2023/3/12
難聴対策とヒアリングフレイル(聴覚機能の低下によるコミュニケーションの問題やQOL低下等を含む身体の衰え)について、市議会の場で質問しました。以下、発言内容を掲載しましたので是非ご覧ください。後日、正確な文言については春日井市議会の会議録に掲載されます。
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【質問者:金沢はるき】
議長のお許しを頂きましたので通告に従い、「難聴対策とヒアリングフレイルについて」を議題とし、質問いたします。
2019年4月、難聴対策推進議員連盟が発足されました。この連盟は、先天性、後天性、加齢性などによる難聴者(児) が、誰一人取り残されず、生き生きとこころ豊かに暮らしやすい社会を実現できるよう、原因別難聴に対しきめ細やかな対策を推進すること等を目的としております。6 月には、新生児期・小児期の緊急性・重要性に鑑み、子供の最善の利益を確保するため、まず「新生児期・小児期に関する難聴対策提言~すべての難聴児に最適な医療・保健・療育・教育を届けるために~」を取りまとめ、政府に対する要望活動が行われました。この議員連盟の事務局長、自由民主党参議院議員で小児科専門医でもある自見はなこ先生は、ご自身のブログにて、この議員連盟での会合の様子や内容の詳細等を広く公開しています。自見先生によると、議員連盟が4月に発足後、認知症との関連が指摘されている高齢者の難聴対策や、騒音性難聴など成人の難聴対策、補聴器などの医療機器にスポットを当てて議連総会を重ね、2019年末までに計12回の総会を開催し、2019年12月には、全世代の難聴対策の指針「Japan Hearing Vision(ジャパン・ヒアリング・ヴィジョン)」を取りまとめました、とあります。このヴィジョンによると、近年、WHO は、新生児期、小児期、成人期、老年期といったライフサイクル別の取組を世界的に発信するなど難聴対策に関する取組を強化しており、こうした世界的な難聴対策の気運の高まりを捉え、我が国においても、聞こえなさ・聞こえにくさのある一人ひとりに応じた適切な支援が提供されるよう、 各ライフサイクル別難聴者(児)支援のあるべき姿の実現を目指し、難 聴対策及びそれを支える基盤づくりに総合的・体系的取組を早急に強化していく必要がある、と述べられています。
“難聴”とはそもそも、簡単にいえば、特定の音が聞こえにくい状態のことを指し、先天的なものから、加齢性、騒音性、伝音性、突発性など、さまざまなタイプに分けられます。治療法は、薬物治療や手術のほか、補聴器で聞こえを補ったりするのが一般的で、日本医師会及び日本補聴器工業会の調査結果によると、患者数は国民全体の11.3%にあたる、約1430万人という数字も発表されています。難聴は認知症との関係で寄与率9%とされており、難聴対策はわが国、そして我が春日井市の認知症対策の柱として位置づけられるべきものと思います。
このような状況の中、最近では、「ヒアリングフレイル」という新しい概念が注目を集めています。「ヒアリングフレイル」とは、聴覚機能の低下によるコミュニケーションの問題やQOL低下等を含む身体の衰え(フレイル)の一つを指し、聴覚機能の低下が認知症診断結果の過小評価に繋がる可能性等をわかりやすく伝えるために、東京大学名誉教授で一般社団法人高齢者社会共創センターのセンター長である秋山弘子先生の協力の下、聴脳科学総合研究所の中石所長により示された新しい概念であります。
周囲とのコミュニケーションが難しくなる、好きだったテレビを急に観なくなる、部屋に引きこもることが増える、相手に悪いと思い聞こえたフリをする、周囲から認知症と勘違いされる、怒りっぽくなった、会話が少なくなった、等の事象について、認知機能の問題ではなく、ヒアリングフレイルが原因であることが指摘されており、中石先生は、加齢に伴う聴力低下の影響にもかかわらず周囲の聴覚への知識不足や関心の薄さから単なる身体の虚弱であるフレイルや認知症傾向と勘違いされるケースが多い、と述べられています。そして、要介護状態になる前に、このヒアリングフレイルを早期発見し適切な治療を行い、ご自身やご家族がいまどの段階での聴こえにくさなのかを把握し、予防や治療ができる、とも話されています。
昨年、令和4年5月19日、「障害者による情報の取得及び利用並びに意思疎通に係る施策の推進に関する法律」(通称:障害者情報アクセシビリティ・コミュニケーション施策推進法)が衆議院本会議で全会一致で可決され成立しました。この法律は、超党派の「障害児者の情報コミュニケーション推進に関する議員連盟で」検討されていたもので、議員立法として厚生労働委員長から参議院に議案が提出されていました。第一条の目的では、全ての障害者があらゆる分野の活動に参加するためには情報の十分な取得利用・円滑な意思疎通が極めて重要であり、そのための施策を総合的に推進し共生社会の実現に資する旨の記載があります。また、第11条の基本的施策では、機器・サービスの開発提供への助成、規格の標準化、障害者・介助者への情報提供・入手支援、の文言が明記されています。様々な障害の方々の情報を得る権利を明確化し、情報アクセシビリティの観点から支援を受けるための法的根拠が示されたものと解釈できます。
私は、難聴対策やヒアリングフレイル対策について、人生100年時代といわれる中、全ての世代が難聴により生きづらさを感じることなく元気に活躍し続けられる社会、そしてそれを支える社会基盤が、今後必要不可欠であると考えていますが、本市の基本的なお考えについて伺い、壇上からの質問といたします。
【回答者:健康福祉部長】
難聴には、先天性や加齢性のほか、突発性や騒音性によるものなど、様々な原因から発症するため、個々の特徴や症状等に配慮しながら、新生児から高齢期までのそれぞれのステージに応じた対応が大切であると考えております。
また、ヒアリングフレイルは、聴覚機能の衰えに着目した新たな概念として、今後、高齢社会が進展し、加齢等で心身が衰える方が増加するなかで、オーラルフレイルなどとともに、フレイル予防の重要な分野の一つに位置づけられていくものと認識しております。
難聴やヒアリングフレイルを抱える方が、日常生活において円滑なコミュニケーションを図り、安心して元気に活躍していくためには、必要な障がい福祉サービスが的確に受けられるとともに、家庭や周囲の方々が、聴覚に関する正しい知識を持ち、適切な配慮や支援を行うことができる基盤を社会全体で支えていくことが必要であります。
【質問者:金沢はるき】
ご回答いただきありがとうございました。
難聴対策やヒアリングフレイル対策について、他市の状況を調べますと、既に実施をされている事業やモデルがいくつかございます。例えば、東京都豊島区では、令和3年7月1日より区内在住・在勤の65歳以上の高齢者を対象に、「みんなの聴脳力チェック」アプリを活用した、ヒアリングフレイルチェックを無料で行い、豊島区医師会と連携し、アプリの結果で語音聴取率60%未満の方には耳鼻咽喉科を案内しています。また、高齢者が安心して補聴器を購入できるモデル事業として、「補聴器相談医」を受診して「認定補聴器技能者」のいる店舗で購入した場合に補助金が給付される東京都の港区のモデル「高齢者補聴器購入費助成事業」が全国に先駆けてスタートしています。埼玉県入間市は、聴こえの大切さを伝えていくとともに、誰もが聴こえやすい社会作りを目指すNPO法人 日本ユニバーサル・サウンドデザイン協会との間で、高齢者を対象とするヒアリングフレイル予防の推進を図るため、専用のアプリを活用した「ヒアリングフレイルチェックに関すること」と、高齢者の聞こえの正しい理解を促す「ヒアリングフレイル予防に関すること」について協定が締結されました。締結後、令和3年4月より来庁者に安全で快適な窓口を目指して、ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社が開発した対話支援スピーカー「comuoon®」の本格運用を開始し、令和3年度32台、令和4年度8台を導入し、市民が多く来訪する窓口に設置されています。声量を大きくすることなく聴こえ方を改善できる「comuoon®」は、マスクやアクリル板越しで会話が聞こえづらい場面で活用されています。山形市では、山形大学医学部耳鼻咽喉・頭頚部外科学講座、山形市医師会、山形県言語聴覚士会、日本補聴器販売店協会、ユニバーサル・サウンドデザイン株式会社の医・産・学・官が連携し、普及啓発、アプリによる早期発見、補聴器相談医による診察や補聴器購入支援等の早期対応、補聴器相談医や認定補聴器専門店によるフォローアップ、データ分析までの一連の事業をパッケージ化し、令和4年12月より「山形市聴こえくっきり事業」を開始しています。
春日井市でも、何らかの方策がとられること期待いたしますが、私は、聞こえにくさを感じる方が、難聴であることをまずは自覚し、例えば、市がその方に医療機関を紹介したり、受診を促すことで、早期発見・早期治療をしていただくことが大事であると思います。そのための、聴力を判定するアプリの活用についての考えをお伺いいたします。
【回答者:健康福祉部長】
聴力を判定するアプリにつきましては、スマートフォンやタブレット端末で、誰もが気軽にセルフチェックにより医療機関の受信の目安がわかることから、難聴対策やヒアリングフレイルの予防に、有効な手段の一つであると考えております。
本市としましては、こうしたアプリの活用や存在について、他の自治体の事例も参考にしながら、老人クラブ等へのチラシの配布や、公共施設等で使用できる端末を設置するなど、調査研究を進めてまいります。
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ホーム>政党・政治家>金沢 はるき (カナザワ ハルキ)>一般質問「難聴対策とヒアリングフレイルについて」2023.3.9