メディアやネット上での発言が話題になりやすい立花氏。しかし話題性だけではなく実際は計画力と実行力が現在の結果につながっているのかもしれません。
>>「6年後の2019年参院選で国政を目指す」と言っていたN国党が、本当にやってのけたその理由|NHKから国民を守る党の戦略【前編】(畠山理仁)
>>「NHKから国民を守る党」が議席獲得・政党要件も満たした驚愕の選挙戦略とは?
立花氏は8月9日に行った本インタビューの中で自身のYouTubeチャンネルのアナリティクスの情報や収入について言及していますが、インタビュー後の8月11日・13日には動画の広告収入等に関する動画を自身のYouTubeチャンネルで公開しています。
また、N国党の候補者が各地で当選した今年春の統一地方選や、本格的に注目を集めるようになった7月の参院選よりも前である今年1月にも党や立花氏個人、立花氏の運営する会社の収入に関する動画を公開しているなど、「何も隠すことはないです」というインタビュー中の言葉が示すようにオープンにしていることがうかがえます。
これらの動画からわかるのは、統一地方選~参院選の前と後で年間の予想収入額が大きく変わっているということです。従来の国会議員の政治資金源として一般的なのは、歳費や期末手当以外には議員の資金管理団体・政治団体が集める献金(寄付)や政治資金パーティーでの収入、議員が政党支部の支部長を務めていれば政党からの収入などでした。
一方で立花氏の公開している情報をみると、寄付・献金による収入はなく(支援者からの借金はあり)、議員歳費や政党助成金などを除くとYouTubeチャンネルの広告収入が割合の多くを占めているのがわかります。この方法は政治家の資金源として立花氏の他に同じような国会議員は見られません。しかし「YouTuber」として、あるいはYouTubeチャンネルの収益化という点で考えると特に珍しい訳ではありません。
既存の政治家・政党も同じような手法を取ろうと思えば法律的な問題がない以上阻むものはありませんが、現状は立花氏/N国党以外にこの手法を取る政治家はいません。この現状を単に他の政治家が「やろうと思えばできるがあえて真似していない」とみるか、「やりたくても真似できない」のどちらとみるかは考えるべき点かもしれません。
ネット選挙解禁以降、政治家はSNS、HPなどを活用して政治活動の情報発信や選挙運動などを行うようになってきました。しかしそれは活動の一部に留まり、一部の例外的な政治家を除けばウェイトとして活動量の多くを占める、というまでは至っていませんでした。
政治家が発する情報の有権者へのこれまでの届き方はおおまかにいうと、
政治家が発言・行動をする→マスコミ・メディアが取材・編集をする→一般の有権者に各々の媒体で届ける
という流れでした。しかし立花氏のYouTube・SNSでの発信を前提に考えると、
立花氏が発言・行動する→立花氏がYouTubeの動画で発言・行動を公開する→一般の有権者が目にする
という流れができています。
メディアによる編集や物事の切り口の提供、という機能を飛び越えた情報の届け方を確立しつつあるといえるかもしれません。
立花氏は自身のチャンネルで公開している動画内で度々「国会議員YouTuberの立花孝志…」と名乗っています。
「YouTuber」の定義には様々なものがありますが、共通するのは「継続的にオリジナルの動画コンテンツをYouTubeに投稿し、広告収入を得ている」人、という点です。YouTubeで広告収入を得るためには「YouTubeパートナープログラム」に参加することが必要ですが、その条件は「チャンネルの過去12カ月間での総再生時間が4000時間以上」「チャンネル登録者数が1000人以上」というものです。
| ちなみにチャンネル登録者数1000人という数字は全YouTubeチャンネルの登録者数ランキングで最低でも上位11%に位置することになります。立花氏のチャンネル登録者数は約45万人で、上位0.6%から0.7%の間に位置していることになります。 |
YouTubeで再生回数や登録者数を増やすためには話題性があることが必要になってきます。この観点から立花氏をYouTuberとして捉えると理解しやすいのではないでしょうか。最近も立花氏はタレントのマツコ・デラックス氏に言及した動画で注目を集めましたが、動画内では「数字を持っているから取り上げる」つまり話題になる・注目を集めるからマツコ・デラックス氏を取り上げる、という旨の発言をしていることからも伺うことができます。
ジャーナリストの江川紹子氏はYahooニュースの記事内(8月16日付)で
確かに、NHKにはネット配信に伴う受信料の問題や番組の内容などについて、いろんな意見があり、議論すべきことも多い。けれども、こうした雰囲気や荒っぽく雑な物言いで、公共放送を「ぶっ壊す」ことに抵抗感が薄れていくとしたら危うい。
そればかりか、今回のマツコ氏とTOKYO MXに対する対応を見ていてもよく分かるように、国会議員という立場と資金力を得たことで、メディアに対しても、気に入らないものには圧力をかけ、「触らぬ神に……」とばかりに批判をしにくい雰囲気が広がるのもよくない。
メディアは、N国の取り上げ方をよくよく考えてもらいたい。
とN国党を取り上げる上で警鐘を鳴らしています。
この8月も立花氏はN国党の候補者が立候補している地方選挙やNHK問題に関する動画とともに、巷で話題になっているタレント・芸能人に言及した動画や、政治家のスキャンダルについての動画を公開しています。今後、永田町で(あるいは世間で)注目を集める何かが起こる度に「YouTuber」立花孝志氏の「動画ネタ」は増えていくのかもしれません。
この記事をシェアする
選挙ドットコムの最新記事をお届けします