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おくざわ 高広 ブログ

罰則法案に国会議員が反対しないのはなぜ?新型コロナに関する法改正が閣議決定…(課題編)

2021/1/23

こんにちは、

東京都議会議員(町田市選出)

無所属 東京みらい おくざわ高広です。

 

罰則付きの新型コロナに関する法改正が閣議決定されたことを受け、前回はその内容を解説しました。

※読み進める前に【解説編】をお読みください。

今回は、その課題について整理していきたいと思います。

1.感染拡大はおさまるのか

今回の法改正によって、現在も出されている要請について強制力がもたらされるのは、①飲食店等の時短要請と②調査、入院・宿泊療養の2点です。

①飲食店等への時短要請

罰則が加わることで、時短要請に応じる事業者が増える可能性はあると思います。しかし、現在も営業を続けている事業者の多くが、何らかの「従えない事情」を抱えています。協力金ではお店を守ることができず、従業員や取引先を守るために、という声も聞こえてきます。

東京都では(やっと…)大企業も協力金の対象となりましたが、地域や店舗の大きさ、営業形態や時間が考慮されていない現状では、「従えない事情」が解決されたとはいえず、北風ではなく太陽(罰則ではなく支援)が重要なのではないかと考えるものです。

また、東京都の調査では、95%が時短要請に従っているということでしたが、残り5%が従ったからといって感染がおさまるとは思えません。もちろん他の対策を講じた場合にも特措法が影響を持つわけですが、現時点で飲食店等の時短要請以外の対策は見えてこないのが国や都の実情です。

 

②調査、入院・宿泊療養について

感染症対策の基本は、「検査」「追跡(調査)」「隔離(療養)」「治療(入院)」とされています。東京都では、昨年「検査」に対する罰則を設ける条例、福岡県では「調査」拒否への罰則を設ける条例が議論になりました(結果的には提案されず)。過去の記事はこちら

この時に東京都に確認したところ、「検査」を拒否する事例はほとんどなく、罰則を設ける必要は感じていない。一方で、「調査」は難航していて、何らかの強制力が欲しいとのことでした。

その意味では、「調査」に強制力をもたせること自体には感染拡大をおさえる効果があると思われます。しかし、日本医学会連合の声明では、これを誤りとしています。

「罰則によって恐怖や不安、差別を引き起こし、対策への協力が得られなくなる」

「罰則を恐れて検査を受けなかったり、検査結果を隠したりして対策が困難になる」

周囲の目がこわい、迷惑をかけたくないといった考えを強くもつ日本人にとって、罰則が引き起こす負の影響をどう見ていくのかは重要な観点です。

感染症法の前文には、過去にハンセン病患者などに対する著しい差別が生じてしまった教訓から「感染症の患者等の人権を尊重しつつ、これらの者に対する良質かつ適切な医療の提供を確保し、感染症に迅速かつ適確に対応する」とされており、人ではなく、感染症そのものに対する取組を規定していると考えられます。

「罰則」という手段が、新型コロナと戦う私たちにとって最善の策なのか、改めて問い直す必要があると考える次第です。

参考)Buzz Feed News

「罰則は、効果がないどころか公衆衛生を破壊する」 東大の公衆衛生教授が感染症法の改正に反対する理由

 

2.医療は守られるのか

緊急事態宣言を出す基準として、医療提供体制は一つの基準になっています。つまり、新型コロナ患者を受け入れるだけの医療提供体制(病床、医療従事者、機器など)があるのか、また、それを提供しても他の重大な医療行為が制限されないかという視点です。

東京都においては、医療がひっ迫しているとして、特に重症者用のベッドが埋まりつつあることや都立病院から転院せざるをえない方々がいることが報道されています。この状況を改善することは非常に重要です。

陽性と判明すると、それぞれの病状や生活環境に応じて自宅療養・宿泊療養・入院のいずれかに調整されるわけですが、これらに応じない場合に入院勧告がされ、さらに拒否した場合に罰則という流れになります。

ここで大切なのは、本来入院を必要としない病状の人が療養に応じなかった場合には入院させる方向になってしまうということです。たしかに療養に従わずに外出すると感染拡大のおそれがあるものの、こうした方々を入院させていくことはかえって医療の負担を大きくする可能性すらあるのではないでしょうか。

※ちなみに、意図的に感染拡大をさせようと行動した場合、傷害罪や威力業務妨害などの別の法律で制約を加えることは可能です。

なお、東京都では入院療養調整業務がボトルネックになっており、待機中の方が数多く存在します。東京都が果たすべき役割を果たせず、従わなかった人への罰則という考え方にも違和感があります。

 

3.今は「有事」なのか

「緊急事態宣言」と聞くと、戦時中のような恐ろしさを感じるというご意見も伺いました。果たして、今は強い制約を必要にする「有事」といえるのでしょうか。現在の緊急事態宣言もそうですが、明確な基準があるわけでもなく、宣言を出すにあたって国会が承認するようなブレーキ機能もありません

私は「有事」にあっては罰則等の強制力を否定するものではありません。むしろ昨春の緊急事態宣言時には、知事の権限強化と強制力強化を求めていました。一方で、この間の東京都の対策について、都議会に諮らずに執行する専決処分が繰り返され、なし崩し的に物事が決まっていくのを見てきました。

「有事」を判断するにあたっては、責任の所在をはっきりとさせ、明確な基準を設けることとともにブレーキ機能を制度上位置づけることが重要だと考える次第です。

 

4.補償や救済が定められていない

これまでも幾度も議論になってきましたが、特措法には補償の基準が示されていません。営業時間短縮などの要請に従えば、当然その負の影響に対する支援(補償)がなければ従いようがありません

今回の法改正で緊急事態措置における補償の文言は入りましたが、その基準や内容は示されていません。またまん延等重大事態措置については補償に関して触れられていません。

また、事業者への要請や調査への協力について、正当な理由があれば拒否できることになっていますが、正当な理由を誰が判断するのか決まっていません。例えば店舗の公表がなされた後に正当な理由だったと認められた場合の救済、調査に協力したがゆえに職を失ってしまったという場合の相談や救済などが取り決められていない状況にも課題が残ります。

 

5.なぜ今なのか

特措法の改正については、昨春の緊急事態宣言の時からずっと言われながら、国会で議論されずにきました。本来、国民の自由を制約するような法改正については、冷静な場面で議論すべきものであり、感染拡大が今よりもおさまっていた夏から秋にかけて、そのチャンスはあったわけです。

確かに、感染拡大がおさまっている中で罰則の議論をすれば、世論は反対に回り支持率が下がる可能性は高いでしょう。しかし、今の状況を生んだのは、これまで議論を先送りにしてきたからに他なりません

問題の火種が見えている段階で、その解決を図るのが政治の役割であり、問題が明らかになってから解決を図るのは人気取りのPRでしかないと私は考えます。この法改正が効力を発揮するのは早くて2月中旬です。つまり緊急事態宣言が終了した後という想定です。

緊急事態宣言の効果が得られなかったら、国民の自由を制約するというのが、今の政府や国会議員の大半が考えていることだということです。国民が求めるべきは、罰則ではなく、効果的な対策であると私は考えます。

 

6.差別を助長することはないか

今回の法改正においても、差別の防止に係る国及び地方公共団体の責務として「何人も差別的取扱い等を受けることのないようにするため、実態の把握、相談支援、広報その他の啓発活動を行う」とされていますし、あらゆる場面で差別をやめようと声掛けが行われています。

では、差別はなくなったでしょうか。残念ながら、答えはNOです。

差別や偏見は、無知や無理解からくるともいわれます。それは、自分の理解できない未知のものへの不安を、相手を過度に遠ざけることで安心に変えようという無意識の行動と考えられます。

新型コロナはまさに未知の、見えない敵です。

どれだけ気をつけていても感染してしまう可能性がある「ウイルス」と戦うべきところを、罰則を受けるような行動をとった「人」に攻撃の対象が向かってしまうことがあってはなりません。いわゆる自粛警察がうまれる背景、自宅療養中に周囲に迷惑をかけたと自殺した方すらいる現状を私は重くとらえるべきだと考えています。少なくとも相談窓口の開設や救済措置の取り決めなど十分な対策が講じられるべきです。

 

7.都道府県や区市町村、保健所等の業務が増大

ここまで読んではっとした方もいるかもしれませんが、今回の法改正によってとてつもない量の業務が都道府県や区市町村、保健所等に押し寄せます

今ですら、ギリギリの業務量をこなしている職員に更なる負担を強いることは果たして正しいのでしょうか。少なくとも人員強化が行えるように予算計上するなどの対策が必要と考えます。

 

ここまで書きますと、じゃあお前はどうやって解決しようとしているのだという言葉が聞こえてきます。

次回【解決編】でお伝えしていきます。

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著者

おくざわ 高広

おくざわ 高広

選挙 東京都議会議員選挙 (2021/06/25) - 票
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肩書 東京都議会議員(町田市選出)・無所属 東京みらい幹事長
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