
統合失調症の発症や措置入院を経験し、障がいのある人をはじめ、子どもやお年寄り、外国にルーツを持つ人など、誰もが暮らしやすい街を目指して政治の道を志す長岐 潤(ながき じゅん)氏。世田谷区で生まれ育ち、現在も区内で一人暮らしをされています。
掲げる言葉は「あなたはひとりじゃない」。
自身を支えてくれた地域への思いと、世田谷区で実現したいことを伺いました。
インタビュアー:ご自身にとって世田谷区はどのような街ですか。
長岐 潤氏(以下、ながき氏):生まれてからずっと暮らしてきた、大切な街です。 子どもの頃は祖父母と同じ二世帯住宅に住み、向かいのおじさんやおばさん、隣の家の方、近所の幼なじみなど、いろいろな人が身近にいました。斜向かいの表具屋さんも、作業場から私たちを見守ってくれていたんです。
私は幼い頃、学校に行けず、家にこもっていた時期がありました。
その後、精神疾患で苦しかった時にも、向かいのおじさんは顔を合わせるたびに「にいちゃん頑張れよ」と声をかけてくれました。
祖父母や近所の方々に支えられたから、今の私があると思っています。
インタビュアー:今の地域にも、そうしたつながりを感じますか。
ながき氏:はい。あいさつを続けていると、ご近所の方が「最近見なかったけど、どうしていたの?」などと、声をかけてくださることがあります。
世田谷は、昔から住んでいる人だけでなく、新しく越してきた人にも開かれた街だと感じます。
近所には外国にルーツを持つ方もいます。あいさつをすると、笑顔で手を振ってくれる親子もいるんですよ。出身や年齢で線を引かず、同じ地域で暮らす人として交流していきたいです。

インタビュアー:政治を志した一番の理由を教えてください。
ながき氏:制度を変えたいからです。
私は統合失調症による措置入院を経験しました。家族との衝突がきっかけで入院に至った際、自分の話を十分に聞いてもらえないまま判断が進んだと感じました。医師や看護師、警察官個人を責めたいわけではありません。当事者の声がきちんと届く仕組みが必要だと考えています。
入院中には、さまざまな人と出会いました。長く入院している方にとって、病院での人間関係が大切な居場所になっていることもあります。退院して地域で暮らす際、そのつながりが途切れれば孤立してしまうかもしれません。私自身も、支援を受けながら生活する中で、就職活動や入院中の知人との面会のために予定を調整しづらいと感じたことがあります。
支援が必要な人が、必要な支援を受けながら、その人自身の希望も尊重されるようにしたい。私自身の経験と、そこで出会った人たちの姿が、政治に関わろうと思ったきっかけです。
インタビュアー:制度を、具体的にどう変えたいのでしょうか。
ながき氏:入院の判断に際して、本人の立場から話を聞く、医療関係者以外の第三者が関われる仕組みがほしいです。例えば弁護士が同席するような形です。自分の経験を、私一人の出来事として終わらせず、当事者が意見を伝えられる制度につなげたいと思っています。
インタビュアー:「あなたはひとりじゃない」という言葉には、どんな思いを込めていますか。
ながき氏:誰かとつながりたいのに、そのきっかけをつかめない人がいます。
発達障がいや精神障がいのある人、ひきこもりを経験した人にも、安心して人と関われる場所や機会が必要です。
「あなたはひとりじゃない」と伝え、声を聞き、一緒に考える人でありたい。その思いを込めています。
インタビュアー:実現したいことは何ですか。
ながき氏:まず、障がいや就労に空白期間のある人が、働きながら政治に関われる道をつくりたいです。私も仕事を探すことに苦労しました。議員になれたら、自分の議員報酬の一部を使って、そうした経験のある方を私設秘書として雇うことを考えています。
秘書には、当事者の話を聞いて政策のアイデアを出し、一緒に形にしてほしい。遠方に住む方ともオンラインで話せますし、提案した方の名前や貢献もきちんと伝えたいです。働く機会をつくると同時に、当事者の声が政治に直接届く仲間を増やす。将来は、その方自身が議員を目指すことも後押しできればと思います。
地域のつながりを強めることも大切です。災害が起きた時、普段から顔を知っていれば声をかけやすくなります。私が子どもの頃に受け取ったようなさりげない気遣いを、今度は次の世代にもつないでいきたい。まずはあいさつから始め、町会・自治会などを通じて、無理なく助け合える関係を広げたいです。
インタビュアー:ご自身も、地域で声かけを続けているそうですね。
ながき氏:近所の横断歩道で、子どもたちに「自転車に気をつけてね」などと声をかけています。勇気は要りますが、地域の安全を思って続けています。小学校や中学校の近くに横断歩道を設けてほしいと、区民として陳情したこともあります。
子どもも、お年寄りも、外国から来た人も、障がいのある人も、誰か一方が支えるだけではなく、互いに助け合える街にしたい。世田谷で育ち、今も暮らす一人として、人と人がつながるきっかけをつくり続けたいです。
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