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「良い流れ」か「分断工作」か?岩屋毅前外相の『厚遇』から読み解く日中関係の現在地とは?【産経・水内茂幸記者×元朝日・鈴木拓也記者】

2026/10/1

選挙ドットコム編集部

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2026年9月30日公開の「選挙ドットコムちゃんねる」では、日本国際貿易促進協会の代表として中国を訪れた前外務大臣の自由民主党・岩屋毅衆院議員が中国側から「異例」とも言える「厚遇」を受けたとのニュースを取り上げます。日中関係の緊迫状態が続く中で今回のニュースの裏にある、アメリカを含めた各国の思惑とは?MCの産経新聞・水内茂幸記者と元朝日新聞の鈴木拓也記者がそれぞれの視点で読み解き、解説します!

MC水内記者:岩屋毅前外務大臣の中国訪問ですが、びっくりするぐらい中国側からの「厚遇」が話題になっています。王毅外相がまず出てきて、経済担当の何立峰副首相も出てきました。何立峰さんは、ちょっと前の米中首脳会談の前にアメリカのベッセント財務長官と貿易の関税の話で下準備を全部するほどの人なので、この2人が出てくるというのは割となかったことでもあるし、ちょっと驚きました。

鈴木記者:これはまず去年の11月の高市(早苗)さんの「台湾有事」を巡る発言で、中国側・習近平政権が猛烈に反発している。それ以降で、日本の要人が訪中して、中国側からこれだけの要人が出てきて会談するというのは今回が初めてです。

外務省の方とも話したんですけど、日中の歴史って国交正常化以降これまでも何回も冷え込む時は冷え込んできました。ただ、数カ月経つと大体経済団体とかの交流、あとは議員交流から始まって正常化に向かっていくというパターンだったんですけど、今回は非常に長かった。今回の動きというのが雪解けのきっかけになるのかどうか。

MC水内記者:相変わらず中国の人たちは王毅さんにしても何立峰さんにしてもめちゃくちゃ上から目線の、「あなたたちがダメなんだ」みたいな高圧的な目線はすごくあるんだけれども、ただ、その発言をもう少し読み解いていくと、これまでと若干違うかなという風に思うわけです。

発言のポイントについて解説すると、まず王毅さんと岩屋さんとの会談のところでは「来年は中日国交正常化55周年に当たる。現在、中日関係は再び厳しい局面に直面しており、再正常化の実現が待たれる」。もう1個は、「日本側にとって急務なのは、自国の指導者による台湾問題に関する誤った言動を早急に是正することだ」。鈴木さんは、この「是正」という言葉の使い方にポイントが一つあると。

鈴木記者:そうです。これまでは「撤回」って言っていたんですよね。自国の指導者、つまり高市さんの「台湾有事」を巡る昨年11月の発言、いわゆる存立危機事態に当たるのかどうかという発言自体を「全て撤回しろ」という要求でしたが、撤回できるわけがありません。存立危機事態が何かというところを撤回しちゃうと、実際その場面になった時にオペレーション上その選択肢が取れなくなっちゃうから。

MC水内記者:中国と台湾で有事があった時、米軍が出てきた時に「じゃあ手出しませんよ」という感じになっちゃうから、そんなの冗談じゃないですよね。

鈴木記者:そういう日本側の立場を分かった上かどうかは分からないですけど、その「是正」という言葉に今回変わったんですよね。撤回から是正になると、要するに「修正しなさい、直しなさい」という風にも取れるので、日中間の外交の四文書で最初の1972年、田中角栄さんの時に日中国交正常化が始まって、その後78年に日中平和友好条約を結ぶ。その後の二つの文書を含めた四文書の中で、日本政府としては簡単に言うと、台湾も含めて「一つの中国」だという中国側の立場を「認める」とは言わないけれど、「尊重する」という立場ですよね。

だから要するに、その四文書の精神に立つというようなことに触れれば、改めて高市さんが触れれば、それを中国側は日本側の善処・シグナルとして受け取って、もう一歩の行動に繋げる。具体的に言うと、11月に中国の深圳で行われるAPEC首脳会議。高市さんも当然APECに出席するので、その時に(国家主席の)習近平さんとの1対1のバイ会談があるのかないのか。

MC水内記者:そうなんですよね。台湾の話なんかで思い出すのは、少し前に、ワシントンで米中首脳会談があったじゃないですか。この時、習近平国家主席がトランプ大統領に言った言葉として、「台湾の独立に反対してくれ」と、こういう話をしたと思うんですけども、ここでは一応トランプさん側としては「独立を支持しない」という言い方だったんですけど、「支持しない」と「反対する」って実は同じようで結構強めな言葉で差があるので、トランプさんは習近平が言ってきたことに対して乗らなかったというところがあるのかなと。

鈴木記者:台湾の独立を支持しない、というのは歴代のアメリカの立場ですから、そこを継続しているということで、アメリカ政府の方針としてなんら変わりはないですよということです。

MC水内記者:それがあって、さらにこういうことに少し繋がってきているのかなと。そもそも米中首脳会談のちょっと前に日米首脳会談があって、トランプさんに対して高市さんが色々吹き込んだじゃないですか。米中でこういうギリギリのラインで保つ「同盟国」みたいな感じは米中会談のファクトシートで出たけれども、でもその後に、でもインド太平洋は大事にしなきゃいけない

鈴木記者:前方展開する米軍のプレゼンスを、という言い方ですよね。

MC水内記者:というのことがアメリカが出したファクトシートに出てきている。あれを入れたのはやっぱり間違いなく日本のねじ込みも少しあったと思うんですよね、直前に話して。日米首脳会談で高市さんがニューヨークで話した後に、さらに日米の電話会談があってネゴシエーションをしている。その後の動きでもあるので、やはり中国側からすると、これまでは「門前払い」じゃないけれども「話になりませんよ」みたいな感じになっていたのから少し変わってきているのかなと。

注目すべきはもう1個、何立峰副首相の言葉なんですけども、「日中の経済は強い相互互補性があり、発展と成長は阻むことができない」「(レアアースの対日輸出許可の迅速化)民生分野であれば問題ない」。元々中国側って、特にレアアースなんかは日本にとってはすごい大事ですけれども、軍事と民生と分けて、民生は問題ないということだったんですけども、これまでは民生であっても許可の時間がものすごく長くて結構大変だったと言うんですけども、何立峰さんはこういうことによって少し変わってきたりするのかとか、いろんなメッセージ性があるようには思うんですけどね。どうですかね?

鈴木記者:今のは、水内さんのご意見というか、取材をして高市政権の方としてはそういう認識だということですか?

MC水内記者:実は今日、官邸の関係者にも色々話を聞いてきたんですけど、台湾問題の発言を早期に是正することだとか王毅さんの相変わらず高圧的なことではあるんだけれども、意外と官邸関係者に聞くと、一様に話すのは「良い流れだ」と。この岩屋さんの件も「良い流れだ」と。

鈴木記者:岩屋さんというのは、皆さんもご存じの通り、その前の石破政権で外相でした。

MC水内記者:もう本当に「中国大好き」の権化みたいなイメージがやっぱりあるじゃないですか。

鈴木記者:高市さんとは相当距離がある。

MC水内記者:相当距離があって、本当にもう「国のメッセンジャーの代替人みたいなイメージがあるじゃないですか。

鈴木記者:にもかかわらず、官邸の方は今回の件を「良かった」と言っているんですか?

MC水内記者:「良い流れじゃないか」という言葉の中には、確かに対立はすごくするんだけれども、次に進むためのものとして向こう側も日本の話なんか聞きませんよというところから少しバルブを緩めてきたのではないかというメッセージとしては、こういう2人が出てくるというのもあるし、日本国際貿易促進協会の会長として岩屋さんは行ったわけですけども、この岩屋会長の1つ前の会長は河野洋平さんでした。これはもう中国大好きの権化みたいな方でしたが、出てくるメッセージとしては、少しずつやっぱりちょっと変わってきているのではないかという変化。

これはさっき鈴木さんがおっしゃったように、やはり11月のAPECは中国がホスト国なので、そこに向けてどういう風に着地するかというのを中国側が考え始めたというのは一つあるのかなと。さらにもう一歩言うと、さっき言った米中とかで、やはりこうニコニコして合意しているように見えながら日本の差し込みもあったりします。中国は、習近平国家主席が何か決めない限り色々物事が動いていかないじゃないですか。習近平氏の意向が全て反映されている。

鈴木記者:権威主義国家ですからね。

MC水内記者:トランプさんから習近平さんに対して「日本」というメッセージも何らか出ているとは思うんですよね。こういうのも含めて習近平さん側から下の独裁的なものから何かのエキスみたいなものが少し出て、岩屋さんが来るというタイミングに合わせて何かそういうものがあるのではないのかなというという感じは僕の推測としてはするんですけど、どうですかね?

鈴木記者:なんか今の水内さんがおっしゃったことが本当だったら、中国側にそういう意図があるんだったら、これは本当に良いことですよね。水内さんの信頼できるラインで?

MC水内記者:3人くらいに色々聞いたんですけど、判で押したように「良い流れだ」と言っていました。対外的にそういうメッセージを出せということかもしれないですけどもね。

鈴木記者:なんとなく私は聞いていて「そうなのかな?」という気はするんですけども。他から聞いている話も含めて、今の官邸側とか外務省の幹部の方から聞こえてくるのは、やっぱり近いことをおっしゃっているので、日本のメディアにそう報じてほしいのかなと。

要するに、この前の米中首脳会談前の日米首脳会談も「緊密な日米の連携を確認できた」とか、トランプさんが中間選挙に向けて忙しい中で米中首脳会談の直前に会えたというアピールを官邸はするのですが、実際あの時はトランプさんいろんな首脳と会っているんですよ。

MC水内記者:8人くらいと会っていますね。

MC水内記者:いろんな人と会っている。それもあって、結局そんなに……さっき言った米中のファクトシート、その前のトランプさんの米中会談が終わった後の発言を聞いていても、要は、第二次世界大戦の時の中国が同盟国だったみたいな、歴史的事実を踏まえていないんだけどわざと言っているのかというのもあって、「そもそもその前に高市さんが会ったこと意味ないんじゃないか」という議論もあると思うんですよね。そういうのも色々、左と右の意見が両方あって。それこそ僕は今回のを見ていると、一つはまず岩屋さんに対して王毅さんと何立峰さんが握手しただけではなく笑顔だった。

MC水内記者:笑顔プラス、人民大会堂で記念撮影もしていたのには驚きました。

鈴木記者:一つは高市政権に対するあてつけと、日本の世論の分断工作。中国共産党というのは抗日戦争で日本軍と戦った頃から、「統一戦線工作」というのを歴史的にずっとやってきて、これ何かと言えば「世論分断」ですよね。「敵の敵は味方だ」みたいな感じで、「敵」である高市政権の「敵」である岩屋さんと親密にして、「高市政権よりちょっと距離を置いている人の方が良いんじゃないか」というような日本世論に訴える。これによって高市政権の支持率を落とすという意図があるかもしれない。

MC水内記者:なるほど。ここまで厚遇だとそういう側面はあるでしょうね。

鈴木記者:とはいえ、じゃあそれで日本国内でも「岩屋さんがこのタイミングで行って会ってきて、議員外交と言うけれど、結局今の日本政府・官邸・高市政権の外交を邪魔しているんじゃないか」という批判の意見もあると思うんですよ。実際SNS上とかで書かれていたりします。僕は中国の認知戦・工作ではあると思うんですよ、だからそれを分かった上で今回岩屋さんが会うというのは、僕はすごく大事だと思います。なぜかと言えば、中国側・習近平政権が今、日本に対してどう考えているのかということを聞く機会として重要だと思うんですよ。

それを踏まえて、岩屋さんは今の高市政権と距離はあるとはいえ、この情報は当然日本の外務省、大使も同席されていたんで公電となっていくわけですよね。岩屋さんも自民党議員ですから報告もされるでしょうし。それを踏まえてまた政権として中国戦略を担っていけば良いと思うんですよね。だから非常に重要だったと思う。

あともう一つ気になったのは、経済交流をしていきましょうという団体のトップとして河野洋平さんの後任として岩屋さんが会長になって今回行かれた。じゃあ、河野洋平さんが訪中した時、近年どうだったかというと、これはもう一段上の李強首相が出てきた。今回は出てきていないんですよね。そうすると、岩屋さんに対しても、まだそこまではいかないというか、その下のレベルまでしか今回は出てこなかった。ただ一方で、握手で笑顔を見せた。わざとね。これは非常に大きいかなと思います。なので、これをもって、じゃあ高市政権と本格的に雪解けで、関係改善に動いていく意思が中国側に強いかというと、私はちょっとそうではないのかなという感じがします。

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