2024/11/9
年収の壁についての対応をどうするべきでしょうか。
基礎控除について、最近の物価上昇に対応する一定の引き上げは合理性があると思います。
ただし、財政規律を考えないバラマキは慎まなければなりません。
また、高所得者に、より恩恵が大きくなるようなことも行なうべきではありません。
一定の財源の中で、所得の低い世帯の生活を支えるための制度設計にすべきです。
「103万円」と「150万円」の壁については、これを超えても世帯の手取り収入が減るわけではありません。
このことをしっかり周知広報することが必要です。
学生の特定扶養控除に関する「103万円」の壁については、基礎控除の引き上げではなく、扶養控除の適用基準を逓減型にして引き上げることで世帯収入の減少を防ぐことができます。
社会保険に関する「106万円」と「130万円」の壁に関しては、悩ましいものがあります。
「106万円」の壁に関しては、厚生年金の対象になってくるので将来の年金額が増えますが、現在の年金制度では、単身高齢女性の貧困問題という課題もあり、年金問題全体での議論が今後、必要です。
「130万円」の壁に関しては、この壁を越えることで国民年金の保険料負担なしでも国民年金を受け取ることができる第三号被保険者が第一号被保険者となるため、国民年金額は変わらないのに保険料が発生し、給付は増えずに純粋に負担だけが発生することになります。
そのため、この壁については年収の壁の議論ではなく、第三号被保険者問題そのものを議論する必要があります。
私は、最低保証年金の役割を果たす基礎年金に関しては税方式への移行を検討すべきだと思いますが、この件に関しては、また改めて。
今回の年金の壁の議論で、世帯の手取り収入の議論が始まったのを奇貨として、制度の抜本的な議論を進めるべきだと思います。
一つは、私が総裁選挙でも訴えた現役世代の社会保険料負担の低減です。
もう一つは、勤労税額控除(給付付き税額控除)の導入です。
これはマイナンバーを活用して個人の所得を捕捉し、所得の高い人には所得税を課す一方で、所得の低い人には「マイナスの所得税」と呼ばれる給付を行なうものです。
勤労税額控除(給付付き税額控除)は、課税と給付を一体的に行う制度で、所得が少ない人には給付金が支給され、所得が増えていくと手取りが減らない範囲で徐々に給付金が削減され、一定の所得水準に達すると給付金がゼロになり、それ以上の所得になれば課税されるようになります。
勤労税額控除における給付は、低所得の人にとっては働こうとするインセンティブになり、同時にセーフティネットになります。
勤労税額控除を採用していない現状では、非課税世帯には税制面で何も対応できず、行政も貧困の実態を把握できません。
各種の支援制度があるものの、それぞれの制度が複雑で、当事者も自治体担当者も支援制度の全体像が見えず十分に活用されていません。
たとえば勤労税額控除の導入にあたって、貧困率の高いひとり親世帯には給付を上乗せするといった措置をとれば、貧困削減に非常に効果的です。
行政が困っている人たちの状況を迅速かつ的確に把握することができれば、適切な支援につなげられます。
勤労税額控除の導入に加え、受給資格のある給付制度を案内したり、必要な研修や職業訓練を受ける機会を紹介したりといった公的支援サービスをプッシュ型で提供するためにも、行政におけるデジタルデータの活用は有効です。
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