山中氏は、メインのチャンネル(登録者数 382人、2021/07/04 に登録、11,531 回視聴)以外にも、サブチャンネル(登録者数非公開、2021/07/16 に登録、5,300 回視聴)として、「山中竹春の部屋」という名前で開設していました。狙いとしては、硬い政治のコンテンツ以外にも、候補者の人柄を知ってもらう様に、カジュアルにコンテンツを投稿していくサブチャンネルとして活用していた様子です。

再生数の多いコンテンツとしては、山中氏のペットを紹介する動画「猫大好き!山中竹春のかわいい愛猫親子「ルル&ジジ」」やワクチンの有効性をデータから示した「ワクチン受けるとどうなる?新型コロナの中和抗体研究を」などがよく見られています。こういったカジュアルな動画を通じて、イメージづけたい人柄を切り取って、候補者の生活感、価値観などを有権者にシェアすることができます。

実際には、選挙期間入る前から、この2つのチャンネルを並行しており、筆者自身も、この活用パターンには驚きました。チャンネルを分けるメリットとしては、一つのアカウントに対して一つの世界観で統一できること、政治カラーを中和させることによって、政治に興味がない層・無党派層に対してもカジュアルにアプローチできることが考えられます。多角的に候補者の魅力を伝えていくことによって、有権者は候補者との共通点を見つけやすくなり、動画視聴者を飽きさせない工夫にもつながります。また、実際にプライベートの素顔を発信することで、より候補者を親近感を感じさせることができるでしょう。

山中氏のアカウントでは、全体的に候補者メインの動画が発信されていました。ユーザーの知りたい情報に寄り添ってコンテンツを作成してくれている姿勢を感じます。有権者のここがもっと深く知りたい!という疑問をなくすためのコンテンツや、全ての街頭演説をそのまま上げるのではなく、最も伝えたい街頭演説だけを切りとって一つのダイジェスト動画をいくつか投稿されています。実際にコロナ禍で候補者に直接会えない有権者にとっては、しっかりまとめてくれているダイジェスト動画はありがたいものです。

また、候補者が考える政策ビジョンをアニメ版の動画もありました。アニメにすることによって、より候補者のビジョンが伝わりやすくなります。そして、動画投稿への着手も早かったため、全体的に再生回数は伸びている様子です。

こうした政策アニメの動画については、他候補者の松沢成文氏も積極的に取り入れていました。

松沢候補においては、山中氏と同じく、候補者メインの動画を展開しています。他候補と比較した際にも、特にユニークなコンテンツが多く投稿されています。例えば、横浜の様々な場所にある坂を、全力で登るという、某番組のパロディ動画や、


愛は勝つ!の楽曲をなぞって、シゲは勝つ!という替え歌動画を披露していました。こちらの動画は、松沢候補のアップされた動画の中ではトップ再生となっています。視聴者を飽きさせないコンテンツを展開した松沢候補は、様々な角度をもって、有権者との接触を試みる姿勢が伝わってきます。

続いて、林候補においても同じく、候補者メインの動画を展開されていました。2021/07/26 に開設し、11,237 回視聴、主に候補者の政策をコンテンツの中心においていました。

小此木氏のチャンネルでは、候補者の動画よりも、国会議員による応援動画のコンテンツが多い印象です。候補者の言葉で語っている動画コンテンツが少ないということは、初めてこのチャンネルをのぞいた人にとっては、どんな候補者なのかが伝わりづらく、無党派層への支持が広がりにくい印象となってしまう恐れがあります。

小此木氏(チャンネル登録者数 117人、2021/08/08 に登録、5,679 回視聴)
これはあくまで筆者の考えですが、現状、政府への批判が高まっているとすれば、極力政治カラーを抑えた発信を考えます。なぜならば、個別の応援弁士のメッセージ動画は、政治や派閥カラーを感じさせやすく、かえって批判や反発を受けやすくなる上に候補者のイメージブランディングにも影響を与えやすいからです。また、応援弁士の動画は、党内での結束意識に繋がるかもしれませんが、新規ファンを開拓する上で効果があるとは限りません。何かしらの応援メッセージをアップするならば、候補者の活動様子+地域住民からのメッセージ動画構成の方がより市民目線に近い政治家として親近感を感じます。
山中氏の動画においては、一眼で内容がわかるサムネイルと、実際の動画では視聴者の離脱をさせない、飽きないための細工がされていました。メインチャンネルでは、候補者の名前を最も強調する様に、かつ選挙テーマカラーに合わせた統一感があるデザイン使用となっており、バラつきを感じさせません。

また、サブチャンネルでは、今時のYouTuberの様な世界観を意識した、思わずクリックしたくなるようなサムネイルのデザインが施されており、カジュアルな動画が展開をされています。市民にとって身近に感じるフレーズが多く並べられており、新たな無党派層への開拓につながっていくでしょう。

実際に公式WEBサイトで両者の動画を並べて比較してみると、小此木氏と山中氏の動画では、どのような印象を感じるでしょうか。

また、同じようにSNSをフル活用していた候補として、元衆議院議員の福田峰之氏の動画活用も特徴的でした。横浜市における各地区に向けた政策を動画にしています。そのほかにも、バラエティあふれるコンテンツが展開されていました。


また福田氏は、こうしたメディア活用だけでなく、リアルな選挙事務所を開設せずに、オンライン上でのバーチャル選挙事務所を開設していました。こうしたデジタル活用を積極的に取り組む候補者のイメージは、メディア媒体でも話題となっていました。


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