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さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか? 村重 直子著

2020/2/21

著者の村重直子氏は、東京大学医学部卒の内科医。卒後、7年の日米での臨床現場を経て、2005年~2010年の5年間を厚労省で医系技官として勤務された方です。そして退官直後に出版したのがこの本。一見すると厚生労働省の暴露本のようにも見えますが、現在の医療制度に対するしっかりとした問題点の指摘、それに対する改善の提案がされていて、よくぞ批判をおそれず、書いたなあという印象です。

いろいろな現場での生の実体験が紹介されていますが、特筆すべきは、新型インフルエンザ(SARS)の対応で、行政の中で見聞したこと。そこで感じたことは、医系技官(技術官僚)は、国民の健康よりも自分たちの都合を優先しがちこと。それは悪気なく、単に医療現場を知らない、医系技官の独断で進められている。

新型インフルエンザ(SARS)の対応では、過去の事例や通達を参考に、厚労省から医療現場へ通達を乱発し、医療現場を混乱させ、手足を縛ってしまう。本来、未知のものに対し、できるだけ情報を集め、柔軟に対応しなくてはならないのに、逆をやってしまった。水際対策は初期のもので、市中に蔓延が認められれば、すぐに対策を変更しなければならないのに、後手にまわった結果、医療現場を疲弊させてしまった等。これは、まさに2019年末からの新型コロナウイルスの対応と、まったく同じ。約10年前の教訓がまったく活かされていないことに、愕然としました。

筆者の改革案は、まずは厚労省内の組織から始めるべきだというもの。一方、これは人事が絡むだけでに、最もハードルが高いでしょう。しかし「それでもあなたは役人に生命を預けますか?」という問いに対し、やるしかないという答えしか浮かばない。

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本質的な原因は、医系技官とはいっても医師免許を持っているだけで、実際に臨床を経験したことがない、「ペーパードクター」だから。実際に彼らは、医師免許を持っているというだけで、国家1種試験も受験免除(無試験)で厚労省に入省している。その厚労省は、民間のドクターに対する許可権者であり、行政通達を自由に出せる立場(免許取り上げもできるし、医療費のレセプトの支払いも止められる)。そして省内での医療行政を取り仕切っているのが、医系技官。

立ち止まって考えてみると、これは厚労省に限った話ではなく、例えば、原子力行政を担当する原子力規制委員会や原子力安全・保安院の技官は、原子力に関係ない行政官が規制を行う事務方をやっている。農水省でも、農作業をやったことの行政官が、国際会議で日本の主張を行っている。文科省だって、教育現場に出たことがない行政官が、教育政策を立案し、全国に指導している。さらにいえば、これらの行政官は人事ローテーションで、数年でまったく違う部署に転属になってしまい、いちから勉強している。これらを考えると、日本の行政組織、特に霞が関に置いては、実務に就かず、数年の経験しかないペーパードライバー(しかし、先例や文献の調査能力に優れ、穴のない文書作成能力に秀でた、勤勉に長時間勤務に耐えるエリート)が、全国に通達を出しまくっているという実態の、氷山の一角が見えてきた。
 

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