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室達 康宏 ブログ

サムライ外交官 外国人初・世界最古のレスリング参戦報告 (外務省員の声①)

2019/2/23

https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/page3_000296.html

在スーダン大使館 室達やすひろ

 ヌバ族伝統の太鼓が鳴り響き,独特の歌と踊り,興奮したスーダン人の歓声・叫び声,盛り上げるTV局のアナウンス,そして大使館の同僚が見守る中,私は,外国人として初めてスーダン・レスリングの土俵(リング)に降り立った。砂で覆われた土俵の感覚は決闘を思わせる。リング入りした途端,それまでの緊張と不安がどこかに消え,戦いを前にして闘志がメラメラわき上がってきたから不思議である。リング入りと同時に「エイヤッ!」と背負い投げの型を二発披露,途端にスーダン人の大歓声とアナウンサーの絶叫が響く。私のスーダン・レスリングのデビュー戦はこうして始まった。

 これまでスーダン・レスリングは二度戦った。一戦目は,飛び入り参戦だった。スーダン側も国のプライドがかかっており,日本人に負けるわけにはいかないと思ったのだろうが,スーダン・レスリング協会は何を勘違いしたのか,何とデスクワークの外交官に対してスーダンの有名なレスラーをぶつけてきた。学生(中学)時代の得意技の両足タックルを試みたが,全く懐に入らせてもらえず,結果は振り回されたあげく見事に投げ飛ばされて一本負け。

  • 「日本人ムロのリターン・マッチ」大使館員お手製のポスター

 二戦目は大使館が協力したスーダン・レスリング選手権の開会式で行われた「日・スーダン親善交流試合」。ここでは私と同じぐらいの体重のスーダン人レスラーと戦い,見事に善戦した。攻防の末,絶妙のタイミングでうまく片足タックルで懐に入ったが,残念ながらその後,足をとられて返され,おしりが土俵についたとの事で私の負け。ルールの違いに泣かされたが,しっかり練習して今度は「歴史的参加」に加え,スーダン・レスリングで「初勝利」した外国人を目指したい。2回とも負けてしまったが,スーダン人は負けた私を土俵上で肩の上に担ぎ,勝者のように称えた。これこそがスーダン人のホスピタリティである。

 同開会式典では堀江駐スーダン大使が日・スーダン文化スポーツ交流の重要性についてスピーチし,大使杯とレスリング・ユニフォームを寄贈した。この式典と私の親善試合はスーダン・メディアで「サムライ外交官 ヌバ山地の人々とレスリング」と題して大きく取り上げられることになった。ちなみに,私の試合の模様はYou Tubeにて視聴(You Tubeのページに入り,murotatsuで検索)できるので,ご覧頂きたい。

  • 開会式典でのスピーチ

  • 出場チームを称える堀江大使

 私の参戦は,世界で最も古いレスリングの一つであるスーダン(ヌバ)・レスリングへの外国人,日本人,そして外交官として初めての参加であり画期的な出来事であった。その長い歴史を語る前に,スーダン・レスリングのルールについて説明しておこう。ルールはアマチュア・レスリングのフリースタイルと似ているが,もっと単純である。階級は体重別に軽・中・重量級の3階級のみ, 試合は丸いリング(土俵)の上,(土俵は砂で覆われており,海岸のビーチの感触に近い)で行われ ,5分一本勝負(ポイント制はなし)で決着がつかない場合は引き分け。打撃技・関節技・絞め技は禁止であるが足払いはOK。相手の肩・背中・腰の一部でも地面につけた時点で勝ちである。

 さて,そのスーダンであるが,アフリカに位置しながらアラブ・イスラム社会の要素が強く,特に南スーダン独立後そうした傾向が強まっている。その実,多民族・多文化社会でもあり,地方地方に様々な文化や言語が存在する。2011年7月に独立した南スーダンと国境を接するスーダン南部の南コルドファン州にはヌバ山地と呼ばれる山脈が連なり,同地に住む人々はヌバ族と総称され長年独自の文化を形成し,特に弓などを利用した闘技やレスリングで知られている。

 ナショナル・ジオグラフィックによるとヌバ族のレスリングは3,000年以上も人々が受け継いできた古い歴史を持つスポーツとされている。紀元前1410年の古代エジプトに最古のヌビア人(現在ではエジプトの南部とスーダンの北部一帯に居住する)レスラーの肖像が描かれている。諸説はあるが,これらの壁画を調べた考古学者や人類学者,歴史家は,スーダンの諸少数民族と比較した結果,南コルドファン州のヌバ族が古代ヌビア人レスラーの子孫とみているようだ。ヌバ族のレスリングは古代ギリシャのそれより何百年も歴史が古く,何千年もの間ほぼ変わっていない,といわれる。また, ヌバ族にとってレスリングは単なるスポーツではなく,社会的,宗教的な意味を持っており,生活に欠かせない一部となっている。

  • スポーツ大臣と握手(左は堀江駐スーダン大使)

 スーダンでは南北スーダンの内戦やダルフール紛争・難民など争いのイメージが強いが,ヌバ山地を含む南コルドファン州では長年の内戦やその周辺下の低開発の状況に置かれた影響で,多くのヌバ族の人々が首都ハルツームに勉強や就学,よりよい生活を求めて移り住み,大きなコミュニティーを形成するようなった。 ヌバ族の人々はヌバ山地において古から現在に至るまでレスリングを続けており,様々な地元の大会が開催されているが,90年代に入り,ハルツームのヌバ族コミュニティーでもレスリングが開始された。当時は本当の草レスリングであり,スタジアム等は整備されていなかったが, 近年になり, スーダン政府(ハルツーム州)はヌバ族のレスリングをスーダンの貴重な文化の一つとして支援を開始し,同州内にいくつかレスリング・スタジアムを整備した。現在では,金曜日を含め週2~3回,多くの観客を集めてレスリングの試合が行われており,国営放送スポーツ・チャンネルによって頻繁に全国放送されている。私が参加したのもハルツームで開催されたレスリング大会であるが,近い将来,本場のヌバ山地でヌバ族とレスリングをしてみたいものである。

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