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国際協力、ODA、グローバル・サウス、グローバル・ヘルス、FOIP、NTDs、国際保健、TICAD

2026/6/9

自民党国際協力調査会として提言をとりまとめ、茂木敏充外務大臣へお届けしました。

 

国際協力調査会提言

~時代に即した新しい形の日本の国際協力に向けて~

令和8年6月9日

自民党政務調査会

 

国家間の競争が激化し、自由で開かれた安定的な国際秩序が大きく揺らぐ中、我が国を取り巻く国際情勢は戦後最も複雑なものとなっている。こうした中、国際紛争の長期化やエネルギー危機、地球規模課題が相まった複合的危機に対処する観点から、影響力を増すグローバル・サウス諸国とのODAを通じた連携強化が一層重要となっている。同時に、我が国自身の安全保障、エネルギーや重要鉱物の安定確保など経済安全保障、さらには経済成長の観点からも、戦略的な国際協力を推進する重要性が一層高まっており、ODAの規模拡大が急務となっている。

 

近年、国際社会において、自国経済や安全保障を優先する動きが強まり、対外援助政策の見直しが進んでいる。米国における米国国際開発庁(USAID)の解体を含む対外援助体制の再編や一部国際機関からの脱退、ロシアによるウクライナ侵略を受けた欧州諸国の防衛支出拡大や経済状況に伴う一部の欧州諸国における援助予算削減など、伝統的ドナー国による開発協力支出の縮減傾向は一層顕著となっている。一方で、一部の新興ドナーにより、開発途上国の自律性や持続的成長を損ね、自身の影響力を拡大しようとする動きがみられる。こうした中、長年にわたり、相手国に寄り添う日本らしい国際協力を通じて信頼を築いてきた我が国に対する期待は、これまで以上に高まっている。

 

我が国は、戦後一貫して平和国家として歩みを進め、ODAを通じて各国の発展に貢献するとともに、各国との信頼関係を築くことで、我が国自身の平和と繁栄、さらには自由で開かれた国際秩序の維持・強化に寄与してきた。加えて、本年、発表から10年を迎える「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の下、ODAを通じて法の支配や連結性強化を推進し、地域の平和と安定、安全保障環境の改善にも貢献してきた。

 

ODAに対する政策的需要が高まり続ける一方、我が国が直面する経済財政環境は依然として厳しく、一般会計予算に占めるODAの規模はピーク時からおよそ半減した。また、国際協力や対外援助、国際機関を通じた支援の在り方については、国内外において様々な厳しい意見も存在しており、これまで以上に国民の理解と納得を得る努力をする必要がある。

 

こうした中、新しい仕組みも活用した一層効果的・効率的なODAを推進し、エネルギーや重要鉱物の安定確保やサプライチェーンの強靱化といった経済安全保障上の課題に対応するとともに、本年5月に高市総理が発表した「進化したFOIP」の下、地域の平和と安定のための安全保障分野での連携を拡充すると同時に、日本成長戦略と一体となり、国際機関における調達を含むビジネス機会の提供や、トラブルへの対応支援も通じ、日本企業の海外展開を後押しし、日本経済の成長につなげていく必要がある。また、地球規模課題への対応を通じて我が国にとって望ましい国際環境を形成する観点から、国益に資する形で、国際機関をはじめとする関連機関との連携を一層戦略的かつ効率的に推進することも不可欠である。

 

我が国は、こうした時流を掴むと同時に、人間の安全保障の理念に基づく国際協力の原点に立ち返り、ODAの「受け手」である開発途上国の社会経済開発(公衆衛生分野を含めた複合的危機への対応の観点)、ODAの「出し手」である我が国自身の国益(我が国の安全保障や企業の経済活動、産官学の連携にも資する観点)、さらに、「国際公共財」への貢献(気候変動、防災、環境、国際保健、教育等の地球規模課題への対応や人道支援の観点)の各観点から、「三方良し」の実現に資するODAを推進していかねばならない。

 

以上を踏まえ、国際協力調査会として、政府に対して以下の諸点を求める。

 

 

1 厳しい国際情勢の中、我が国の安全保障を確保するとともに、発表から10年を迎え「進化したFOIP」の下、非軍事領域を含む幅広い分野で同志国との連携を強化・拡大させ地域の平和と安定につなげる観点から、OSAとともに、「安全保障分野におけるODA」を強化すること。

 

2 グローバル・サウス諸国を含め、エネルギー・重要鉱物の安定確保や特定国への過度な依存を低減するためのサプライチェーンの多角化など、我が国の経済安全保障上重要なパートナーとの連携を強化するとともに、我が国にとっての経済安全保障上の重要課題に対応するため経済安全保障関連ODAを強化すること。

 

3 日本列島を強く豊かにする「日本成長戦略」に貢献する観点から、特に日本企業の海外市場として有望なグローバル・サウス諸国において、インフラ整備や法整備・制度設計の問題、パートナーとなる官民人材の欠如などの構造的な進出障壁を踏まえ、二国間及び国際機関を通じたODAの活用により戦略的な環境整備を強化し、在外公館が有するネットワーク等を活用しながら、グローバル・サウス諸国への関与強化と日本経済の成長につなげていくこと。また、AI・デジタル分野におけるグローバル・サウス諸国への支援を強化する観点から、日本の強みを生かしつつ、同分野の技術進展及びビジネスモデルを踏まえた、時代に即した国際協力の仕組みについて検討を進めること。さらに、アニメや漫画など日本が強みを持つコンテンツについても、ODAを活用し、日本文化の海外展開に資する環境整備を戦略的に行うこと。

 

4 国際社会において様々な立場にある国々から更なる信頼を勝ち取り、国際場裏における支持基盤を強化するとともに、我が国のプレゼンス強化に繫げる観点から、民間企業や市民社会を含む様々な主体との連帯を強化しつつ、開発や人道、気候変動、国際保健、栄養、教育等の分野を中心に、グローバル・サウス諸国のニーズを踏まえた、相手国に寄り添ったきめ細かな「日本らしい顔の見える」ODAを推進すること。また、こうした「日本らしい顔の見える」ODAの強みに関する国内外への発信を強化するため、ODA広報をより一層積極的に実施すること。

 

5 国連を含む国際機関が国際的な拠出金削減傾向により大きな影響を受ける中、これら国際機関を通じて国際標準化を主導し、我が国に有利な国際環境を形成するとともに、その専門性と広い活動基盤と連動させ、我が国の強みである教育、防災、国際保健、GX等の分野でグローバル・サウス諸国の脆弱性に対応することは、我が国のプレゼンス強化に留まらず、危機管理や日本企業の海外展開にも資するなど国益上重要であるという認識の下、国際機関を通じた支援を一層戦略的かつ効率的に強化するとともに、「UN80イニシアティブ」を始めとする国連改革を後押しすること。また、同様の観点から、教育や国際保健を始めとした分野において、二国間援助と国際機関(マルチ)を通じた援助の連携を強化させること。同時に、国際社会における我が国のプレゼンスを顔の見える形で一層強化する観点から、国際機関における理事国ポストの確保や邦人職員の増加及び幹部ポストの増加に向けた取組を推進すること。さらに、国際機関の調達プロセスの迅速化や、現地ニーズを踏まえた国際機関を通じた現金給付等の支援について、検討を進めること。

 

6 前述の諸課題に効果的かつ十分に対処すべく、我が国のODAが為替変動や物価高騰等の変数に左右されることのないよう、目下の開発課題の解決やそのための体制整備に必要な原資を十分に確保すること。

 

7 「三方良し」の実現に資するODAを推進していくため新たな資金調達・支援の在り方を含めて検討し、現時点では対GNI 比が0.35%(2025年暫定値)であり、国際目標である 0.7%の半分にとどまっていることから、目標の達成に向けてODAを様々な形で拡充すること。また、時代に即した新しい形の日本の国際協力を推進すべく、ポストSDGsやAI分野をはじめ、開発協力に関する国際的なルール作りの議論を戦略的に主導し、我が国の国益につなげていくこと。

 

8 エボラ熱など、パンデミックを含む感染症危機への対応力を強化するため、次世代ワクチン等を含むバイオ分野において、創薬を含む研究開発から生産・供給に至る戦略的基盤を国内に整備し、供給途絶リスクに備えた自律性を確保する。併せて、CEPIなど国際的な官民連携枠組みに対する主導的関与及び拠出を拡充する。また、AI技術の発展により、人工ウイルスが悪意をもって開発され、当該ウイルスが流出するなどのリスクが高まっており、バイオセキュリティの確保に向けた取組を推進する。

 

9 顧みられない熱帯病(NTDs)については、医薬品の研究開発及び製造を市場に任せるだけでは十分には進まないという課題があり、持続可能な構造への転換が急務である。我が国の重要なソフトパワーの源泉ともなっている日本企業の有する技術や日本の研究機関が有する学術的な知見がこの課題の解決に活用され、日本として、国際保健への貢献が一層なされるよう、政府としてもGHIT Fundなどの国際的な官民連携枠組みの取組を後押しすると共に、諸外国のインセンティブ制度(優先審査バウチャーや薬価特例)などを参考に参加企業への更なるインセンティブ付与の方策を検討すること。

 

10  引き続き、健康医療安全保障の実現に向け、 国際保健分野においては、特定の地域が取り残されることによる地理的な空白を埋め、すべての人が効果的で良質な保健医療サービスを負担可能な費用で受けられることを目指すユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の達成に向けた取組を推進する。特に、開発途上国の保健財政の強化に向け、引き続き、世界銀行や世界保健機関(WHO)と連携しつつ、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)に関する世界的拠点として日本に設置されたUHCナレッジハブを通じて、UHCの実現に向けた取組をより加速化させる等、国際保健に多角的かつ戦略的に取り組む。

 

11  グローバル・サウスの重要な一角を成し、大きな市場潜在性と豊富な天然資源を有するアフリカとの連携強化を一層進める必要がある。特に、創設から30年以上にわたり、日アフリカ外交の中核的プラットフォームとして機能してきたアフリカ開発会議(TICAD)を、急速に変化する国際情勢やアフリカの開発課題等を踏まえた形に進化させることを目指す。また、アフリカにおける日本のプレゼンスを一層高める必要があることから、2025年8月に横浜で開催されたTICAD9も踏まえ、日本企業による更なるアフリカ進出を後押ししつつ、議員外交を戦略的に活用すること。

 

以上

 

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著者

牧島 かれん

牧島 かれん

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