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すべての候補者は「有権者の貴重な選択肢」東京選挙区の候補者34人全員の生の声(畠山理仁)

2022/7/8

畠山理仁

畠山理仁

18歳から続けてきた社会運動「ムーブメントで終わっちゃいけない」・なかむら

 気温35度を超える首相官邸前で、たった一人で演説を続ける候補もいる。沖縄の米軍基地を東京へ引き取る党代表・なかむら之菊(みどり)だ。なかむら之菊は選挙期間中に官邸前で行う演説を「ひとりフェス」と称している。

 なかむら小柄な女性だ。しかし、官邸へと続く坂道の下にまで、なかむら之菊の力強い声は届いていた

「沖縄県民は日本全体の人口の1%しかいないんです! 国土面積でいえば0.6%しかない。そういう1%の者に99%が寄ってたかって『安全保障の要である』『私たちの平和を守ってくれ』と危ないものだけを押しつけ続けている。こんな恥ずかしい国家、誰が尊敬するんだ! 誰がこの国に未来があると考えるのか! どうしたら、これからの子どもたちに希望が持てる社会をつくってあげることができるのか。人間は人間らしくあるべきで、そういうときには、『わけあおう』と思えるじゃないですか」

なかむら之菊(撮影・畠山理仁)

 なかむら之菊は18歳から社会運動を続けてきた。しかし、官邸前で演説をするのは今回が初めてだった。これまでは演説をしようとしても排除されてきたからだ。それが今回、選挙に立候補して「選挙活動の自由」を手に入れたことで初めて官邸前から政府に対して呼びかけることができた。拡声器から聞こえる声は、より一層力強さを増していた。

「本来の強さってなんですか! 優しさじゃないですか! 対話じゃないですか! 日本の安全保障、米国基地問題を考えることこそ、この国の未来を考えることだと思っています。そうしたことを可視化させるためにも、沖縄の米国基地を東京へ引き取る必要があるんです! 今、日本で5人に4人、約80%の人が米軍基地は必要だと言う。日米安保も8割の人たちが支持をしている。私は物理的に沖縄に置かれている基地をそばにおいてから、あなたの見解を聞きたい。そこから初めて基地を語ろうじゃないか」

 なかむら之菊が6月6日に行った出馬表明記者会見で、私は「将来的には米軍基地を日本からなくすことを目指しているのか」と質問している。その際、なかむら之菊は「はい」と即答した。選挙中は木工大工職人の仕事を休んで活動を続ける。辛くはないのか。

「もともと350万円を用意して、供託金300万円と残りはホテル代。でも、やるしかない。とっかかりができたから、世論を高めていかなきゃいけない。ムーブメントで終わっちゃいけない。東京都知事選挙にも出るつもりです」

 ウェブサイトで「ひとりフェス」の存在を知った人も訪れる。ポスター貼りを買って出る人も続々と現れた。

「負けた選挙をやったことがないんです。今回も勝たせて下さい」・あんどう 「批判される方は一定数いる。気にせずやっていきたい」・えびさわ

 新党くにもり共同代表・あんどう裕には渋谷で直撃した。あんどう裕は自民党の衆議院議員として3期9年の実績がある。

「政府の経済政策の失敗のツケ回しが全部若い世代にいっている。ぜひ若い人に知っていただきたいのは、国の借金問題はないということです。国債が1000兆円あって、国民ひとりあたり800万円の借金を背負わされているというのは嘘です。そんな借金を皆さんは背負っていませんから安心してください。『政府の赤字はみんなの黒字』です。

 それよりも、政府が国債を発行して減税をする。消費税も0にしていい。社会保険料の負担も4分の1にできる。奨学金だって、政府が全部肩代わりをして皆さん方が返済する必要がない環境も作れる。日本政府はそれだけの力を持っているんだと信じてもらいたいですね」

 消費税ゼロ、積極財政という考え方は、他の野党にも共通する。とくに、れいわ新選組の山本太郎が街頭演説で使っていたスライドには、衆議院議員時代のあんどう裕の経済政策が紹介されることもあった。れいわ新選組との一番の違いは何なのか。

あんどう裕(撮影・畠山理仁)

「国防の問題ももちろんですが、一番違うのは原発政策だと思います」

 新党くにもりは原発を使うべきだという考えを持っているという。慌ただしく次の街頭演説場所に向かう前、あんどう裕は笑顔で私にこう言った。

「私、これまで負けた選挙をやったことがないんです。今回も勝たせて下さい」

 日本維新の会・えびさわ由紀の演説は新橋と渋谷で見た。都内を車で走っていると、えびさわの街宣車に何度も遭遇する。人が集まる場所を精力的に回っていることがわかる。

 街頭演説のために街宣車を停めると、そのまわりには同党のイメージカラーであるライトグリーンのポロシャツを着た人たちが20人近くいることがわかる。しかし、スタッフは決して一カ所に固まらない。一人ひとりが等間隔で広がり、それぞれが丁寧にビラを配る。人が増えるときも、どんどん候補者から遠い方へと陣地を広げていく。スタッフがみんな選挙運動慣れしており、演説会が終了するとみんなで集まって集合写真を撮って気勢を上げていた。

 えびさわ由紀が新橋の演説で最初に取り上げたのは、調査研究広報滞在費(旧・文書通信交通滞在費=旧文通費)の問題だった。

「むちゃくちゃ怒っています。議員特権に真正面から切り込みます。だからみなさん、力をください。国会改革、真正面から行います。今の自民党では改革が絶対できない」

えびさわ由紀・写真中央(撮影・畠山理仁)

 スタッフが拍手をすると、通りかかった男性が「東京に維新はいらん! 大阪に帰れ」と怒声を浴びせた。演説後、街宣車から降りてきた、えびさわ由紀に聞いた。東京には日本維新の会に批判的な人もいます。先ほども「東京に維新はいらん」と怒鳴った人もいました。そういう人たちにはどんな声をかけますか?

「特に。いろんな人がいらっしゃるのが普通なので、特に。今のお言葉が異常なこととも思わないですし、いろんな意見がありますので、特にそれに対しては何も思わないです。批判をされる方というのは一定数いらっしゃるので、気にせずにやっていきたいです」

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畠山理仁

畠山理仁

フリーランスライター。第15回開高健ノンフィクション賞受賞作『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)著者。他に『記者会見ゲリラ戦記』(扶桑社新書)、『領土問題、私はこう考える!』(集英社)など。興味テーマは選挙と政治家。

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