2022/2/7
(息子のニコと記念写真を撮ろうとしたのですが、ふざけてしまってこれ以上いい写真が撮れませんでした・・・)
この堅苦しげなタイトルから想像だにしませんでしが、とても読みやすくて、そして何度も涙が出てきました。
読み終わって「元気でた!がんばろ!!」という気持ちになっています☺️
ブログかのような親しみやすく理解しやすい文章で、家事や育児の合間にでもスラスラと読める内容です。
私は普段は本を読む時間がないのでここ数年は読書を諦めているのですが、(仕事のための資料や参考としたい本は、必要な情報のところだけを斜め読みです)この本は日曜の朝に息子より少し早起きしたので読み始めて、朝ごはんの用意をしながらも、読むことができました。
「普通のあなた」が社会のルールを変える方法
この副題が、まさにこの本の内容です。政治家や官僚、自治体の職員でなくても、著名人や大金持ちでなくても、「社会を変えたい」理由がある「普通のあなた」が、社会を変えるための方法が書いてある本でした。
そして拝読しての感想は、大げさでもなく「うん、つまり、そういうこと!!」と、すごく納得しました。
私が思わず涙したのは、この本の中に登場する「普通のあなた」たちに、私もこの4年半の都議会議員生活の中で、たくさん出会ってきたからでした。本当にたくさんの方のお顔が想い浮かんできました。これまで政治の世界とは無縁だったといういろんな方々が、抱えている社会課題の解決にために声をあげ立ち上がって行動なさったことで、どんどんと人がそこに巻き込まれていって、最終的に東京都が動いたのを何度も見てきました。一人一人のできることは限りがあるけれど、でも「声を上げる」っていう最初のアクションが、とても重要だと感じています。
そして、都議会議員に初めてチャレンジした4年半前の私も「普通のわたし」だったからより一層この本に共感したのだと思います。政治家になるなんて頭をよぎったこともない人生を歩んでいましたが、「息子が生きていく社会をインクルーシブなものにしたい」とまずブログを書き始めたところから、なぜかここに今いるんですもの。
私がアメリカからダウン症のある息子を連れて帰国したのは2015年でしたが、駒崎弘樹さんのフローレンスは、スペシャルニーズ(障がい)のあるお子さんの保護者の間ではすでに有名な存在で、「いつかお会いしてみたい」と思っておりました。
都議会議員に初当選したのが2017年7月で、その2か月後の9月には、「障害児保育園ヘレン」を視察に伺わせていただきました。
今思うと、やる気だけは超満々でしたが、まだ議員として駆け出したばかりで、アメリカの制度は勉強してきたものの日本のことはからっきし分かっていない私に、超絶にわかりやすく「医療的ケア児」のこと、そして政策面で必要な取り組みについて、丁寧に話してくださいました。
この日以来、駒崎さんは私にとって医療的ケア児政策の師匠と、心の中で呼ばせていただいております。
ちなみに、この日に取ったメモを読み起こすと、①医療的ケア児のための判定基準が必要、②放課後等デイサービスでの医療的ケア児のための都加算の創設を、③都立特別支援学校のバスに看護師を配備、④特別支援学校の看護師のガイドラインを改定して保護者の付き添いをなくす、などのお話を頂いておりました。
前者の2項目は国が動きましたが、後者は都教委が動いていて、結果としてすべてが実現していました!どれも簡単なことじゃないので、あらためて「政策起業家・駒崎弘樹」のすごさを感じました。
この本では、とても光栄なことのですが、人工呼吸器を利用する医療的ケアのある児童生徒が、保護者の付き添いなく都立特別支援学校に通えるように取り組んだ内容をご紹介いただきました。自分が本の中に登場するなんて、生まれて初めての経験で、そのページが来た時にはドキドキしました。
「普通のあなた」萌々華ちゃんとの出会い
この本でも触れてくださっておりますが、私がこの政策を取り組むきっかけは、「普通のあなた」の萌々華ちゃんとの出会いでした。お会いしたのは2018年6月1日で、当時の萌々華ちゃんは小学4年生でした。(目黒区の伊藤ゆう都議からのご紹介いただきました)
とても明るく社交的な萌々華ちゃんは、とにかく好奇心旺盛で「学校でみんなと一緒に学びたい!!」という気持ちでいっぱいのお子さんです。萌々華ちゃんは人工呼吸器は使用しているものの、保護者が隣にいらっしゃらなくても学校に通える状況でした。しかし、当時の都教委は「人工呼吸器を利用する児童生徒は一律に保護者の付き添いが必要」というルールになっていました。萌々華ちゃんはご両親が共働きで学校に付き添えないため、本人や保護者の希望は叶わず、「訪問教育」で自宅で教育を受けていました。「学校に行きたい」という萌々華ちゃんに「親が付き添えないから学校には行けないよ」というのは、あまりに理不尽なことでした。
私自身、スペシャルニーズのある子を育てているシングルマザーです。
だからスペシャルニーズのあるお子さんの政策について考える時に、一度自分に置き換えて想像してみることにしているのですが、「人工呼吸器を利用しているお子さんの親だったら、仕事を辞めて小・中・高12年間、登校から下校までずっと付き添ってください。付き添えないんだったら、学校に来ないでください」なんて言われたら完全に路頭に迷うことは簡単に想像できました。
子どもの医療費や療育費そして長きに渡って子どもの生活を支える可能性もあることから、親にとって仕事を続けることは重要なことです。両親ともに必要であれば仕事を辞めるべきではありません。特に私のようなひとり親だったら、仕事を辞めた途端に生活が困窮し、住む場所も、食べるものにも困ります。
「そう。働かないとならないから付き添えないんですね。だったら学校に来ないでください。訪問教育で自宅で勉強してください」って言われても、仕事してるあいだ家に一人でいる子どもは誰が面倒みればいいのでしょうか?毎日、ベビシッターや看護師に依頼する金銭的余裕があるひとり親なんて、ほとんどいないと思います。
もしも、私だったとしたら、完全に生活困窮に追い込まれる状況なのです。しかもそれが行政によって、強制的に生活困窮に状況に追い込まれるって、理不尽すぎると思いました。医療的ケアのあるお子さんは、スペシャルニーズ(障がい)児の中でも特に支援を必要としているはずなのに、逆に、行政が崖から突き落とすようなことをしているとは!
萌々華ちゃんの状況を知った時、「この現代の日本に、こんなことが起きてるって、信じられない」と、本当にショックでした。
都教委でも課題認識はあるもののすぐの改善は難しい状況
都教委の担当者の皆さんと話していると、「そのままでいい」と考えておられるわけではなく、人工呼吸器のお子さんが保護者の付き添いなく学校で過ごせるのかどうかを検証する3年間のモデル事業を実施しようとしておりました。
当時は「人工呼吸器以外の医療的ケア児」の親の付き添いを無くすための、医療的ケア児専用バスが運行を始めようとしているところでしたので、人工呼吸器使用のお子さんたちはその後に回されている状況でした。モデル事業の後に、そこから本格実施となると、4-5年後になりかねません。
私のような40代にとっての4−5年は「待てる年月」なのかもしれません。しかし子どもたちにとっては一日一日が大切で、一年一年に大きな成長があって、5年もしたら萌々華ちゃんが義務教育を卒業しちゃいます。
「ごめん、萌々華ちゃんの時代は無理みたい。残念だけど、残りの義務教育も自宅からの訪問教育で頑張って」なんてとてもじゃないけど言えません。萌々華ちゃんの小学時代も中学時代も、萌々華ちゃんにとっては一度きりなのです。
本当にもどかしさが募りました。
せめて「オリヒメ」で教室とつないでみましたが・・・
どうしてもモデル実施が終わるまでルールを変えられないなら、せめてOrihimeを利用して、学校の授業に出させていただけないかという話もしました。ありがたいことに、こちらはすぐに都教委で実施してくださいました。しかし蓋を開けてみると、「通学籍と訪問籍とだとカリキュラムが違うから」という理由で、オリヒメの活用は本当に限定的でした。カリキュラムなんてどうでもいいじゃん。一度きりの学校生活なんだから「一緒に学ぶ」を経験させてほしいと思いましたが、そこは都教委の判断で柔軟に変えられることではなく、国の方の学習指導要領という大きな存在があったため、簡単ではないことのようでした。
本当にもどかしい。
萌々華ちゃんが小池都知事に「学校に通いたい」と訴える
(写真:東京新聞の運営する東京すくすく記事より)
そんな中、翌年の2019年8月1日に小池百合子都知事に、萌々華ちゃんたち人工呼吸器を使用する子どもと保護者らと会っていただく機会をつくることができました。
萌々華ちゃんは
「学校に行ってお友達と同じように勉強したり遊んだりしたいです。私を学校に行かせてください」
と、小池都知事に手紙を読み上げました。
萌々華ちゃんの声が、小池都知事、そして藤田教育長の心を動かしたと感じています。
駒崎さんの本に書いてあった「窓が開く瞬間がある」と言いますが、これこそ萌々華ちゃんたちが窓を開けた瞬間だったと思います。
都民ファーストの会文教委員会(当時)のメンバーでも、皆様からの要望をヒアリングさせていただきました。
移動すること自体が大変ですのに、こうやって来てくださってありがたかったです。
インクルーシブ教育の最先端「箕面市」の小学校を視察
同時に都議会で私が所属する都民ファーストの会の文教委員会に所属する議員の皆様と、この課題の解決方法についてもっと知ろうということで、日本で最先端のインクルーシブ教育を実践している箕面市に視察に行きました。(2019年8月末)
(箕面市の小学校の前で。当時の文教委員会のメンバーの福島都議・田の上都議・内山都議・鳥居都議も一緒です)
フルインクルーシブ教育が普通に実現している状況に心から驚きました!!そして感動のあまり目頭が熱くなりました。
箕面市では人工呼吸器利用のお子さんが通常の学級で学んでいた
人工呼吸器を利用している児童が、看護師が付き添いのもと、完全に通常の学級の中で学んでいました。通学から下校まで保護者の付き添いはゼロでした。
そのスキームなどをしっかりと学ばさせていただきました。
箕面市のインクルーシブ教育視察のブログはこちらです。https://ameblo.jp/airi-ryuen/entry-12568241266.html
東京都議会で都知事が、人工呼吸器の児童生徒が保護者の付き添いなしで通学できるようにすると答弁
この視察のあと、2019年9月9日の都議会本会議で、人工呼吸器のお子さんが保護者の付き添いなく通学できるべきだという代表質問に対して、都知事から今後人工呼吸器のお子さんも保護者の付き添いなく通えるようにしていく旨の発言がありました。
「普通のあなた」萌々華ちゃんのあげた声が、とうとう道をひらいたのです!
本当だったら萌々華ちゃんのようなお子さんがこんなに頑張らなくても良い状況だったら良かったのにと思います。
それでも、萌々華ちゃんが声をあげてくださったことが、変化をうみました。
医療的ケア児の課題はまだまだいっぱい
とはいえ、全然一件落着ではなくて、医療的ケア児に関わる課題はまだまだ山積しています。
バスに同乗する看護師が足りず、まだ保護者の付き添いに頼っている部分が多々あります。人工呼吸器のお子さんのケアが、保護者から学校への引き継ぎに時間がかかっているケースもあります。担任の先生が変わるとまた引き継ぎ作業のために、保護者が付き添う必要もあります。保護者の代わりに看護師を代理人とすることはできるものの、その看護師へ依頼する料金が莫大で、家庭での負担が難しいこともあります。なによりも保護者が就労を継続するには、学校だけではなく、放課後の居場所の確保も必要で、少しずつですが支援策が始まったもののまだ十分ではありません。
まだまだ通過点ですが、こういう政策を進めるにあたっても、たくさんの「普通のあなた」である保護者やお子さんたちとともに動いていきます。
そんなわけで、この本の中でご紹介いただいたのはほんの1例です。
「変えたいと思っていることがある」「けど何から手をつけたらいいのかわからない」という方には、お勧めできる本です。たくさんの経験の中から、参考になることがあるかと思います。
私が政治家になる前、行政というのは、こちらが言わなくても全部調べてくれて最良のものを提供しているものだと思い込んでいました。しかし行政もまた人が働いていらっしゃるわけで、全部を完璧に調べ尽くして、最良のものがいつも提供されるとは限りません。特にマイノリティの場合は、見えにくいニーズもあります。
でも、確実に言えるのは、行政の方々は「最良のサービスを提供したい」と日々熱心に働いておられるということです。私は東京都の職員の皆様とお話をさせていただく機会が多いですが、とても誠実で真面目で熱心だという印象があります。行政なので民間のような論理では動けないので悩ましい時もありますが、声を伝えていけば、少なくともお話をちゃんと聞いてくださり、そこから変わっていくきっかけが生まれることも少なくありません。
だから、声をあげていくこと、動き出してみてくだあることが大きな意義があると感じています。
最初の一歩を踏み出す時に、オススメしたい本だなと思い、今回投稿させていただきました。
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リュウエン アイリ/46歳/女
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