
会社都合退職を行ったことで受ける企業側のリスクとしては、上記の助成金の支給を受ける事ができないことのほか、訴訟トラブルに発展するリスクが一般的に考えられます。訴訟等に発展した場合にかかる解決までに係る期間や解決等に関する調査が行われておりましたので、下記のURLからご参照ください。
・「裁判所における解雇の金銭解決の実態 令和編」
https://www.jil.go.jp/researcheye/bn/078_230531.html
前回のブログでご紹介した「会社都合退職」をすることで要件から外れてしまう助成金では、上記参議院調査室の調査回答にある経済産業調査室からの回答の補助金は入っていませんでした。調べればまだあるかもしれません。個人的には、これらは解雇の間接的な規制になっているのではないかと考えています。(前回では、そのような調査結果はありませんでしたので、あくまでも個人的な意見ですが、、、)
解雇規制とは多くの方に影響があるテーマですので、今回の調査結果が少しでも参考になれば幸いです。
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