2024/3/24
国連で2006年に障害者権利条約を、日本は2014年に批准しました。
2022年8月に障害者権利員会によって、日本においてこの条約がどのように推進されているのかを話し合う「建設的対話」が2日間に渡って実施されました。
障害者権利条約(英語)全文はこちら
国連障害者権委員会と日本政府の建設的対話(2日目)のアーカイブ
2日目は、日本における「教育」の項目についてで、委員からは「なぜ分離した環境での特別支援教育をしているのか」といった質問が相次いでました。
文科省の説明は以下のような感じでした。
●本人と保護者の意思に基づき、通う学校が決まる。
●合理的配慮によって特別支援学校を選ぶ当事者が多い。特別支援学校に通う児童生徒を全面的に減らすことは困難。
●特別支援学校を選んでいる9割が、知的障害のある子ども。
●知的障害児にとっては、健常児と同じ学習内容を理解することはだんだん困難になる。発達に応じた教育を行う特別支援学校では、知的障害児も積極的に発言しリーダーシップを発揮することができる、こういった理由から選ばれている。
(この説明は、障害のある当事者の保護者からすると事実とは違っていると感じるところがありました)
建設的対話を終えて、2022年9月9日に、国連の障害者権利委員会から、日本政府に対して「総括所見」が示されました。
障害者権利委員会の日本に対する総括所見全文はこちら
障害者権利委員会は以下のことを懸念しています:
(a)「障害の医学モデル」に基づくアセスメントにより、障がいのある子供達に対して、永続的に、分離した特別支援教育を続けていること。障がいのある子供達が、通常の環境における教育に参加することが、不可能になっていること。特に、知的障害や精神障害がある、またはその両方がある子供達、より集中的な支援を必要とする子供達が、通常の環境における教育に参加することが不可能となっていること。
また、通常の学校の中に、特別支援学級が存在していること。
(b)障害のある子供達が入学するのを許可出来るほどの準備が出来ていない、という学校側の認識や、実際に学校側の準備が不足していることが原因で、通常の学校が、障害のある子供達の入学を拒否していること。
文部科学省が2022年に「特別支援学級に在籍している児童生徒が、通常の学級において授業時間の半分以上を過ごしてはならない」とした通知を発出したこと。
令和4年4月27日
特別支援学級及び通級による指導の適切な運用について(通知)
文 部 科 学 省 初 等 中 等 教 育 局 長
通知全文はこちら
https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/4475/00431549/01_monka_0494.pdf
(c) 障害のある生徒に対する合理的配慮の提供が不十分であること。
(d) 通常の教育の教員らの(特別なニーズに対応する)スキル不足と、インクルーシブ教育に対する否定的な姿勢。
(e) 聾(ろう)の子供達のための手話教育や、盲聾の子供達のためのインクルーシブ教育というような、代替的・補強的なコミュニケーションや情報提供をする姿勢や手段が、通常の学校に不足していること。
(f) 大学の入験や学習プロセスにおける障害のある生徒にとっての障壁を無くすというような、障害のある生徒が高等教育を受けるための障壁を無くすための日本政府の総合的で包括的な政策が、欠如していること。
障害者を包容する教育(インクルーシブ教育)に対する権利に関する一般的意見第4号(2016年)及び持続可能な開発目標のターゲット4.5及び4(a)を想起して、障害者権利委員会は以下を締約国(日本)に要請する:
(a) 分離した特別支援教育をやめ、日本政府による質の高いインクルーシブ教育のアクションプラン(行動計画)を導入することを目的として、「障害のある子どもたちが、インクルーシブ教育を受ける権利がある」ことを、日本政府の教育政策、教育に関する法律、行政的な取り決めの中で、定めること。全ての障害のある児童生徒に対して、あらゆる教育段階において、合理的な配慮が提供され、個別化された支援が提供されることを保障するために、国家的なアクションプラン(行動計画)では、明確な達成目標を掲げ、その目標達成のための期限を定め、十分な予算を措置すること。
(b) 全ての障害のある子供達に、通常の学校に通えることを保障すること。普通学校は障害のある生徒を拒否することは許されないという「非拒否」の条項と政策を策定すること。文科省の特別支援学級に関する通知を撤回すること。
(c) 全ての障害のある子供達に対して、個々の教育的に必要としている支援を満たすための合理的配慮を提供することを保障し、インクルーシブ教育を確かなものにすること。
(d) 通常の学級の教員と、インクルーシブ教育に関わる職員に対する研修を確実に実施し、障害の人権モデルの認知や意識を向上させる。
(e)代替的・補強的なコミュニケーションの姿勢と手法を、通常の教育環境において保障すること。点字、「イージーリード」、聾(ろう)の子供達のための手話教育、ろう文化をインクルーシブな教育環境の中で広め、そして盲聾の子供達がインクルーシブ教育を受けられることを確実にすること。
(f) 大学入試や学習プロセスを含め、障害のある生徒が、高等教育を受ける際の障壁を無くすために、日本政府による包括的な政策を構築すること。
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ホーム>政党・政治家>龍円 あいり (リュウエン アイリ)>障害者権利委員会からの勧告「分離した特別教育やめ、質の高いインクルーシブ教育へ」