2024/11/5
「年収の壁」が話題になっています。
「年収の壁」といわれるものは四つありますが、実際に年収の壁といわれるものは、多分一つです。
「103万円」
年間収入が103万円を超えると、本人に所得税がかかります。
給与収入から、給与所得控除(収入が162.5万円までは55万円)を差し引いたものが「給与所得」です。
そこから基礎控除(48万円)を引いたものが課税所得になります。
つまり103万円から55万円と48万円を引くと課税所得が0万円になり、所得税はかかりません。
収入が103万円を超えると、控除が引き切れなくなり、課税所得が発生しますが、税率は課税所得が195万円までは5%です。
つまり収入が103万円を超えて105万円になると、2万円に対して5%の所得税、1000円がかかり、手取りは104万9000円、つまり103万円よりも大きくなります。
収入が103万円を超えると、確かに所得税を支払う必要が出てきますが、引き続き手取り収入は増えます!
「103万円」に関する給与所得控除と基礎控除の引き上げは、年収の「壁」問題というよりは、減税問題です。
「106万円」
従業員数が50人を超える企業で働いている者が、月8.8万円以上の所定内賃金を得ると被用者保険が適用され、保険料負担が発生します。
今までは支払う必要がなかった厚生年金保険料が発生するので、手取り収入が減少します。
手取り収入を維持するためには収入が125万円以上になるまで働く必要があります。
ただし、将来、厚生年金をうけとることができるようになります。
さらに医療保険から傷病手当や出産手当を受け取ることができるようになります。
手取り収入が減るという意味では「壁」です。
ただし、岸田内閣で支給を始めた社会保険適用促進手当が受けられるので、最長3年間は保険料負担が補填されます。
「130万円」
従業員数が50人以下の企業で働く者が、年間収入130万円以上になると、配偶者の扶養から外れるため、国民年金の第三号被保険者から第一号被保険者になり、国民年金保険料が発生します。
また、国民健康保険の保険料負担も発生します。
将来の国民年金の金額は変わらないため、保険料負担の分、手取り収入が減ります。
従業員数50人以下の企業で働く者にとって、大きな「壁」となります。
「150万円」
年間収入が150万円を超えた場合、その配偶者が受ける配偶者特別控除が段階的に減少し、配偶者の所得税負担が増えますが、103万円と同様、世帯の手取り収入は増えます。
つまり、「103万円」と「150万円」の「税の壁」は、税負担は増えていきますが、手取り収入は増え幅が小さくなるものの増えます。
「106万円」と「130万円」の「保険料の壁」は保険料の負担が発生するため、手取り収入が減ります。
ただし、50人超の企業で働いている場合、壁は「106万円」で保険料負担に応じて将来の厚生年金額や医療保険の給付が増えるメリットがあります。
50人以下の企業で働いている場合、壁は「130万円」ですが、保険料負担が生じても将来の国民年金額は増えないので、本当の壁になります。
そのため、これまで社会保険の適用拡大、つまり企業規模が小さくても厚生年金等の適用を拡げてきました。次期年金改革でも、さらなる適用拡大について議論される予定です。
ただし、これは規模の小さい企業の負担増につながります。
また、国民年金の第三号被保険者制度そのものをどうするかという議論も、今後、必要です。
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