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withコロナの時代に「ネット投票」が救世主になるか?各国も実現には今なお道半ば

2020/5/16

原口和徳

原口和徳

インターネットの部分使用という提案

このような状況に対してインターネットを部分的に使用する案も提案されています。提案されている投票の手順は以下の通りです。

はじめに、有権者はスマートデバイスからインターネット上で投票用紙に必要事項を入力し、QRコードを取得します。次に、実際に投票所に行き、取得したQRコードを読み取り機にかけ、自身が登録した情報の印字された投票用紙(紙)を印刷します。最後に紙の投票用紙の内容を確認し、問題がなければ投票箱に投函するというものです。

この方法をとると有権者が確認をした投票用紙が残り、後日、再集計や投票結果の監査を行うことができますし、開票結果の集計を迅速に行うことができます。また、有権者は自宅などの新型コロナウイルスに感染する恐れのない場所で投票先を決めることができますし、開票所で運営スタッフが密集してしまうことも回避できます。

アメリカでは郵便投票の全面的な活用と期日前投票の積極的な使用が新型コロナウイルスへの対策として検討されているところが多い状況ですが、上記の様な形でインターネットが部分的に使用される可能性があります。ただし、それは日本で想定されているインターネット投票とは大きく異なるものです。

議会で進むインターネット投票の検討

選挙よりもインターネット投票の実現に向けたハードルが低くなっているのが議会です。

例えば、EU議会(Techcrunch「EU parliament moves to email voting during COVID-19 pandemic」2020/4/24)は3月26日に新型コロナウイルス対策に関する提案への投票をe-メールを用いて行っています。当面、7月31日までの時限的措置としてe-メールを用いた投票方法が用意されています。

オーストラリア議会(PHY ORG「A virtual Australian parliament is possible—and may be needed during the coronavirus pandemic」2020/3/27)では、各種委員会をオンラインで開催できることを確認していますし、本会議を電子的に開催可能にする方法が模索されています。カナダ(PHY ORG「MPs should consider online voting during COVID-19 pandemic, says researcher」2020/4/6)でも、オンラインでの採決ができるようにすべきとの提案がされています。

もちろん、インターネットを介した投票に対してはセキュリティ上のリスクが指摘されていますが、選挙と異なり「投票の秘密」を守る必要がないためにリスクが低減され、緊急時の対応としては許容できるものとされているようです。

ほかにも、インターネットを用いない対策がとられている議会もあります。例えば、フランス議会(France24「French parliament declares health emergency to combat pandemic」2020/3/22)での「緊急事態宣言」の採決では、空席の目立つ議会において多くの代理投票が行われたことが報じられています。

日本では国会審議のオンライン化において憲法が壁になっているとの指摘もあり、民間企業でのテレワーク等の導入状況に比べると変化が生じていませんが、緊急事態において他国の事例から学べることはないでしょうか。

感染リスクの低減と多くの人の投票参加を両立させる方策は?

日本において緊急事態宣言下でも日々様々な選挙が行われている中で、インターネット投票を1日も早く実現するべきだとの意見を目にすることがありますが、欧米での議論をみると、インターネット投票の導入には越えなければならない課題が山積している状況です。

その一方で、新型コロナウイルスは公正な選挙の執行に深刻な影響を及ぼします。例えば、投票所での感染リスクを恐れて投票に行く人が限られてしまうと、他の低投票率の選挙で指摘されるのと同じように一部の有権者の意思ばかりが強調される結果となり、民意がゆがめられてしまう可能性があります。また、新型コロナウイルスについては、症状が重篤化しやすいとされる高齢者や基礎疾患をもっている人ほど投票を控えるようになる可能性があり、これらの人の意見が選挙を通して不当にすくいあげられなくなってしまう可能性があります。これらのリスクは民主主義・選挙支援国際研究所(International IDEA「Elections during COVID-19: Considerations on how to proceed with caution」2020/3/18)からも指摘されています。

今後、緊急事態宣言の解除が進んだとしても、多くの人が一堂に介すことになる投票や開票作業がクラスターとなってしまう可能性もあります。

海外での対策で多いのは、選挙期日の延期、投票所環境の整備、期日前投票の充実です。また、アメリカで検討が進められている郵便投票も有力なオプションとなりえます。

インターネット投票はすぐには実現できないかもしれませんが、日本でも新型コロナウイルスへの感染リスクの低減と多くの有権者の投票参加を両立させるためにできることがあるのではないでしょうか。

これからも沖縄県議会議員選挙(5月29日告示)や、東京都知事選挙(6月18日告示)と大型選挙が予定されています。

「選挙は民主主義の根幹をなすもの」であり「不要不急の外出にはあたらない」(4月7日参議院議院運営委員会・安倍首相)ほど大切なものであるからこそ、すべての人が公平な形で投票することができるようにする手段について、現時点での実現可能性も含めて考えていくことが求められます。

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原口和徳

原口和徳

けんみん会議/埼玉ローカル・マニフェスト推進ネットワーク 1982年埼玉県熊谷市出身。中央大学大学院公共政策研究科修了。早稲田大学マニフェスト研究所 議会改革調査部会スタッフとして、全国の議会改革の動向調査などを経験したのち、現所属にて市民の立場からのマニフェストの活用、主権者教育などの活動を行っている。

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