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【公明新聞】土曜特集 水素の活用進めるには

2023/6/24

土曜特集
水素の活用進めるには 

東京工業大学名誉教授 柏木孝夫氏に聞く 

 次世代のエネルギーとして注目される水素に関する技術の開発競争が熱を帯びてきた。日本は6日、世界に先駆けて2017年に策定した「水素基本戦略」を6年ぶりに改定し、普及に向けた取り組みの強化を図る。水素の活用に向けた国内外の動向や課題について、政府の「水素・燃料電池戦略協議会」座長を務める柏木孝夫・東京工業大学名誉教授に聞いた。


■“生産増と価格減”の潮流/再エネの発電安定に貢献

 ――そもそも水素を活用するメリットは。

 柏木孝夫名誉教授 水素は燃やしても温暖化ガスの一つである二酸化炭素(CO2)を排出しない。脱炭素化を進める上で重要なメリットだろう。

 次に、天候によって発電量が変動する太陽光や風力などの再生可能エネルギー(再エネ)の調整機能を担える点だ。長期間の貯蔵が可能な水素の特徴を生かして、再エネが余った際には水を電気分解して水素をためておき、電力が足らない場合には貯蔵した水素で発電できるからだ。また、燃料や原料としても使える利点も挙げられる。

 ――技術開発を巡る日本の取り組みは。

 柏木 水素エネルギー実用化の先駆けは、09年に販売が始まった家庭用燃料電池「エネファーム」だ。都市ガスやLPガスから水素を取り出し、空気中の酸素と化学反応させて自宅で電気とお湯を同時につくり出せる。

 14年には、大手自動車メーカーが世界初となる商用の燃料電池自動車(FCV)を発売するなど、日本はものづくりの分野で先行した。17年に「水素基本戦略」を策定し、水素社会を実現する道筋を世界に初めて打ち出した。

 ――各国が積極的な動きをみせている背景は。

 柏木 16年に発効した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で、産業革命前からの気温上昇を1・5度に抑えるよう求められ、脱炭素に向けた世界の動きが加速した。こうした流れの中で、CO2を排出しない再エネの発電量の安定化にも貢献する水素に注目が集まったことが大きい。

 燃料電池などの、ものづくり分野で日本の先行を許したこともあり、諸外国は水素自体の生産量を増やすことや価格を下げる方向へとかじを切ったとみている。

 ――各国も相次いで国家戦略を策定した。

 柏木 例えば、米国では、製造時に発生するCO2が抑えられたクリーンな水素の生産量を30年までに年間1000万トン、50年までに同5000万トンに増やす目標を掲げた。目標達成に向けて、50兆円を超える投資を行い、水素の製造事業者に10年間の税額控除を行うとしている。

 欧州連合(EU)は、30年より前にロシアからの化石燃料脱却に向け、EU内で年間1000万トンを製造できる体制を構築するとした。中国は、25年に再エネ由来の水素を年間10~20万トンの製造をめざしている。

■運搬船活用で供給網構築/優位な技術へ投資不可欠

 ――水素の普及拡大に向けた課題は。

 柏木 既存燃料より価格が高いことが課題であり、この課題克服への取り組みが急がれている。

 例えば、ドイツでは、水素の製造コストが安いアフリカの国などに再エネ由来の水素を製造する技術を提供し、現地で製造された水素を輸入するプロジェクトを導入した。購入価格と販売価格の差額は、政府が補塡する仕組みを設け、必要な予算も確保している。

 英国でも、再エネ由来の低炭素水素と既存燃料との価格差を支援する制度を準備している。

 ――日本はどうか。

 柏木 水素社会への移行段階では、既存燃料との価格差に着目した支援が必要となる。今回の水素基本戦略には、長期にわたり支援するスキーム(枠組み)の検討が盛り込まれた。

 水素価格の低減に向けた取り組みは二つ考えられる。一つは、国際サプライチェーン(供給網)の構築だ。液化した水素は、ガスに比べて体積が約800分の1となり、運搬効率が良く輸送に適している。

 これまでに、オーストラリアで製造した水素を、世界初の液化水素運搬船で運ぶ大規模海上輸送が成功している。20年度第3次補正予算で計上された2兆円の「グリーンイノベーション基金(GI基金)」を活用して技術開発が進められており、30年以降の商業運航をめざしている。

 もう一つは、水素の地産地消を進めるため、水を電気分解して水素を作る「水電解装置」の性能を上げることだ。世界の需要も高まり続ける見通しで、シェアを獲得する意味でも重要だ。

 ――日本が国際競争を勝ち抜くには。

 柏木 今回の基本戦略では九つの技術が戦略分野に位置付けられた。特に、燃料電池の分野は世界一の特許数を誇る。「技術で勝ってビジネスでも勝つ」ために、官民を挙げた投資による強力な後押しが必要だ。

 日本は技術的な優位を生かして、太陽光や風力、水素などさまざまなプラットフォーム(基盤)において、日本企業の製品が「いつでもどこでも入っている」状態を作り出すことをめざし、エネルギー分野で必須となる技術の早期実用化に力を注ぐべきだ。


 かしわぎ・たかお 1946年、東京生まれ。東京工業大学工学部卒。米国商務省NBS(現NIST)招聘研究員、東京農工大学工学部教授、東京工業大学教授などを経て2012年より同大名誉教授。先進エネルギーソリューション研究センター長なども歴任。


■基本戦略、6年ぶり改定

 6日に改定された「水素基本戦略」では、▽水素製造▽水素サプライチェーンの構築▽脱炭素型発電▽燃料電池▽脱炭素型鉄鋼▽脱炭素型化学製品▽水素などを燃料とする船舶▽アンモニアの燃料利用▽カーボンリサイクル製品――の九つの技術を戦略分野に位置付け、重点的に取り組むとした。

 日本が優位性を持つ技術を活用し、①脱炭素②エネルギー安定供給③経済成長――を同時に実現する「一石三鳥」を狙う。

 40年の水素供給量を現在の約6倍となる年1200万トン程度に拡大する目標を設定し、サプライチェーン構築に向けて今後15年で官民合わせて15兆円規模の投資をめざす。水素は、液化天然ガス(LNG)など既存燃料に比べて製造コストが高いため、その差額を補助する制度を整備し、価格を引き下げる。

 日本では、再エネや水素の研究開発が活発に行われてきた。特に、水素社会の実現に向けたモデル構築を柱に掲げる福島県では、世界最大級の水素製造拠点「福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)」が20年3月から稼働し、世界的に注目を集めている。

■脱炭素社会の構築/公明、強力に後押し

 公明党はこれまで、脱炭素社会の構築を強力に後押ししてきた。脱炭素技術の開発を支援するGI基金は、20年11月に政府へ提出した党の提言を踏まえて、創設されたものだ。GI基金の第1号案件として採択された山梨県の事業では、太陽光発電の余剰電力を活用して水素を製造する基盤の確立が進められている。

 公明党は今後も、脱炭素化の“切り札”である水素の普及拡大に力を注いでいく。 

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著者

岩崎 たかし

岩崎 たかし

選挙 桶川市議会議員選挙 (2023/11/19) [当選] 1,226 票
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