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総裁選の関心は連立→減税→ステマで推移!高市早苗氏勝利の原動力を独自YouTubeデータから解説【総裁選2025】

2025/10/5

伊藤由佳莉

伊藤由佳莉

石破茂総理の辞任に伴い5人が立候補した今回の自民党総裁選は、三度目の挑戦となった高市早苗氏が当選を果たしました。

選挙前から高市氏と小泉進次郎氏による一騎打ちとの下馬評が流れ、特に決選投票で勝利のカギとなる議員票を集めると目されていた小泉氏が優勢と予想する声が多く聞かれました。しかし、蓋を開けてみれば、小泉氏の議員票は事前予想を下回り、決選投票では高市氏が党員票だけでなく議員票も集めて勝利をつかみ取りました。

本コラムでは、選挙ドットコムが独自に収集したYouTubeデータを根拠に今回の総裁選を振り返り、この結果をもたらした背景と原動力を読み解いていきます。

YouTube上で見えた「一強」と「失速」の構図

今回の総裁選に関するYouTube調査は、総裁選の実施が決まった「9月8日」から、党員投票の投函期限である「10月1日」までの24日間に行いました。

まず、今回の総裁選を象徴するデータの一つが、候補者本人による「一次発信」のYouTube上の数字比較です(登録者数は9月末時点の数字)。

候補者登録者数動画本数総再生数
小林鷹之氏約1.7万人46約14万回
茂木敏充氏約2.4万人47約44万回
林芳正氏約0.2万人20約3万回
高市早苗氏約51.4万人65約436万回
小泉進次郎氏約2.9万人9約4万回

高市氏が登録者数、調査期間中の公開動画本数総再生数のいずれも群を抜き、茂木敏充氏と小林鷹之氏が続きました。

3者に共通していたのは立候補や政策発表会見のライブ配信に加えて、政策に関する解説動画や対談動画、会見などを素材にしたショート動画の発信にも精力的に取り組んでいた点です。少数与党で連立拡大にも注目が集まる中で、茂木氏と林氏は他党議員との対談動画を公開していたのも、今回の総裁選での特徴と言えます。

次に、選挙期間中に候補者名をキーワード検索した際の「第三者も含めた発信」を見てみると、別の面も見えてきます。(筆者注※10/6に「総再生数」を修正しました。)

候補者動画本数総再生数
高市早苗氏2,177本約1億5994万回
小泉進次郎氏3,138本約1億9114万回

高市氏と小泉氏は動画本数と総再生数ではツートップでしたが、動画内容は対照的です。高市氏の関連動画は、記者会見や討論会で相手を「圧倒」する場面の切り抜きや、政策を評価する構成の動画など、好意的な内容が多数でした。一方、小泉氏の関連動画では、過去の言行を批判的に捉える内容が目立ちました。再生数上位500本の動画の中には「ステマ問題」について取り上げた動画も含まれていました。

高市氏は一次発信に加えて、第三者発信による好意的な内容の「切り抜き動画」を中心に再生数を伸ばしていました。高市氏勝利の背景には他候補よりも圧倒的な「ネット地盤」を築いていた状態がありました。

総裁選関連キーワードのトレンドをみると、選挙前から選挙期間中に3つの波が現れていたことが分かります。告示前は「連立」、選挙序盤は政策論点として「減税」への関心が高まりました。

そして、選挙最終盤にかけて、「ステマ」というキーワードが急速に伸びたのです。参院選以降関心が高まっている「外国人」というキーワードもステマに次ぐ関心を集めていました。

特に、最終盤で注目を集めた「ステマ」は、小泉氏陣営の一部が陣営関係者にネット番組で小泉氏へのポジティブなコメントなどを書き込むよう求めたとされるやらせ疑惑に端を発します。この問題が政策論争を凌駕するほどの大きな話題となり、ネット上で小泉氏への批判が拡大したことが小泉陣営の失速、他陣営にとっては「敵失」につながった可能性も考えられます。

本筋からは多少外れますが一点申し添えます。この「ステマ」問題を巡っては、有力候補がヤラセをしていたという感情的な批判が先行し、そもそも総裁選ルールに抵触していたのかという根本的な部分が不明瞭なままです。関心の高さからみても、今後の一般的な選挙も含めたネット選挙の規範について、改めて議論すべきテーマを提起したと言えます。

メディアシフト時代の「国民の声を聞く力」が問われる

ここまでYouTubeデータによって総裁選やネット上の「民意」を振り返ってきました。コロナ禍を契機に進んだマスメディアからネットメディアへのシフトによって、ネット上に現れる世論の声が大きくなってはいるものの、「ネット上の熱狂」がイコール「世論の熱量」とは必ずしも言えません。総裁選の有権者が自民党員・党友に限定されている選挙だったことも加味すればなおさら、一部の盛り上がりだったと捉えるべきかもしれません。(参考までに、この1カ月間のGoogleトレンドを見ると、「総裁選」は大ヒット映画の「鬼滅の刃」や、野球の「大谷翔平」選手を下回る水準でした)

今回の総裁選の論戦では、自民党の党勢回復のために国民の声を聞く力の強化も俎上に上がり、下野時代の取り組みの復活や再構築も提案されました。その後の一強時代を築いた原点に立ち返ろうという想いは感じられるものの、メディアシフトによって民意が多様化し、ネット上で支持や批判が増幅・可視化されやすい現代においては国民の声を聞き取る方法は前例踏襲では通用しません。

政権与党を担う自民党にとっては、ネット上の熱狂と現実の世論を冷静に見極め、多様な民意の中から真に国益に適う「国民の声」を見出すため、「国民の声を聞く力」のさらなる深化が宿題となっています。


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伊藤由佳莉

伊藤由佳莉

1987年神奈川県生まれ。早稲田大学文化構想学部卒業。前職の専門紙記者時代に東京都内の地方選挙、地方議会を取材。選挙・政治をめぐる人間ドラマに心動かされたのがきっかけで、2022年10月にイチニ株式会社に入社。現在、選挙ドットコム編集部員として、主にコラム企画を担当。

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